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四天王  作者: 原善
第七章 愛は砂漠に・・・
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その30 メルトダウン

ジプシャン軍プロメテウスブリッチ。

「おい!見ろ!太陽が欠けて行くぞ!」

ある兵士が甲高い声で叫んだ。ブリッチにいた者たちは、窓に顔を寄せ真上を仰いだ。そこには既に半分近く欠けた太陽が、両軍を嘲笑うように不気味に輝いている。

「こ、これは・・・?神殺しの天罰なのか・・・!?」おののく犬飼。

「太陽光の出力低下はこれが原因か!?」とポポ。


「怯えるなバカどもめ!これが皆既日食というものだ!太陽と月が重なって見える自然現象だ!し、しかしなぜ今なのだ・・・!?」

「太陽光出力低下!このまま大筒どころか、この艦すら停止してしまいます!」とポポ。

「ポポ!このくだらない天体ショーはどのくらい続く!?」

「あと40分程かと・・・?」

「天はどちらに味方するのだ・・・?星をも動かしたか!?四天王っ!?」空を見上げ、唇を噛み締める寛子。



P6指令室。

「なにっ!太陽がどうしたって!?」慌てる我妻。

『で、ですから突然月みたいに欠け始めたんですよ!外が少しづつ暗くなっています!』とスピーカー音。

「太陽が?皆既日食とでも言うのか!?」と曽根。

「確かにデータには、今年日本で金環日蝕があると出ています!し、しかし日付も違えば、ここよりもっと北で観測される予定ですよ!?部分日蝕ですらこの辺りは観測は不能です!」と柳沢。


「地軸だ・・・地球の地軸自体が傾いているんだ・・・だからこの異常気象を生んでいるんだ・・・地球はそれだけ病んでいるんだ・・・なぜもっと早く気がつかなかったんだ!?」弘士が独り言のように呟く。


「敵艦は速度を落としながらも、再びこっちに向かって来ます!」と柳沢。

「何だと!?」と曽根。

「は、はい・・・司令!?ロクさんが前司令を救助!緊急オペの準備を申し出てます!」ルナが叫ぶ。

「ぜ、前司令が!?無事だったか!?分かった!高田に準備させろ!」と弘士。

「了解!北ゲート48エレベーターで侵入して下さい!」とルナ。



走行中のロクのジャガー。

「分かった!すぐ戻る!北ゲート開けてくれ!」

助手席には負傷した久弥が座っている。座席は久弥の血で染まりつつある。

「親父さん!もうすぐです!頑張って下さい!」

「わしはもう・・・それより先程の話だ・・・」

「親父さん・・・」久弥を心配しながら車を走らすロク。


『あれは1999年。暑い夏の日じゃった・・・世界情勢は緊迫していた年じゃった・・・』



1999年8月13日、金曜。午前2時43分、大平洋沖。塩釜第二保安巡視船「牡鹿」。真夜中の海上を巡視する牡鹿。海上は深い霧に包まれていた。

「こ、これは・・・!?艦長!?」

あるレーダー員が異変に気づく。艦長らしき男がレーダー員に近寄る。顔をしかめる艦長。



同日午前3時48分。東京、総理官邸首相執務室。

灯りの点いたある執務室をノックもせずに急ぎ開く男がいた。

「そ、総理っ!」

「何事なのだ?」一人の男が座ったまま椅子を回転させる。



『私は当時、陸上自衛隊多賀城駐屯地勤務だった・・・所属は第38普通科連隊・・・海自で問題を起こしての異例の移動だった・・・』


同日、午前4時38分。

「加藤久弥大尉はおるかっ!?すぐ制服に着替えてグランドだ!!」


『私はある同僚と共に、当時の上司に叩き起こされた・・・』


「何だお前もか!?何だ、いい歳して何やらかしたんだ!?」40代半ばの久弥が制服に着替えている。

「お前こそ!?何やらかしたんだ?二人でグランドに出て来いって言われたぞ!?まだ起床ラッパ前だぞ・・・」

隣で着替えていたのは同期の真山大尉だった。真山は眠い顔を擦りながら急いで制服の袖を通す。

「グランドって・・・?走るにしたって何で制服だよ?」

「お前?武器の横流ししてんのバレたんじゃないか・・・?ははっは!」と真山。

「全隊員の前で公開処刑か?それもありだな?」


『まだこの時までは余裕があった・・・』



二人が着替えを終え、眠い目を擦りながらグランドにでる。夜明け前のグランドに航空自衛隊の大型のジェットヘリが着陸していた。

「グ、グランドにヘリかよ?」と真山。

「十数年ここにいるが初めてだな・・・?」


『私はとんでもない事が始まったとこの時思ったんじゃあ・・・』


「早く乗れ!」


『勲章だらけの制服、見たことのない階級バッチ・・・かなり位の高い上官だった。我々はヘリに乗りと直ぐ様ヘリは飛び立った・・・』


「インカムを付けろ!」上官らしい男は二人にインカム付きヘッドホンを渡す。

「加藤大尉、真山大尉とも元海上の出だな!?」

「はぁ・・・?そうですが?私はもう10年も前ですが何か・・・?」と真山。

「至急に確認して貰いたいものがある!」男はインカム越しに話す。

「確認・・・?ですか・・・?」唖然となる二人。


『ジェットヘリは一時間程、大平洋沖を突き進んだ。そこに待っていたものは・・・?』


「あ、あれは・・・?お、おい!?」

夜明け前の薄暗い海上。若き久弥が見たものは赤や青のライトが点滅する20機以上のヘリ。そして海上には3隻の巡視船とイージス艦が陸に方向にかっている光景だった。


「米軍のヘリもある・・・見ろ?奥には米軍の空母とイージス艦だぞ!?」真山が奥の海を見て叫んだ!

「く、空母って・・・アメリカと合同演習か?大規模だな?こんな規模の演習があるって聞いてないぞ!?」と久弥。

「演習ではない!」上官らしき男が叫ぶ。

東の空からはちょうど太陽が昇り始めていた。


久弥はひとり、ヘリや巡視船の中央部分の海上の異変に気づく。

「あ、あれを見ろ真山・・・!?あの中央だ!」

「何だ!?」中央の座席にいた真山が、ヘリの窓際から下を覗く。


巡視船らに囲まれた海上に潜望鏡が立ち、白波を立てながら進んでいるのが分かった。

「潜望鏡・・・潜水艦か!?」同僚の真山が叫ぶ。

「どういう事です!?」久弥が上官らしき男に問う。

「ソナーで捉えたこいつ影だ!この形に見覚えあるか?」男は二人に一枚の写真を手渡す。そこには見たことのない潜水艦の形が示されていた。


「これは・・・あ、ありません・・・」

「わ、私もです・・・」二人から答えは出なかった。

「どこの国の艦です・・・こんな形は今まで・・・」久弥が問う。

「そうか・・・無駄足だったな?ところでこいつ?原子力艦だと思うか!?」男は続いて質問した。二人は再度ヘリの窓から下を覗き込んだ。

「これは・・・?原子力艦です!しかもあの艦は・・・!」真山が即答する。しかし男がそれ以上を言わせなかった。

「ご苦労だった!寝ている所をすまんかったな・・・これより基地に戻る!」

「はぁ・・・?」

二人は顔を見合わせ唖然とする。ヘリは再び陸に向かって飛び始める。



多賀城駐屯地のグランド。ヘリから二人が降り立つと、再びヘリは

東の空に向かって再び飛び立っていった。グランドに二人は残されていた。

「この事は他言無用だとよ!?」久弥は口を尖らせた。

「1999年8月・・・人類は滅びるってあれかよ!?」

「ふふふ、ノストラダムスの大予言か・・・?俺はそういうのは信じないタチさ!」

「それと加藤!あの潜水艦を見て気がついたか!?」と真山。

「な、何だよ!?お前何を見たんだ?」


「もしあれが原子力潜水艦なら、あの艦は間違いなく艦内でメルトダウンを起こしている・・・」

「メルトダウン・・・?なんだそれ?お前やけに詳しいな?」

「俺の大学の専行は原子力でね・・・」鼻の下を人指し指で擦る真山。久弥たちはヘリの飛び去った方向を振り向いた。



7時29分、東京・首相官邸。首相執務室。

「総理!数名の専門家の意見です。」ある総理補佐官が首相に資料を手渡す。首相は黙って資料に目を通す。

「間違いないのだな?」と総理は呟いた。

「は、はい・・・」

「各閣僚は?」

「全員集まっております・・・」

「そうか・・・」

総理は黙って窓の外を見つめる。都会のビルの隙間から日の光が溢れ始めている。


「これよりこの区域に戒厳令を引く!!各方面、各部署に指示を出せ!!」総理が叫んだ。

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