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四天王  作者: 原善
第七章 愛は砂漠に・・・
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その40 運命と宿命

ロクは暗い階段を一人で昇っていく。薄暗い階段にロクの足音だけが響く。ロクは何かを呟いていた。

「運命に向き合えだ?何をどうしろと・・・?」


「あの人の言葉を信じ、あの人の教えだけを守ってきた・・・それがこの結果だ・・・それで俺に戦争を止めろって・・・運命に向き合えって・・・」

ロクはある扉を開くと、誰もいない廊下に座り込んだ。

「親父さん・・・俺たちは何を信じればいい・・・?」


「おい!ロク?」

聞き慣れた声が廊下に響く。すると突然ロクは胸ぐらを掴まれ、無理矢理立ち上がらせられる。ロクの目の前にはバズーがいた。


「こんなとこで何してんだ?戦闘中だろう!?」バズーは力任せにロクを揺さぶった。

「お、おい・・・」嫌がるロク。

「まるで殺気がない!あの大筒に魂を抜かれたか?」

「は、離せよ・・・」

「しっかりしろ!行くぞ!」バズーはロクを掴んだまま廊下を引き摺る。

「おいおい・・・どこへ・・・」覇気のないロク。



バズーが連れてきたのは、同じ階のポリス兵専用の食堂だった。

「おーい!誰かいないか!?飯食わせてくれ!」とバズー。ロクは無理矢理ある席に座らされた。戦闘中か、誰もテーブルに居ない。

「腹が減っては戦はできねぇーぞ!そうだろ?ハハハ!」ロクの肩を豪快に叩くバズー。

「あのな?バズー・・・」何か言いかけるロク。すると・・・


「ご注文は?」メイド姿の直美が二人のテーブルにやって来る。

「あ、あの・・・で、出来るもんをに、二人前で・・・大盛りで・・・」何故か急にドモるバズー。

「二人とも戦闘中じゃないの?」と直美。

「待機中だ!そっちこそ避難しないのかよ?」とロク。

「こっちも厨房で戦争なのよ!」

「そうかい・・・それでなバズー・・・」

「そ、そう言う事だ!急いでくれよ!直美ちゃん!」とバズー。

「お任せなり~!」厨房に戻る直美。


「お、お前な・・・あの娘にちゃんって・・・ああどうでもいいや・・・あのなバズー・・・?」

「お、俺な・・・この戦争が終わったら、あの娘に告白しようと思ってる!」急に真顔になるバズー。

「あ、あの・・・とても言いづらいんだが俺たちはな・・・」ロクが説得する。

「俺たちはプロジェクトソルジャーだ!それが何だ!?」急に立ち上がり大声のバズー。

「い、嫌そう意味じゃなくってだな・・・俺の言いたいのはそこじゃなくてな?俺たちはさ・・・」

「俺たちだって恋はしたい!そうだろロク!?」

「人の話聞けよ・・・」頭を抱えるロク。


「この間、あの娘の料理を食った・・・背中に電撃が走った!」

「そっち!?そっちなの!?」突っ込むロク。

「あんな旨い料理、毎日食いたいんだ!どう思うロク!?」と真剣なバズー。

「ど、どうと聞かれてもな・・・?そう言えば戦況は!?」話をごまかすロク。

「ああ、敵の大型艦がこっちに向かってる。陽らがなんとか停めようと必死だ!お前なあ!前からそうだが、インカムくらい付けろよ!」

「あ、ああ・・・あれを付けると、銃を撃つ時に五感が狂う・・・それで敵は?」とロク。

「幸いにも雨雲が出てきた。向こうは伝家の宝刀が使えないって訳だ!」

「太陽光が充電出来ないのか・・・?だから奴等、街に直接攻撃を仕掛けて・・・」


「お待ち~」直美が巨大な皿にてんこ盛りの料理を二人前運んでくる。驚くロクと固まるバズー。

「おいおい鯨の餌か・・・?」とロク。するとバズーが立ち上がった。

「あ、あの・・・な、直美さん・・・戦争が終わったら、じ、自分と結婚して下さい!」突然の告白。

「おいおい・・・いきなりですか?さっき終わったらって・・・」再び頭を抱えるロク。


「うーん・・・考えておくわ!」平然とした直美。

「やったぁー!」なぜか派手に喜ぶバズー。

「おいおい、今の結婚するって意味じゃないぜ・・・?」とロク。

「いいのよ!戦争が終わったら・・・って事でしょ?平和な時代になったら私だって結婚を考えるわよ~彼、嫌いなタイプじゃないしね・・・」わざと恥ずかしそうな仕草をする直美。

「やったぁー!」有頂天のバズー。

「おいおい・・・いいのかそんな簡単に約束して!?」ロクは直美に問う。

「父が死ぬ前によく言ってたわ。強い男に惚れろって・・・これも運命かな・・・?」指を口に近づけあえてバズーを悩殺するポーズの直美。

「やったぁー!!」もう誰も止めれないバズー。


「運命ねぇ?なあ?運命と宿命ってどう違うんだよ?」と直美に問うロク。

「ふーん。あんたいつも変なとこで悩んでるね!?うーん・・・宿命は変える事が出来ない・・・けど運命は変える事が出来る・・・違う?」と直美。

「宿命は変えれない?運命は変えれる・・・?」ロクはさっきの久弥の言葉に照らし合わせてみた。


「さあーて、そうと決まれば早速戦争を終えますよ~ねぇロク君?」

バズーは皿にあった食料をおにぎりのように丸めると、自分のカバンの中にそのまま放り込んだ。

「終えるって・・・おいおい・・・それ持って行くんかい?」

その姿に呆れるロク。するとバズーはまだ食べてもいないロクの首根っこを掴むと、急ぎエレベーターの方に向かった。

「行くぞロク!?じゃあ行ってきますね!直美ちゃ~ん!」嬉しそうなバズー。

「頑張ってね~!」と手を振る直美。



ロクは無理矢理エレベーターに乗り込まされた。

「あのな?バズー?さっき言わなかったけど・・・」ロクが嬉しそうなバズーに話し掛ける。しかし一変してバズーの表情が暗い。

「おい?どうしたんだ・・・?」

「いや・・・それで?」とバズー。

「ああ・・・さっき親父さんが亡くなった。最後に言われたんだが・・・」

「俺らがミュウとでも言われたか?」寂しげな表情で語るバズー。


「なっ!?・・・なんだ知ってたか?」バズーの意外な答えにロクは驚いた。

「あのな?キーンもダブルも知ってたさ!薄々だがな!知らなかったのお前くらいだぞ!」とバズー。

「さ、先に言えよ・・・」渋い表情のロク。


「怪我してもやたらと早く治る。お前の腹の傷もそう!この間の俺の目の怪我もこの通りだ!能力はポリス兵を遥かに凌ぐ・・・お前の事だ。もうとっくに知ってたと思っていた・・・なつみがよく言ってた。ロクは人が気がつかない所をよく見つけるけど、人が分かるような事は、全然気がつかないって・・・」

「お前らな。まるで俺が鈍いみたいに・・・」とロク。


「ははは!それと実はな!先日俺も死龍みたいに吐血した・・・」

「何だと!?笑えない・・・誰かに言ったか?」

「いや・・・お前が初めてだ・・・」突然真剣な顔になるバズー。

「バズー・・・お前それであの子に!?」ロクはさっきのバズーの行動をやっと理解した。

「いいじゃねえか?人生で一回くらい・・・なんかそんな気分だったしな?あの娘の飯・・・いつも電撃が走った!」笑顔のバズー。

「だから・・・そ、そこなの・・・?」と呆れるロク。



エレベーターの扉が開く。そこには修理を終えたアシカムがあった。だがよく見ると戦車の代名詞である砲塔が消えている。

「おいおい、どこをどう修理してんだか!?逆に減ってないかよ?ん・・・?」すると何か不審に思うロク。


「おい!?」すると思わずロクはバズーの容姿を見る。グレーの戦闘服の所々が煤けている。


「お前!この汚れ・・・火薬だろ!?」ロクがいきなりバズーの制服を掴んだ。

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