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四天王  作者: 原善
第七章 愛は砂漠に・・・
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その31 スクランブル発進

『あの日は、日本が大きく揺れた日じゃった・・・』


7時59分・陸上自衛隊多賀城駐屯地。

「住民を避難?どこにだよ!?」久弥が問う。

「さあな?とにかく西って言ってたな?」真山は軍事用のトラックを宿舎前に運転してきた。

「多賀城だけで5万人いる!?これで何人運べるんだよ!?」助手席に乗り込む久弥。

「動かない病人とかが優先だろ?さあ病院回りだ!」真山の表情が厳しかった。


駐屯地から一歩街に出ると、市内は混乱していた。道路は逃げ惑う車両で溢れ渋滞し、駐屯地から出たトラックは立ち往生した。

「い、一体朝から何が起きてるんだ!?」ラジオをスイッチを押す久弥。


ラジオの音声。

『・・・政府の発表では、仙台市内及びその近隣市町村に対して、速やかに避難をするように勧告しました。これは仙台湾沖に国籍不明の潜水艦が現れた事によるもので安全を考慮しての一時避難という事です。もう一度繰り返します。政府は今朝・・・』


「今朝の事か!?国籍不明って・・・それで避難かよ!?」と久弥。

「違う・・・やはりあの船・・・加藤戻るぞ!」真山はハンドルを切ると再び駐屯地内に車を進めた。



8時05分、首相官邸。ある会議室に全ての閣僚が呼び出されている。

「呼び掛けは応じたのか!?」ある大臣が、補佐官に問う。

「全く・・・専門家の話では中で水蒸気爆発を起こしていると?」

「どういう事だ!?」

「中での原子炉が溶け、高温の水蒸気でクルー全員が焼死したと思われるという事です・・・いわゆるメルトダウン・・・」


「メルトダウン・・・?」

「それで航行不能か・・・?」

「でだ?どこの国籍なのだ?」

「今だ不明・・・名乗り出る国はありませんし、どの国のリストにも当てはまらないのです・・・新型の原子力潜水艦としか今の所言いようがありません!」と防衛大臣。


「北か?」総理が低い声を発する。

「恐らく・・・」


「メルトダウンした原子力潜水艦・・・?」

「それでこのままだと何処に着くのだ?」

「今のコースで計算すると、仙台塩釜港の石油基地近辺と思われます?」

「米軍はどうしたんだ!?」

「臨戦体勢には・・・」


「到着予定は?」

「あと三時間程です・・・」

「あと三時間だと・・・街の避難はどうなってる!?」

「今、自衛隊、警察、消防、全ての機関で対処しております・・・しかし仙台市を合わすと百万の人口です。時間が余りにも足りません・・・」

「どうしろと言うのだ・・・?」


閣僚が討議している中、総理だけはまだ一度も発言はなかった。

「総理!?」

「総理!?」全ての閣僚が総理の顔色を伺った。

「総理!?やはりここは・・・」補佐官が総理の側に近寄る。目を瞑る総理。そこにある官僚が会議室に入ってくる。


「総理!防衛大臣!」

「何事だ?」と防衛大臣。

「き、北が・・・?」

「・・・」顔をしかめる総理。



『その頃、私は多賀城駐屯地に戻っていた。そこで見た異様な光景は・・・』


8時23分・多賀城駐屯地。

「これは・・・!?」トラックを降りた久弥が見たのは、ガスマスクに防護服に身を固めたたくさんの同じ自衛隊員だった。

「やはり・・・」真山が唇を噛む。

「真山これは・・・?」

「加藤!お前家族が多賀城市内だったな?」

「ああ・・・どうした?」

「家族をここに呼ぶんだ!」

「こんな時にか!?無茶言うな!今入れるはずが・・・」

「面会って事で呼び寄せろ!いいな?急げよ!!」真山が宿舎に走り去る。



8時31分・首相官邸緊急対策本部。

「き、北が宣戦布告を・・・」ある閣僚が叫んだ。

「はい・・・北の潜水艦への先制攻撃・・・日本とアメリカに対してです!もしこれ以上の攻撃が続けば、日本にも宣戦布告をすると!」


「やはり北か!?」

「いつの間にあのような原子力潜水艦を!?」

「海域を先に侵犯したのはどっちじゃ!?」

「潜水艦への先制攻撃!?どういう事だ!?こっちは何もしていないじゃないか!?」

「どうせいつもの脅しに過ぎん!」

「今はこの潜水艦をどうするかだ!?」

各閣僚が騒ぎ始める。


「総理!ご決断を!?」補佐官が黙る総理に決断を求める。


「決断!?総理どうする気です!?」官房長官が総理に問う。すると変わって防衛大臣が重い口を開いた。

「潜水艦を・・・爆撃します・・・」


「なんじゃと!?相手は北の原子力潜水艦じゃぞ!?」

「北も黙ってはいません!」

「総理!これでは国際世論が・・・?」

「放射能が海に流れ混みます!隣国も承知しません!」

「総理考え直して下さい!」各閣僚が騒ぎ始めた。


「専門家が出した放射能のハザードマップです!」

補佐官は閣僚たちにある資料を配り始めた。

「こ、これは・・・?」

「衝突爆破後の仙台近辺の放射能量です!この時期やませという海からの風で、仙台の中心部分にかなり高い放射能が急激に迫ります!!」


「僅か一時間でか・・・?」

「五十万人が・・・」

閣僚たちの顔が青ざめていく。


「あくまでも専門家の意見です!これ以上の数値を出した者もいました。これでも皆様は爆撃に反対ですか!?」補佐官は声を枯らして叫んだ。

「くっ・・・」

「しかし・・・」黙る閣僚たち。


「今なら海深く沈めることだけで犠牲は最小限に押さえられます!百万人の市民を救うのです!各国も世論もこちらの味方になるはずです!」

「・・・」黙る閣僚たち。

「総理!早期の御決断を!?」補佐官が総理に迫る。各閣僚も総理の顔を伺った。


「芦田防衛大臣!」総理は防衛大臣を呼んだ。

「は、はい・・・」

「青の衝撃を・・・」総理は悲しい顔で何かを告げた。



8時38分・宮城松島航空基地。あるパイロットが慌てて戦闘機に乗り込む。

「スクランブルだと!?実弾!?何だよ戦争でもおっ始まるんかい!?」

パイロットは側にいたスタッフに手渡されたボードの紙にサインをすると、コクピットの窓を閉めた。

「こういうのは三沢基地の仕事だろうが・・・?で?何を迎撃するんだか・・・?管制、出るぞ!」


松島航空基地から一機のブルーインパルス機が大平洋に向かって飛び立って行った。

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