その2 雷と嵐と
「太陽光充電95パーセント!発射10分前!」
ブリッチのある少女兵が叫ぶ。そんな中、ロクとダブルは動くことなく対峙していた。
「ほらほら!早くしないとポリスの街が消えちまうぞ!なんならここから二人で見学するかい!?」とダブル。
「確かにあの時、お前は同じ地下三階にいた!だがなぜお前がなつみを・・・」更に険しい表情になるロク。
「そうだ!もっともっと怒れロク!最強のお前と闘い、勝ってこそ俺は最強の四天王の称号を得るのだ!もっと怒れぇ!!」何かに憑かれたようにロクをけしかけるダブル。
「そんなつまらん称号など、お前にくれてやる!」
ロクがいきなりソードライフルでダブルに襲いかかる。ダブルは自分の機銃でロクの剣を受け止める。激しくぶつかり合う二人。寛子やポポは二人の対決を見つめている。
「な、なぜお前がなつみを撃ったんだぁ!?なつみを殺す意味があったのか!?」剣で押し込むロク。
「こんな風に怒ったお前が見たかったからさ!!そして怒りは全ての力の源・・・それを引き出せ!ロク!」とダブル。
「12年も・・・12年も俺たちを騙しやがって!!」
「し、しかしだな・・・今回のP5の参戦は驚いたよ!P7の参戦はジプシャンに流した・・・だが最終作戦会議にはP5の名はなかった!いつの間にあんな芸が出来るようになった!?あの時、一緒にP5に行ったよな!?そんなコンタクトはなかった!」必死のダブル。
「気がつかなかったのか?」笑みさえ浮かぶロク。
「なんだ!?」
回想。焼け爛れたP5の街。ロクとダブルが廃墟を徘徊している。ロクとダブルが離れている際、ロクは何かに気がついた。
「な、なんだ・・・?」
遠くの丘から光が見える。ロクは目を凝らして遠くを見つめた。
「照明信号か・・・?誰だ・・・?ゼンイン・・・ブジ?全員無事?」
丘からの信号はまだ続いた。
「コレヨリ・・・テキヲ・・・オウ・・・ピーシックスデ・・・ゴウリュウ・・・ボブダイサクセン・・・此より敵を追う。P6で合流!ボブ大作戦!ボブか!?あいつ・・・無事だったか・・・?」一人薄笑みを浮かぶロク。
現在。ジプシャン軍大型艦ブリッチ。
「P5は俺と司令しか知らない!」力で押すロク。
「ふん、やるじゃねえか!?空のP5を砲撃したのか!?五十嵐司令も喰えない奴だな!?」
「誰がスパイかこの目で確かめたかったからさ!まさかお前がスパイとはなっ!?」
「流石ロク・・・味方まで騙したか!?それでこそポリス最強の四天王!!だがそれも今日までだ!!」
ダブルは機銃でロクの剣を押し返した。再び間合いが出来る二人。
「ほんと・・・最後までお前は敵にまわしたくなかったがなぁ!」
「今更おじけついたか!?ダブルよっ!?」
再び剣と機銃でぶつかる二人。
「なぜポリスにこだわる!?ポリスは俺たちを利用して人間兵器にした・・・俺たちには名前すら与えなかった非道な奴等だぞ!」とダブル。
「違う!!ポリスからは仲間を与えられた!それは消せない過去だ!」とロク。
「お前にとって、仲間はジプシャンの方だ!なぜそれがわからない!?その仲間すらもう一握りしか残ってはいまい!!」
「俺には人間もミュウも関係ない!」
「ポリスに12年もの長い間、騙されていたのがまだ分からないのか!?」
「あそこには、守るべき人がたくさんいるんだ!」
「なつみも守れない男が何を言う!?」ダブルが一瞬を突いて、ロクの腹部に蹴りを入れる。床に倒れるロク。
「くっ・・・なつみを殺したお前がぬかすセリフかっ!?」
「どうした?あんな闘病生活で体が鈍ったか!?これがポリス最強の四天王かよ!?」
「俺らはミュウであれ人間であれ、あのポリスに育てられた・・・その恩だけは忘れん!命を救ってくれた恩だ!」
「言ってダメならやはり死んで貰うしかなさそうだな!?」二丁の機銃をロクに向けるダブル。
「やってみろよ・・・」ロクが剣を上段に構えた。
「キーンの構えだな?どこでそれを・・・?」躊躇うダブル。
「奴と12年つるむ。奴の技は俺の技だ・・・」ロクは鬼の表情と化していた。
「二人して・・・正気じゃねえぞぉっ!!」
「発射五分前!」静けさの中、少女兵の声がブリッチに響く。
ロクが剣を構え静止する。ロクを見つめるダブル。
『キーン・・・なぜお前もロクの味方なんだ!?』
再びロクの姿にダブってキーンの影が見えるダブル。
「行くぞ!ダブル!?」ロクが叫ぶ。
「来い!ロク!」機銃を構えるダブル。
他の兵も二人を見守る。ロクは上段に剣を構えながらダブルに突進した。
「うおぉぉぉぉー!!」
ダブルも二丁の機銃を発射する。ロクは剣を細かく振りかざし、ダブルへと突進する。
激突する二人。