その23 竜の巣
ロクは右手でキーンのソードライフルを握った。すると再度バックミラーで死神の位置を確認した。
「見てろ!」
ロクはジャガーに急ブレーキを掛ける。慌てて後ろから追撃している大広もジャガーを回避しようとし、ジャガーの真横に並走した。ロクはそのタイミングを図ってスピードを上げ、運転席側のドアを蹴り開けた。一瞬互いに手の届く位置に着いた。大広はここぞとばかり運転しながら、左手の拳銃で運転中のロクに狙いを付ける。
しかし、ロクもこのタイミングを狙っていた。大広の拳銃の構えと同時に、ロクはキーンのソードライフル振りかざしながら伸ばし、右手で走行中の大広を切り付けた。大広の銃弾はロクの頭を掠り、ロクのソードは大広の首と胴を切り落とす。荒野に激しく転がり落ちる大広の首。バイクは暫くジャガーと並走したが、大広の体が転がり落ちると、バイクも激しく横転する。
ロクは静かにドアを閉めると、額に流れる血を拭き取った。
「キーン・・・満足か!?」ロクはそっとソードを助手席に戻す。
ジプシャン軍大型旗艦ブリッジ。
「ポリスとの距離五千!大筒撃てます!」少女兵が叫ぶ。
「太陽光は!?」と犬飼。
「98パーセント!間もなくです!」
「・・・寛子様?」犬飼が寛子の顔色を伺う。
「よし艦を止めろ!!」
荒野に止まる大型艦。その艦首の先にはP6の街が見える。
P6指令室。
「敵大型艦停止!」と柳沢。
「来るぞ!東海林!?」と弘士。
「いつでも行けます!」
「しかし妙です!敵は先程の大砲を甲板に出していません!」
「な、なんだと!?」驚く弘士。
ジプシャン軍大型旗艦ブリッジ。
「左舷に敵艦隊6隻!あと5分で射程距離に入ります!」と少女兵。
「寛子様?なぜ大筒を・・・?」不安がる犬飼。
「左舷主砲!敵艦隊を近寄せるな!敵艦隊は乱れている!・・・犬飼分からぬか?太陽光を蓄えた大筒に砲撃を喰らえばこの大型艦ごと吹き飛ぶ!」と寛子。
「そ、それは・・・しかしポリスの戦艦の主砲の威力は計算済みです!大筒自体の強度は、十分に耐えれる計算で設計しており・・・」
「念には念をだ・・・馬鹿者が!」
「ははっ!」頭を深く下げる犬飼。
「しかし遅い・・・艦隊が近寄れんとすると打つ手は一つだろ?ポリス?」寛子は立ち上がり窓から街を見渡す。
レヴィア1番艦ブリッジ。
「何してんの!?桜井!?」
怒り気味の陽。船の外は激しい爆音が響いている。
「何って・・・こう砲撃が激しいと・・・」
「こっちは向こうの射程距離外でしょ!?」と陽。
「そうはいえ、火力は敵が上回ります!下手すりゃ当たりますよ!何門積載してんだって話ですよ!」
「野郎っ・・・私たちを近寄せないつもりね?こっちもソーラーキャノンを使えれば・・・ならば奴の真後ろに移動するわよ!」
「了解!」と桜井。
ジャガーを運転するロク。大型艦の後方近くに寄って行く。艦の甲板からは無数の機銃がジャガーを狙って発射されていた。
「主砲が側面で十五門・・・二十ミリ機銃がざっと五十、十ミリ機銃に関しては数えれんくらいある・・・まるで化け物だな?」
ロクはバックミラーで、後方のレヴィア艦隊を見つめた。
「これじゃあ、陽も容易に近寄れんな?さてどうする?」
ロクはチラリと海を見つめた。
「しかし、まだ肝心の大砲が出てない・・・どうしたら?」
ロクは激しい銃撃の中、敵艦の艦首部分を見つめた。
ジプシャン軍大型旗艦ブリッジ。
「敵艦隊は完全に射程距離外に足止めしました!」
「数隻が我が艦の後方に回ります!」
「後方!雷獣確認!現在交戦中!」
「ツヨシ様!他8台、第二デッキに入庫!」
「生きていたか?・・・運の良い奴よの・・・?」寛子が薄笑みを浮かべる。
「ここは、雷獣退治に使いましょうか?」と犬飼。
「放っておけ!・・・しかしP6も以外と呆気なかったな・・・?」
「はぁ・・・?」寛子の言っている意味が分からない様子の犬飼。
「作戦を続行するぞ!大筒を出せ!!」
「ははっ!大筒用意!」犬飼が叫ぶ。
「ふふふ、痺れを切らしたのはこちらか?」笑う寛子。
大型艦の艦首甲板から再び大筒が競り出してくる。
P6指令室。
「敵艦!艦首部分から大砲が出ます!」柳沢が叫ぶ。
「来たか!東海林?タイミングは任せる!」と弘士。
「了解!」
「北ゲートから、敵SC隊が街近辺から撤退の報告!」とルナ。
「来るぞ!」
街の四方の巨大な塔が電磁を帯て輝き始める。何かの機械音が甲高く響き渡る。
ロクのジャガー。
「出たか!?今だ!セブンオーバー!!」ロクが無線を飛ばした。
ジプシャン軍大型旗艦の右舷に位置する海上が波立ち、巨大な建造物が浮上してくる。その建造物は四角い姿をあっという間に海上に現してきた。すると建物の天井部分から4門の主砲を競りだしてきた。
ジプシャン軍大型旗艦ブリッジ。
「か、海上に敵戦艦浮上!かなりの大型です!」少女兵が叫ぶ。
「な、何だと!?」慌てる犬飼。
「慌てるな馬鹿者が!?」一喝する寛子。
「ひ、寛子様?これは・・・!?」
「ふふふ・・・竜の巣だ・・・」不敵に笑う寛子。