その21 ダブル散る・・・
走行中のダブルのジャガーストーム。変わり果てた荒野を走っていた。
『8番艦に救援をよこせ!』
『9番艦にもだ!誰か居ないのか!?』
『4番艦はどうした!?レーダーにも映ってないぞ!』飛び交う様々な無線。ダブルは目を凝らしながら現場を走る。炎上する8番艦の甲板からは火だるまの兵士が、数名荒野へと身を投げている。
「あらあら・・・だらしない・・・ルナ!?どうなってんのよ!?」
『は、はい・・・て、敵はソーラーキャノンを使った模様!味方ごと第二艦隊に向け発射!敵中型艦及び4番艦は焼失、8番艦、9番艦は航行不能!犠牲多数!』
「おいおい・・・まあ全滅じゃなかったか・・・?」
『第一艦隊が敵の北側に・・・』
「おっ!?」
ルナの無線の途中、ダブルは車窓から装甲が全て銀色のSCを見つける。そのSCは味方のSCを引き連れ後方の大型艦に向かって走っていた。運転席にはツヨシ、助手席には両角が乗っている。
「脱出したのは僅か6台か・・・」とツヨシ。
「しかし、躊躇なしですね?総帥・・・?」と両角。
「味方一隻に敵が三隻・・・どうみても釣り合わん・・・」
「野郎っ!!俺より目立ちやがって!!」ツヨシのSCを見て叫ぶダブル。
『は、はい?ダブルさん!?』と無線のルナ。
「ルナ!これより敵の隊長車を追う!」
『は、はい・・・』
「ルナ?この無線二人だけのオンリーだよな?」
『そ、そうですが・・・』
「そうか!ルナ!?無事に帰ったら俺とデートだ!」
『はぁ!?ちょ、ちょっと待って下さいよ!』慌てるルナ。
「いいだろルナ!?俺はなデートの約束があると無事に帰れるんだ!そういうジンクスなんだ!わかる?」
『はぁ・・・って、今戦闘中ですよ!不謹慎です!』
「お前のそういう真面目なとこが好きなんだよな!なあ?いいだろ?」
『もう!戦闘が終わった考えます!』小声のルナ。
「そうか!約束だぞ!」
『まだするって言ってません!』
「いや、絶対するな・・・約束忘れんなよ!」
『だぁーから約束は・・・』
「そうそう!ロクにこう伝えてくれ!」
『こ、今度は何ですか?』
「後は任せると・・・」
『はぁ!?』驚くルナ。
「頼むな!」
『えっ!?あ、あの・・・』一方的に無線を切るダブル。ダブルはギアを上げアクセルを踏んだ。
ツヨシのSC。
『ツヨシ様!後方に敵SC!猛スピードで接近して来ます!黒い雷獣です!』味方から無線が入る。
「黒い雷獣だぁ!?」ツヨシはバックミラーで後方を確認する。
ジプシャン軍大型旗艦ブリッジ。
「このコースでは残骸が多く、ポリスまでは接近が出来ません!」犬飼が叫んだ。
「迂回をする。進路を海岸線に取れ!」
「ははっ!」
「ふん・・・うまくはいかんものだ・・・ポリスもこれを読んでいたか・・・?」
走りながら激しくぶつかり合うツヨシとダブルのSC。
「機銃が効かないのかこの車両・・・?」バルカンの効果が通じないツヨシの車両。
「じ、時代って奴だな・・・俺たちも古くなったって事か?」嘆くダブル。
レヴィア1番艦ブリッチ。
「三島!?ポリスから何か言ってきてんのか?」怒り気味のロク。
「と、特に・・・作戦は続行です!」
「国友!?状況は!?」
「敵大型艦は海岸線に進路を取る予定です!」
「そうか!桜井予定通りだ!海に奴を追い込む!俺は8番艦と9番艦の救出に回る!陽!指揮は任すぞ!」ロクはタラップを降りようとする。
「り、了解・・・」と桜井。
「ちょっと待ってよ!」陽が呼び止めた。
「ん!?」
「あいつを海に追い込むって!?どういう事よ!?」
「桜井に聞いてくれ!急ぐんだよ!」ロクは慌てて車庫に向かった。
ダブルのジャガーが空高く舞い上がる。
「くっ!」ダブルは車内にいた。
ジャガーはそのまま荒野へと叩き付けられ横転する。そして逆さまのまま荒野に停止してしまった。急ぎ車外に脱出を試みるダブル。
「くそっ!ドアが・・・」
するとツヨシのSCを始め、ジプシャンのSC隊十台に周りを囲まれてしまう。ジープ系のSCがダブルのジャガーに照準を合わす。
『こちらルナ!?山猫ヘッド聞こえます!?』無情にもルナの無線。
「だから・・・デートの約束しろって言ったじゃん・・・」
苦痛の表情のダブル。
その時、ジプシャンのSC隊からダブルのジャガーに向かって機銃が一斉に発射される。エアーブースターを撃たれたのか、ジャガーは木っ端微塵に破壊される。
P6指令室。柳沢がその異変を感じた。
「ん!?ストームの識別信号消えました!」
「えっ!?山猫ヘッド聞こえますか!?山猫!?」ルナが自分のインカムに叫ぶ。
「山猫隊へ!ヘッドを確認して!」松井も叫ぶ。
『こちら山猫45・・・ヘッド機爆破・・・確認・・・』
ある兵の無線が指令室に流れる。
「そ、そんな・・・」悲痛な叫びをあげるルナ。
レヴィア1番艦車庫。ジャガーの中にロクが乗り込んでる。
「桜井!出るぞ!車庫の扉を開けろ!」
『大丈夫ですか!?船止めますか?』と無線の桜井。
「ふふふ・・・気遣い無用・・・行くぞ!!」
『指令室ルナです!』突然無線が割り込んだ。
「どうしたルナ?暗い声して!?」
『ダブルさんが、ダブルさんのSCが・・・』ルナの声にロクは気がついた。
「ルナ!ダブルがどうした!?」
『ダブルさんのSCがエアーブースターを撃たれたようで・・・爆発を確認・・・』
「う、嘘だろ?ルナ?・・・嘘だろルナ!?」
『ダブルさん・・・無線にも出ません・・・』
「嘘だと言え!ルナ!?」ロクは怒りを露にした。