その24 星の王
「竜の巣・・・あ、あれが・・・?」驚く犬飼。
「海竜のベイフロート基地・・・通称P7・・・」と寛子。
「あ、あれが・・・?P7?」
P7指令室。窓から見える内部の天井からまだ海水が滴り落ちていた。その指令室には久弥と楠本らがいた。
「楠本!準備が出来た砲から順次砲撃!!」久弥が叫ぶ。
「了解!各砲座!敵艦前方の大型砲に狙いを集中せよ!」と楠本。
ジプシャン軍大型旗艦ブリッジ。
「海上の敵が砲撃を始めました!」ブリッジ内は慌ただしくなる。
「一度大筒を収納せよ!右舷主砲、機銃応戦しろ!ポリス兵を蟹どもの餌にしてやれ!!」
大型艦の甲板にあった大筒が一度船内に収納され、P7との激しい砲撃戦となる。
「右舷二番砲塔被弾!」
「22、28番機銃大破!」
「ふん!ポリスにしては考えたな?次から次と・・・良い策士を持っている!」寛子は微動だにしない。
P7指令室。
「第五浮上ポンプ被弾!」
「第二主砲大破!!」
「左舷注水タンク破損!これ以上喰らうと次浮上が出来ません!」
「艦内火災発生!消火急げ!」飛び交う怒号。
「堪えろ!一発でも多く当てるんだ!!」久弥が叫ぶ。
次の瞬間、指令室近くが被弾し久弥は床に叩き伏せられた。
「親父さん!」楠本が久弥に近づく。
火力で勝るジプシャン軍の大型艦は、徐々に海上のP7を追い詰めて行く。
P6指令室。
「P7被害拡大!このままでは海に沈みます!」柳沢が叫ぶ。
「じぃちゃん・・・」弘士は久弥を案じていた。
「レヴィアは何している!なぜ援護しない!」曽根が叫んだ。
「敵艦からの砲撃が激しく、容易に近寄れない様子です!」
「これではP7が犬死にだ・・・」曽根は嘆いた!
「くっ・・・」言葉を失う弘士。
レヴィア1番艦ブリッジ。
「このままではP7が・・・」窓からの光景を見つめる桜井。
「後方に廻った部隊は!?」と陽。
「間もなく射程距離に入ります!」と国友。
「陽さん!突っ込みましょう!このままでは!?」と桜井。
「・・・ったく男って生き物は・・・そんな無謀な作戦はさせないわよ!」陽が一喝する。
「じゃあどうしろって言うんですか!?」桜井が操縦管を叩く。
「まだ負けた訳じゃないわ!まだチャンスはある!」
「て、敵が再びソーラーキャノンを出してきました!」と国友。
「な、何だと!?」陽は窓の外を見る。
ジプシャン軍大型旗艦ブリッジ。先程まで聞こえていた爆撃音も弱まり、再び甲板に大筒が押し上げられていた。
「大筒発射体制に入ります!」
「目標!P6!」
「発射角度0、2マイナス!」少女兵たちが着々と準備を始める。
「寛子様!これを・・・」その中ある少女兵が寛子に歩み寄る。
「何用だ?」
「西に積乱雲発生!間もなくこの辺りは嵐になります!」
「どういう事だ!?」
「太陽光を利用する大筒の発射に影響があるという事です!」
「ハッキリ言え!その天候ではあと何度撃てる!?」
「夕方には豪雨になります!であれば・・・三度かと?」
「三発か?ならばこの一撃で全てを終わらせる!犬飼!?」
「ははっ!発射準備は!?」と犬飼。
「間もなく撃てます!」
「この一撃で決めよ!計算ではあのバリアをも凌ぐエネルギーだ!」
寛子は立ち上がりポリスを指差した。
P6指令室。
「敵発射体制に入りました!」と柳沢。
「P7は!?」と弘士。
「主砲全滅!海上に辛うじて浮いてる状態です!」
「そうか・・・東海林!来るぞ!」と弘士。
「こちらはいつでも!!広目天、増長天出力最大!」と東海林。
街の四方にそびえたつ四本の塔が電磁波を帯びて再び光り始めた。
ロクのジャガー。
「撃つのか!?・・・陽!?何してる!?援護になってないぞ!?」無線を飛ばすロク。
『これ以上は近寄れません!相手の火力見てください!』と陽。
「P7もこのままでは沈む・・・どうしたら?」
ジプシャン軍大型旗艦ブリッジ。
「兵ども!よく見ておけ!我が一族がこの星の王となる瞬間を!」寛子はブリッジの兵士たちに叫ぶ。するとブリッジの奥の通路からツヨシが入ってこの様子を見ている。
「この星の王だと!?ふざけやがって!」
「発射角度よし!」
「エネルギー120パーセント!」
「対ショック装置オン!」
「撃てぇぇぇー!」寛子が叫ぶ。
大型艦の艦首甲板部分から巨大な閃光は真っ直ぐP6の街に発射された。その閃光の衝撃は荒野の砂を空高く舞い上がらせた。
P6指令室。
「発動!」大型モニターを見ていた弘士が叫ぶ。
「了解!」東海林もその声に合わせて大きなレバーを手前に引く。
街は轟音と共に、南と西の塔の間に巨大な電磁波の幕が張られた。
「直撃!」寛子が叫ぶ。
ジプシャン軍大型艦から撃たれた閃光が、P6の電磁波の幕にぶち当たる。貫通はしないものの、街には巨大な轟音が響き渡る。
「どうかぁ!?」弘士は東海林に叫ぶ。
「出力最大です!これ以上は・・・!?」指令室は不気味な振動で震えている。部屋全体が激しい音を立て軋み始めた。
「北と東の出力も回せ!」と弘士。
「は、はい・・・!」
閃光は長く発射され、南の塔の一部に亀裂が生じてしまう。
「広目天に亀裂!?持ちません!!」と柳沢。
「何っ!」
「電磁コイル出力低下!ま、幕が破られます!」と東海林。
「全員対ショックに備えよ!!」と弘士。
電磁波を出していた二本の塔の一部に亀裂が入り、巨大な塔二本は音を立て崩れ落ちる。同時に電磁幕は破られ、敵大型戦艦から発射された閃光の一部が街の中心に降り注ぐ。
街は巨大なエネルギーによって大爆発してしまう。どれと同時に高さ300メートルにも及ぶ二本の塔が街に落下してしまう。地下5階にあった指令室はその衝撃で天井が崩れ落ちる。
「きゃぁー!!」天井の一部がルナや松井に直撃する。
地下一階二階に避難していた街のジプシーたちも、塔の崩壊でシェルターの天井ごと押し潰されてしまう。
五キロ以上離れたロクの場所に、街の爆破音と黒煙が飛び込んでくる。
「ま、街が・・・」ロクは声にならなかった。