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四天王  作者: 原善
第七章 愛は砂漠に・・・
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その36 滅びゆく星

『次にわしが目覚めたのは、地下シェルターの病室だった・・・ベットで目覚めたわしの前には、女房と息子のマサルがいた・・・』


「お父さん・・・」マサルが久弥に声を掛ける。

「お前達・・・?生きてたか?」久弥がベットから起き上がった。

「心配したわ・・・まる三日も寝込むから・・・」と久弥の妻。

「み、三日もか?ん・・・?そうだ!首都は?東京はどうなった!?」久弥が慌てる。


「北は・・・日本中の主要都市に核攻撃を行った・・・ここにもあの後各国が二発の核が直撃したんだ!」

「各国が・・・二発の核だと・・・!?なぜだ!?耐えたのか?ここは?」

「ああ・・・父さん?あの4本の塔は一体何なんだ!?」息子が問う。

「それはお前らは聞かん方がいい・・・」久弥は首を振った。

「そうか・・・今、アメリカやヨーロッパが北に反撃をしている・・・北もほぼ滅んだと昨日聞いた・・・」とマサル。

「ア、アメリカが反撃だと!?自衛隊はどうなってる!?」と久弥。

「ほぼ壊滅と聞いた・・・」

「何だと!?」



『日本にはアメリカやヨーロッパが加勢。しかし北も中国などの大国を巻き込んだんだ・・・核の報復・・・報復が報復を呼び血で血を洗う泥沼の戦争に世界中が巻き込まれて行った・・・世界に配備されていた全ての核が主要都市に撃ち込まれ、世界の人々は僅か7日で滅んで行く・・・


後で分かったのは、この戦争の引き金を引いたのは同盟国だったアメリカだったのだ。エスシステムの存在を確認したアメリカが、北の原子力潜水艦を攻撃。助けを求めて仙台港に入る所を妨害無線を出していたそうだ・・・核兵器に頼るアメリカにはエスシステムを完成させてはならなかったのだ。


第二次世界大戦。アメリカは二発の核を日本に放った。最初の一発目は当時敵対していた日本の戦意を失う為広島に・・・そして二発目は長崎に・・・長崎の核は日本の戦意を失う為ではない。アメリカの威厳を各国に示す為に放ったんじゃ。その為に何万人もの長崎市民が犠牲になったんだ。しかしアメリカの最初の誤算はその核の威厳で、ロシアや中国まで核兵器を作らせ保持する結果となる。つまらない威厳を保持するため核兵器が作られ、そして世界が核兵器に頼る国々を続々と産み出していく・・・


北は我が国に核を撃たすための大きなアメリカの芝居に乗ってしまった・・・まさか世界中で核が使われるとは、アメリカも大きな誤算を二度してしまう・・・そのアメリカも核で滅んだ・・・だが辛うじて核を避けて生き残った人類も、新たな恐怖が襲った・・・』



「放射能だと・・・?」久弥は真山に問う。

多賀城駐屯地地下コントロール室。


「ああ、南にある福島第一原発、第二原発、北の女川原発・・・北はここにも弾道ミサイルを・・・やませの風次第では、間もなくこの近辺はプルトニュームの嵐になる・・・微量だが既にこの地域でもセシウムを観測した・・・」

「な、なら街の人々を一度地下に避難させよう!ここは核シェルターなんだろ?」と久弥。

「地下に収容出来るのは僅か1000人程だ!ここの隊員たちもいる。街には4万人いるんだぞ!?」

「じゃあどうすればいいんだ!?」

久弥の声にコントロール室の誰もが声を失った。


「攻撃前の建物は残っている・・・分厚いコンクリートの建物に避難させる!窓も封鎖させろ!それとここの地下シェルターは老人、乳児や子供たちを優先に地下に避難させよう!」と真山。

「そうだな・・・」

「シェルターがないならもっと作るんだ!この下に!」

「ああ・・・」



『我々は生き残る為に、必死に目の前の現実と戦った・・・食料、水、放射能・・・また核を逃れ助かった者たちも、続々とこの地に集って来たのだ。核兵器を逃れた街・・・人々はここをいつしか神のいる街と呼び始めた・・・だがそこに秩序も法もなかった・・・気がついたら核戦争から一年が過ぎていたのじゃ・・・ここは西に食料倉庫、東に石油コンビナートや発電所、南には化学工場や自動車工場街・・・当時の政府がこの街を次期首都に選び、エスシステムを開発した理由がようやく分かったような気がした・・・全てはこれを想定して計画されていたんだと・・・・・・しかし・・・』



「ここの地質では植物は育たない・・・数十年、いや数百年・・・」

防護服を着た真山と久弥たちは、ある場所で地質の調査をしていた。

「ここは元ドーム内の場所です!それでも放射能はこの値か!?」

「もっと掘ろう!もっともっと深く!ここの土壌が駄目なら、シェルターを掘った土を使おう!」と真山。


『備蓄していた食料はもう僅かだった・・・我々は汚染された土を掘り起こし野菜や穀物を育てた・・・船を作り、海から海洋深水や魚を得た・・・生きて行く為には何でもした・・・しかし植物を失った地球の温度は上がり、地表は荒れ果て荒野と化していく。僅かに残った建物は砂という砂に埋もれ始めていった・・・街には砂避けの塀が作られた・・・地球は砂の惑星と化していく・・・しかし・・・』


「こんな土では穀物は育たない・・・」

大地の前でひれ伏す久弥たち。


『乾いた大地は、心も体も痩せさせていく・・・飢えて死ぬものが続出し、街から離れていく者も出てきた・・・』



「南に信号?確かなのか?」と久弥。

「ああ、いるんだよ!俺たちのような仲間が・・・」と真山。

「しかし・・・ガソリンも残り少ない・・・それでも行くのか?」

「ああ・・・食料だって限界だろ!?」と真山。

夕陽に沈む大地をトラックが走って行く。見送る久弥たち。


『真山は数名の仲間と共にこの街から旅立って行った・・・真山を見たのはそれが最後だった・・・』



現在。P6、SC専用エレベーターシャフト内。ジャガーはゆっくりと二人を乗せ地下に降りていく。

「死にゆく者も居れば、生まれて来る命もあった・・・息子のマサルが街の娘と結婚し孫が生まれたんだ・・・」と瀕死の久弥。

「それが・・・弘士司令・・・?」とロク。


「土井はるか・・・弘士の母だ・・・」ロクを見つめる久弥。

「土井・・・ま、まさか・・・?」驚くロク。



『しかし、その頃から謎の病気が報告されたのじゃ・・・』


「50パーセント以上!?妊婦の二人に一人じゃないか!?」久弥が驚く。

ある地下室。久弥はある兵から資料を手渡せれていた。

「は、はい・・・白血病なら放射能の影響ですが・・・こいつは・・・?」

「考えられる原因は何か!?」

「今の所、全く持って・・・」

「うむ・・・原因を探れ!なんとしても!それで子供たちは!?」と久弥。

「特に問題はありません・・・」

「全ての医師スタッフ、科学者を集めろ!特別チームを設ける!」



現代。シャフト内のロクと久弥。

「出産直後の妊婦が子供を生んで半年から一年で死亡する事例が増えた。原因は分からず、専門のチームが作られた・・・」と久弥。

「ま、まさか・・・それがミュウ!?やっぱり放射能が原因だったのか・・・?」ロクは久弥を見た。

「放射能なら白血病で死亡率が上がる・・・だがこいつは違ったのだ・・・人から人へ寄生するバクテリアとも噂された・・・」

「バクテリア・・・?」ロクは高田の言葉を思い出した。



再び30年前。ある地下の部屋で会議をする隊員や医師たち。

「こんな統計が出ました!謎の病気は母親か父親どちらかが、当時街の上にいた者だと・・・」

「どういう事だ!?」と久弥。

「街の外で無事保護された者たちや、隊員間同士ではその事例は発見されませんでした!」

「そ、そんな・・・」


『わしはすぐ息子のマサルの顔が浮かんだ・・・』


「そ、それで!?このままだとここはどうなるのだ!?」と久弥。

「は、はい・・・このまま女性だけが居なくなると100年後には・・・人類は滅びます・・・」

「ほ、滅びるだと・・・!?我々がか・・・?」久弥は驚愕した。

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