その22 ロクVS死神
「ロク!お前またおいしいとこを・・・」
「お前がいてなぜキキを守れなかった!!」
「絶対強くなってやる・・・キキの為にもな!」
「出た出た・・・」
「これはこれはお嬢様・・・わたくし・・・」
「お前だけは敵に回したくないな?」
ロクの脳裏に浮かぶ様々なダブル。
「嘘だろルナ!?嘘だろルナ!?」
『わ、私がデ、デートの約束しなかったから・・・ダブルさんが、ダブルさんが・・・』
『ゲートオープン!!』桜井の声が車庫内に響く。レヴィアの車庫には砂煙が入って来る。
「ダブル・・・ルナ聞こえるか!?」
『・・・は、はい!?』
「奴なら大丈夫だ!きっと死ぬかと思った・・・なんて言って戻ってくるさ!!」
『そ、そうですよね・・・ダ、ダブルさんは死にませんよね?』
「うん・・・桜井!ジャガー出る!!」
無線を切ったロクはギアを入れ、アクセルを思い切り踏み込んだ。するとジャガーは走行中のレヴィアから勢いよく飛び出す。
「ダブル!この目で確かめるまで俺は信じないぞ!」
ジャガーの中で一人呟くロク。
P6指令室。
「敵大型艦!南の海岸線ルートを変えポリスに向かっています。距離八キロ!」と柳沢。
「第一艦隊、第二艦隊とも迎撃に向かわせろ!」と弘士。
「了解!」と我妻。
「アシカム被弾!走行が困難!」と松井。
「東海林!四天王システム準備!」と弘士。
「了解!四天王システム発動!」
東海林が机の巨大なレバーを手前に引いた。
街のゲート近くの区域が丸く開き、各々の箇所から巨大な角が轟音と共に現れてくる。
ジプシャン軍大型旗艦ブリッジ。
「街に巨大な角が!!」少女兵が叫ぶ。
「こ、これは・・・!?寛子様・・・」犬飼が驚く。
「怯えるでない!馬鹿者が!これが父が恐れたポリスの正体だ!」立ち上がる寛子。
「こ、これが神と言われたポリスの正体・・・」
「これで私は父に並んだ・・・そしてようやく父を抜き去る時が来た・・・街に二回目の大筒を喰らわせてやれ!最後のポリスを葬るのだ!!」
「かしこまりました・・・大筒発射準備!」犬飼が叫ぶ。
「太陽光充電まであと18分!」
「甲板に再度大筒を上げます!」と少女兵たち。
「待て!!」寛子が突然叫ぶ。
「ど、どうされましたか?寛子様?」
「スパイの話ではもう一つポリスは策があるらしい・・・大筒は発射寸前まで甲板に出すな!」
「かしこまりました!」
「さて何を見せてくれるのかな?・・・ポリス?」不敵に笑う寛子。
P6指令室。
「敵大型艦!距離6500!」柳沢が叫ぶ。
「東海林!?」弘士も叫んだ。
「準備完了!いつでも行けます!」
「敵、南西より侵入!間もなく敵の射程距離と予想されます!」と柳沢。
「南と西のシステムにシールドを張るぞ!全館!第一級戦闘配備!」弘士は立ち上がった。
「広目天、増長天にシールドを張ります!」と東海林。
ポリス館内の照明が薄暗くなり、指令室や各廊下、ジプシーが避難している各シェルターの部屋も灯りが弱くなっていく。
そんな中でもポリス専用の食堂にいた直美だけは冷静だった。
「コック長!もう火力が弱くなったじゃない!こんな照明で料理なんて作れないわ!指令室に文句言ってやる!!」料理中の直美。
「直美ちゃん!第一級戦闘配備だよ・・・もう料理はいいから自分のシェルターに戻って・・・」と直美をなだめるコック長。
「もう冗談じゃないわ!兵士たちはお腹空かせて戦ってるのに!食事くらいちゃんと与えてあげなさいよ!全く!!」怒りながらフライパンを動かす直美。
「もういいから、妹さんや弟さんたちの所に行きなさいよ。怯えてるはずだよ・・・」
「いいえ!私はここに残るわ!」無心でフライパンを振る直美。
ロクのジャガー。艦隊の先行として敵大型艦の左舷に回り込んでいた。ロクは敵の大型艦の大きさに驚く。
「な、何メーターあるんだ!?レヴィアの四倍?いや五倍はあるのか!?」
するとジャガーは背後から銃撃を受ける。
「敵か!?」
ロクはバックミラーで後方を確認すると、数台のバイクがジャガーを追って来ていた。
「死神か・・・?こんな所で・・・」
「今日こそ決着を付けて貰いますよ・・・雷獣・・・」
バイクに乗った大広が不敵に笑う。
「しつこいんだよ!いつもいつも!」
ロクがバルカンのスティックに手をかける。屋根から競り出したバルカンの砲口が後方に向き、後方にいたバイク隊を襲う。数台のバイク隊はこの一斉射撃に撃たれ荒野を横転するが、大広と数台は間一髪でこの銃撃を交わしジャガーを追い続ける。
「今、知ったけど死神!動体視力凄いじゃん!」とバックミラーを見ながら笑うロク。
「くっ・・・許しませんよ・・・」と大広。
「ほんとしつこい!お前らごときに弾を使いたくないんだよ!」
ロクはギアを下げ猛スピードのままハンドルを切った。するとジャガーは回転しながら追ってくる敵バイク隊の前に突っ込んで来る。すると大広以外のバイク隊は避けきれずにジャガーに衝突、弾き飛ばされる。ロクはハンドルを戻し再び大型艦に向かおうとする。
「雷獣!よ、よくも最後の部下までも・・・」必死の大広。大広は左手で拳銃を握った。
「後は・・・死神だけか?」するとロクはふと助手席にあるキーンのソードライフルに目がいく。
「わかったよ!お前も戦いたんだろ?キーン?」キーンのソードライフルを手にしたロクは再度バックミラーを確認する。
「行きますか!?キーン!?」
片手でハンドルを握るロクの目付きが変わる。