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四天王  作者: 原善
第一章 プロジェクトソルジャー
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その21 第五ポリス

 ポリスの地下にある。特別生活保護室。ある部屋の前には銃を持った兵が一人警備をしている。そこへやって来たのはダブルだった。ダブルはその兵に軽く挨拶をすると、その部屋をノックした。部屋には大場の家族がいた。


「よく休まれましたか?」とダブル。

「朝まで詰問はきつかったな~」大場は敢えてダブルの前で大きなリアクションをしてみる。

「お父様に続きをお願いしたいのですが・・・」

「わかった・・・おい直美、後を頼むぞ。」


 大場は、直美に声を掛けると、部屋から出てきた。

「はい・・・」

「直美様、お父様をお借りします。」

「だからあんた誰?」

 ダブルに対して渋い表情を見せる直美。


 大場とダブルは部屋を出て、廊下を歩き始めた。

「今朝、タケシが来てた様だが・・・?」と大場。

「あんたの婿候補が、追い払ったぜ。」

「ロクか?やはりな・・・それでタケシは?」

「ダメージだけで撃退した・・・まあこっちも色々あったがね。」

「婿候補・・・やはりあいつやるな・・・」ニヤリと笑う大場。

「その件は断ったんだろ?ロクは?」

「ああ断って来た。惚れてる女がいるとか・・・あの少年みたいな少女か?」

「なつみの事か?まさか。あいつはロクの妹みたいなもんだよ。」

「まあ、なんにせよ残念だな。諦めた訳じゃないけどな!」

「お父様、もしよろしければわたくしが・・・」

「兵士に娘はやらん!」

「ロクも兵士だぜ。なぜロクに・・・?」


 大場は立ち止まって、ダブルを直視した。

「まだ分からんのか?最初に無理難題を押し付ける。次にやや可能の条件を出す・・・“交渉”の基本だよ。」

「お、恐れ入りました・・・」大場のしたたかさに驚くダブル。



「死龍はロクの恋人だった・・・」と高橋。

「えっ!?」

「真相は知らんが、二人はそういう仲だったらしいぞ!」高橋は桑田の様子を伺いながら、敢えてそんな事を言ってみせた。

「う、嘘です・・・」真剣な桑田。

「噂だよ。噂・・・あいつがP5にあんまりにも行くからみんながそう言っているだけだ。ただ、死龍が戦場に出なくなった頃だよ。ロクが銃を撃てなくなったのは・・・」

「それから銃をですか・・・?」

「そうだな・・・それ以降、あいつがP5によく行くようになったのも事実・・・」

「でも、昔はここに居たんですよね。死龍さん?」


 高橋の作業している手が止まり、何かを思い出している。

「ああ、お前が指令室に上がるだいぶ前だ。その頃は死龍って名前じゃなかったがな。確か“しゅりゅう”って名じゃなかったんじゃないか?あの頃はロクがしゅりゅうのパートナーだったはずだぜ。互いにプロジェクトソルジャーでは1、2位を争う程の成績だった・・・詳しくは知らんがな、事故があったらしい。まあその後、死龍はP5に配置になったと聞く・・・戦場には出ず、戦略や教育専門になったと聞くが・・・」


「キーンさんたちなら知ってますか?」

「あいつらに聞いても無駄だと思うぜ。意外とみんな仲間思いだからなぁ・・・」

「なんとかロクさんの力になりたいんですよ!」

「なら、ほっとけ!結局は自分自身で這い上がるしかない。ロクは昔っからそういうタイプだ。彷徨えば彷徨うほど、輝くっていうか・・・ほら!それよりダブルの車の塗装だ。急げよ!」

「は、はい・・・」慌てて作業に取り掛かるなつみ。



 ここはP5に近い、ジプシャン軍前線基地。いくつかのテントの中に大きなコンテナや倉庫、無線用の簡易アンテナや小型レーダーがP5を見下ろす低い丘の上に立ち並んでいる。SCの数が少なく、2輪や3輪のバイクが目立っていた。

 

 そこは大型倉庫の中に簡易な指令室を設けており、小型コンピューターをはじめ、通信機やレーダーのシステムが揃えられている。兵は4、5人程で上官らしい人物が席も着かずイライラしていた。

 その男は25才くらい。背は高いが、かなり痩せて見える。服はタケシと同じ砂漠用迷彩軍服を着ていた。彼はタケシや総帥の土井寛子が死神と呼ぶ大広だ。


「タケシ隊を呼びに行った者は、なぜまだ戻らないのですか?これでは戦力になりませんね?」

 大広は部下らしい兵にでも“敬語”で語っていた。


「はい、昨日に本部に戻って行って連絡がなく・・・」

「銃弾が乏しいのに、本隊のSC部隊までいなくなるとは困りましたね・・・」


「再度、本部に使いを出しましょうか?」

「任せてもいいですか?」

 すると、基地のある者が大声で叫ぶ。


「南よりSC!我軍の物ではありません。車種不明。かなりのスピードです。まもなくP5圏内に入ります!」

「また雷獣か?全車迎撃体制を取って下さい。三輪部隊を出してく下さい!」


 基地に警報が鳴り、テントから兵が十名程がヘルメットを被りながら出てくる。兵たちは数十台の三輪バイクに跨り、基地から緊急出動していく。



 ロクの車内から前方に砂煙が見える。

「やはり、ここは無事には通してくれないか?なら・・・」

 ロクはアクセルを更に踏み込むと、その砂煙を避けるように、左へとハンドルを切った。



 ここはP5の地下の指令室。作りはP6の指令室によく似ている。やはり雛壇になっている席には、15名程の兵が正面のスクリーンを見つめている。

「P6からの定期便か?黒豹かと思われますが、データが前回と違っています!車種データなし!」


 この指令室での最上段にいた者がすぐ反応した。

「ロクか?あいつまた試作車を・・・?」

 両目の部分に仮面のベルト型マスクを被っているその者の声は、若い女性の声だった。


「西南に8キロ。敵バイク部隊と交戦中です!」

「司令を呼べ!守衛隊は戦闘配備!ボブ隊は発進準備!無線はあるのか?」と女。

「まだありません!」

「ロクなら援軍は出さん。奴はそういう男だ・・・こちらから無線を飛ばせ!」

「ボブ隊地上に出します!南ゲートに集結させます!」

「南ゲートでボブ隊は待機だ!ゲートのタイミングは任す!」

「無線以前応答なし!」

「助け無用という事か?相変わらず頑固ね・・・」と女。


 そこへ弘士や久弥と同じ黒い軍服を着た30才くらいの男性が現る。

「五十嵐司令!P6の定期便です!」

「ロクか?」五十嵐が仮面の女に問う。

「ここを突破出来るのは恐らく彼かと・・・?」と女。



 その頃、ロクのジャガーは4、5台の三輪バイクに追われていた。バイクは前方に向いた機銃でジャガーを狙い撃つ。


「これは使いたくなかったんだがな・・・」


 ロクは、新たに設置されたエアーブースターのスイッチを入れると、ジャガーより砂煙が巻き上がった。後方にいたバイク隊はジャガーが作り出す砂煙に巻き込まれ視界を奪われる。

「これで、諦めてくれよ・・・」



 P5の指令室。

「追撃部隊は振り切りましたが、新手です!死神の本隊です!」

「死神め!ここに入れないつもりか?」


 司令が焦る中、その女は手馴れていた。

「ボブはまだ待機よ!」と女。

「なぜ、まだ援軍を出さん?苦戦してる様子だが?」

「助けを求めるならSOSをとっくに出してるわ!こいつはロクよ!間違いない!ロクなら助けは拒む・・・昔からそういう男なのよロクは・・・南ゲートに銃撃部隊を数名だけ配備して!」

「どうする気だ?」と五十嵐。

「まあ見てて!」口元がニヤリと笑う仮面の女。



 ロクのジャガーは30台のバイク部隊と交戦中だった。バイク部隊は銃が効かないと分かると、手榴弾攻撃に切り替えてロクのジャガーに手榴弾を投げ付ける。

「こいつも使いたくなかったんだよね・・・」


 ロクはそう言うと、屋根のバルカンを上げ、周り構わず乱射した。バイク部隊はジャガーに近寄れない。ロクの乱射に慌ててハンドルを切り転倒するバイクもあった。



 ジプシャン軍前線基地。大広が待機している。

「敵が銃を乱射してます!」

「攻撃ですか?雷獣ではないのですか?どうであれこいつをP5に入れさせないで下さい!味方の被害はどうですか?」

「まだ報告がありません!」

「味方より無線!やはり雷獣です!模様は斑です!」

「雷獣め!またしても、こちらを弄ぶのですか!?」大広が握り拳を振り上げる。



 P5指令室。

「無線です!」

「私が受ける!中央に!こっちで応対するわ!無線をこっちにまわして!」

 その仮面の女は、マイクがあるデスクに移動する。 


 指令室のメインのモニターにロクの姿が映し出される。戦闘中なのか、映像が乱れ、銃声、エンジン音が高く入ってくる。女は平静を装いモニターのロクに呼びかけた。


「何か、手伝いがいて?ロク?また車種を変えたようね!?」

 仮面の女は皮肉たっぷりに映像のロクに問う。


『死龍無事なのか?』と無線のロク。


 一瞬だが、ロクに呼ばれた仮面の女の口元が笑みとなる。しかしすぐに女は怒り出した。

「勝手に殺さないでよね!」


『ふふっ・・・』

 その死龍の応対に、モニターに映るロクの顔も一瞬笑みを溢した。

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