その38 生まれてきた理由
「嘘だろ!?親父さん!?」ロクは久弥の言葉に耳を疑った
「弘士はその事を知って戦っておる・・・自分がミュウだという事もな・・・」と久弥。
「そ、そんな・・・司令が・・・な、なぜマサルさんは土井の名前を!?」
「そうだな・・・?わしへの挑戦として名前を捨てたのか、またはポリスの代表のわしにでも気を使ってくれたのかだな?最後まで親の立場を守ってくれたのかもしれないな・・・?」
「それでマサルさんは?」
「知らん・・・大場の話では死んだと聞く・・・」
「彼がジプシャンの総帥・・・」
大場が保護された当日。ある取調室。久弥と大場がある机を挟んで座っていた。
「マサルは死んだのか・・・?」と久弥。
「あなたがあの方の父上でしたか・・・?」大場が久弥を見つめる。
「あいつは・・・マサルはなぜポリスを襲う?」
「あなたを越えたかったのでしょう・・・」
「わしを恨んでいたか・・・?」嘆く久弥。
「あなたをですか?誰も恨んではいませんでした・・・ただ元総帥は真っ直ぐな方でした。純粋にこの戦争を止めたかったんです!だからジプシャンの先頭に立った・・・」
「マサルが・・・そんな事を・・・?」驚く久弥。
「そして・・・ロクにも謝らなければならない事があるんじゃ・・・」
「は、はぁ・・・?」
『親の居ないミュウの子供たちは、その能力を惜しみ無く発揮していった。素直で純粋・・・そして恐いくらいに従順だった・・・だがミュウにも弱点はあった・・・人間以上の能力を発揮する彼らは、人間以上に短命で終わるのだ・・・間もなくジプシャン軍が創設し、戦況が悪化する中ある者がこう進言したのじゃ・・・』
「この優秀な能力を身に付けたミュウの子供らに、戦闘能力を身に付けるのです!」ある軍服が久弥に進言する。
「馬鹿な!まだ彼らは幼い子供じゃないか!?」と久弥。
「しかし彼らは短命です。家族もいない・・・人間兵器には持ってこいかと・・・?」
「貴様!自分の言っている事が分かっているのか!」
「分かっております・・・今のポリスの現状を言っておるのです!このミュウプロジェクトに賭けるしか増長するジプシャンに対抗出来ません!」
「しかし・・・ミュウを育てるなど・・・そんな事が簡単に出来るはずがない・・・危険だ危険過ぎる・・・」久弥は下を向いた。
「街の者に集まるジプシーたちは、この街を神の降り立つ街と呼んでいます!四人の神がこの街を守っていると信じ込んでいます。そこで彼らを神の子として育て、街の象徴とするのです!」
現在。地下6階に向かうエレベーター内。久弥の側にはロクと高田がいる。久弥の顔は青白くなっていく。
「ミュウの存在が発覚した後は、街の上の者とシェルターにいた隊員たちに大きな心の溝が出来ていた・・・それは差別という形で表に出てきておった・・・街に避難してきた娘たちはミュウでもないのに化け物と罵られ、酷い屈辱を受けた者もいたという・・・そんな中ポリス離れは歯止めが効かず、ジプシーたちは街を出てジプシャンは増長する・・・弱体するポリス・・・わしに既にポリスをまとめる力はなかった・・・そうしてミュウプロジェクトは始動したのだ・・・我々が生き残る最後の手段だったのかもしれん・・・ロク?わかるか?・・・これが今のプロジェクトソルジャーの原点だ・・・」
「ま、まさか・・・」ロクは驚いた。
「プロジェクトソルジャーの全ては・・・ミュウなのだ・・・」
「お、親父さん・・・!?」ロクは久弥に詰め寄る。
「そして、四天王を作った・・・街の人々の象徴・・・新たに避難してくるジプシーを募る為、ジプシーに神を崇めさせる為に・・・」
「う、嘘だろ!?なあ高田さん!?あんた俺を検査したじゃないか!?俺はミュウじゃないんだろ!?なぁ?何とか言えよ!?」ロクは高田の胸ぐらをも掴む。
「ロク・・・ごめん・・・」高田は下を向いてロクに謝る。
「ロク、高田を責めるな・・・全てわしの責任だ・・・」と久弥。
「嘘だ!俺は信じねぇぞ!」ロクは久弥を睨んだ。
『あんたは初恋だった・・・』ホーリーが微笑む。
『私の髪・・・切ったの許さないから・・・』イブが息絶える。
『後は任せるわよ・・・ロク・・・』キキがロクに銃を渡した。
『戦士として・・・最後くらい花を持たせなさいよロク!?』死龍の虹の三角が敵艦に突っ込む。
『お前と戦えた事を誇りに思う・・・』キーンがロクの手を握る。
『ったく・・・ロクはいつもおいしい所を・・・』ダブルがロクの背中を笑顔で叩く。
『お前も俺もポリスに操られてるんだ!』ロクを説得するヒデ。
「ヒデの言葉が正しかったのか・・・お、俺たちは何の為・・・誰の為に戦って来たんだ・・・?みんなは・・・キーンやダブルや死龍は・・・?キキ、ホーリー、なんで?・・・なんでだ?ポリスを信じて・・・何人もの仲間が・・・なんでなんだぁぁー!!」ロクはエレベーター内の壁を激しく叩くと、床に座り込んでしまった。
「すまん・・・ロク・・・」久弥は天井を向きながらロクに再び謝った。
「な、なんで俺らが・・・?なんでみんなが・・・?俺たちは何の為にここに生まれてきたんだよぉぉー!?」床で泣きじゃくるロク。
エレベーターの扉が開き久弥の乗せたストレッチャーを急ぎ運び出す高田。エレベーター内に一人残されたロク。高田はロクを置き去りにして長い廊下を走り去ろうとしていた時だった。
「待て高田・・・」運ばれてる久弥が口を開いた。
「親父さん・・・」高田もストレッチャーを止め、エレベーター内のロクを見つめた。
「ロク・・・許して欲しい事がまだあるんじゃ・・・」久弥は天井を向いたまま細い声でロクに語る。
「な、なつみを・・・」声を詰まらす久弥。ロクも思わずなつみの言葉に反応し、顔を上げ久弥の方を見つめた。
「なつみを撃ったのは・・・わしじゃ・・・」
久弥の声にエレベーターから這い出てくるロク。
「ば、馬鹿な・・・」声にならないロクの声。
ロクは必死に這いつくばり、エレベーター内から出てくるロク。
「な、なんで?なんでだ!?親父さんなんでだぁぁー!!なんで
なつみをぉー!なんでがあっぁぁー!」
ロクは怒りに我を忘れ、床を這いつくばり久弥に近寄る。
「なんでだぁー!?なんでなつみまで!?なんで親父さんがぁぁー!?なんでだぁー!?」
「親父さん・・・?」ロクの尋常な姿を見た高田は怖くなり、久弥の様子を伺う。久弥は落ち着いた表情で高田に答える。
「いいんだ・・・高田・・・ロクの好きにさせろ・・・」
ロクは這いつくばりながら、左脇の拳銃を抜き這いながら久弥のストレッチャーに狙いを定める。
「なんでだぁー?なんでなつみを・・・!?」
ロクは形相で銃の引き金を引く。