その26 追憶の寛子
『父は私にだけは厳格な父だった・・・』
夕陽の丘の上、幼き寛子とその父が荒野で格闘技のようなものをしている。喧嘩でもなければ、じゃれあいでもない。
「どうした寛子!?こんなものかぁ!?」父親は10才にも満たない寛子を捕まえると砂の上に放り投げた。
「まだまだ!!」寛子は立ち上がると再び男に向かって行く。再び荒野に放り投げられる寛子。よく見ると顔や手足には幾つものアザがあった。
荒野に横たわる寛子。男が汗と砂まみれの寛子を見下ろす。
「お前が女に生まれたのが惜しい・・・」
「お父様・・・」
「大きくなったらあのポリスどもを蹴散らしておくれよ!?」
「はい!お父様!」上機嫌になる寛子。
「寛子!お前を男として育てる!そしてお前はこの星の王になれ!」
「お父様?“おう”とは・・・?」
「この星で一番力のある者よ・・・」
「ちから・・・?」
まだ幼き私には『力』の意味すら思い付かなかった。厳しかった父だが、母の知らない私にたくさんの愛情を注いでくれた。しかしその幸せはそう長続きしなかった。
寛子が16才の頃、寛子はある医師に呼ばれた。いつも父親が座る洞窟部屋。そこには誰も座ってはいない。立ち尽くす寛子。そこに一人の医師が寛子の顔色を伺いながら入ってくる。
「父上がミュウだと!?」寛子は驚いた。
「はい・・・既に末期の状態・・・本人は病状を隠し通していた様子・・・もうここでは処置のしようがありません・・・」その医師は寛子に報告する。
「あ、あの父がミュウだと・・・!?馬鹿を申すな!」男の胸ぐらを掴む寛子。
ある洞窟。父親が横になるベット。その側に寛子はいた。後ろにはまだ青年のタケシ、まだ幼いツヨシが異母の手に抱かれている。
「寛子・・・タケシやツヨシたちと、力を合わせるのだ・・・」既にベットの上の父親は痩せ細っていた。時折苦しんでは奇声をあげる。
「父上!」寛子が父親の手を握り締める。
「このままで行けば、我がジプシャンがこの国を収めよう・・・お前はその時この国の王となるのだ・・・」
「父上!私は女です!王の座はタケシやツヨシに・・・?」寛子は必死に首を振る。
「この国を収め、この星をも支配するのだ・・・よいか?」
「父上・・・私にそのような器量など・・・?」
「お前にはそれがあるのだ・・・誰も持っていない王の資格が・・・」
「王の資格・・・?」
「よ、よいか!?P6は最後に攻めろ・・・」苦しそうな表情の父。
「なぜです!?P6など300のSCを持って攻撃すればすぐ陥落す
る小さな街。なぜそこまであのポリスにこだわるのです・・・?」
「そ、そして・・・最後はポリスと・・・ぐっ!」吐血し悶絶する父。
「お父様!」父の手を握る寛子。
「あの街には神が住む・・・」
「迷信です!核戦争後、神など絶えました!」反論する寛子。
「核攻撃を跳ね返した力・・・それがポリスだ・・・私は母と見たのだ・・・」苦しみもがく父親。
「神を・・・見た・・・!?」寛子は驚く。
「お、大場は・・・大場はおるか?」寛子の父は、後ろに控えた参謀の一人を小声で呼びつける。
「総帥、ここにおります・・・」
若き日の大場が戦闘服のまま近寄る。
「寛子を・・・わしの家族を頼む・・・」
「かしこまりました・・・」大場が一礼をする。洞窟のランプの火が消えようとしていた。
「それと大場・・・」何か言いかける父親。
「ははっ・・・」ベットに近寄る大場。寛子は義理の母らと部屋を出る。密談する父親と大場。
その数日後、父は吐血をし亡くなった。父がミュウというのはほんの数名しか知らされていない。兄弟のなかでも私だけだ。
私はその後ジプシャン軍の総帥となった。私はありとあらゆる手段でP6の四天王の正体を探った。
「街の中にスパイを送れ!」寛子はあの父の席に座っている。
「既に何名ものスパイを街に送っております・・・しかしジプシーでは地下の奥深くの施設までは入れません・・・」寛子に意見をするのは若き犬飼だった。
「用心深いポリスめ!中に侵入出来ないなら何名スパイを送っても意味がないわっ!!」寛子は部下に強く当たる。
「少し小耳に挟んだのですが・・・」と犬飼。
「ポリスは親の亡きジプシーの子供を、地下の施設で訓練しているとか・・・?」
「誠か・・・?」
「どうでしょう?ここは子供を利用するという手は・・・?」
「子供をか・・・?」
「大場!?大場はおるか!?」
「お呼びでしょうか?寛子様?」
「残ったポリスの四天王の首を持ってくるのだ!全員だ!」
「しかし・・・この四天王と呼ばれる兵士たちは、P6の神と崇められる四天王とは無関係では・・・?」
「街に神がおっては、ジプシーたちはいつまで経っても街にしがみつく!その四天王という兵も、ポリスが作り挙げた偽の象徴に過ぎん!」
「寛子様・・・それは・・・」
「全員撃ち取るのだ!そしてすべての首を民の前に晒すのだ!いいな!?」
「は、はっ・・・」不服そうな大場。
「この世に神などいないのだ!」寛子は遠くを見つめる。
四天王の情報を得るために私は手段を選ばなかった。街の子供を拐い、脅し、子供とは云え首をはねた者までいた。中には荒野の砂深く埋めた子供までいる。
四天王と疑わしい者は子供でも首を切り取った。何名も・・・何十名も・・・
その事によって側近の大場は離れ、たくさんの参謀の信用を失った。
「逃げた大場を殺せ!その家族全員だ!ポリスに先を越させるな!掟を破るものは銃殺だ!」
『気付けば私は一人になっていた・・・』
私の考えは間違っていたのか・・・?神を滅ぼさなければ民は無き幻想にすがるだけだ・・・私が神を殺さねば・・・私が神を滅ぼさねければ・・・
「神を・・・神を滅ぼして何が悪いのだぁー!?」ブリッチで寛子が叫んだ。