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四天王  作者: 原善
第七章 愛は砂漠に・・・
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その13 地上の神

「ジャガー?・・・ですか?」ロクは一人首を傾げた。

「知っているか?」


「ああ、それ!核戦争前にあったどこぞやの外車のメーカーですよね?」

「確かにあったさ。だが違う・・・お前マヤ文明を知っているか?」

「マヤ文明ですか・・・?さあ・・・?」戸惑うロク。


「そうか・・・マヤ文明の予言では人類は一度、2012年に滅ぶんだそうだ!」寝ていた高橋は立ち上がり、ロクに話し始める。

「2012年?それは外れましたね!人類はもっと前に・・・」

「まあ聞け!お前の言う通り、マヤ文明の予言は当たらなかったさ。その前に人類や動物たちまで核で滅んでしまったんだから・・・」高橋はロクの出鼻を挫くように話に割り込む。

「そ、そうですよ・・・」

「だがな。マヤの予言は、その次の年の2013年に人類は再び再生を始め、新たなる世界を作ると言われていたんだ。」

「滅んだ人類が、新たなる世界をですか?なんか矛盾してます。」


口を尖らせ納得出来ないロクに、高橋は更に語った。

「俺は子供がいた。かみさんもな・・・」

「はあ・・・」

「その子供が生まれたのはその2013年だった。しかし、出産後にかみさんがミュウだと分かり、二人とも死なせてしまったんだ・・・」

「そ、そうでしたか・・・二人ともミュウで・・・」


「ジャガーはな!そのマヤ文明では地上の神と呼ばれていたんだ!」

「地上の・・・神・・・」

「この俺のジャガーはその二人を失った罪滅ぼしと言うか・・・神を復活させたいというか・・・覚えてないだろうが、奇遇にもお前はその2013年にここに拾われてきた・・・俺の子供の生まれ変わりだ。そこでだ!その神と言う車をお前が乗りこなしてみろ!」

「はぁ・・・」何かピンと来ないロク。


高橋が再びその試作車にシートカーバーを掛け始めると、幼いロクは高橋に尋ね始める。

「高橋さんは、以前はどこの部隊に?」

「俺かい?第34対戦車歩兵部隊・・・15人一チームでな、敵戦車たった一台を破壊するだけの馬鹿な集まりだ・・・もう20年以上も前の話・・・まだ俺も18くらいだった・・・」

「対戦車歩兵部隊?」

「チームを三方向に分けてな、仲間10人を犠牲を出してもやむを得ないで敵戦車を一台を破壊する・・・今となっては馬鹿なやり方だろ?」

「十人の仲間を犠牲にですか・・・?」

「最初に攻撃を仕掛けたら、その方向に戦車の砲塔が向く。その隙に

他の二チームが別方向から攻撃を仕掛ける。つまり最初に攻撃したチームは囮・・・まず助からないな・・・」

「そうでしたか・・・仲間を犠牲に・・・」



現在のP6地下三階。ロクはそんな昔の高橋の言葉を思い出していた。

「どうしたロク?」無口になったロクに高橋が声を掛ける。


「いえ・・・別に・・・」


『そうだ・・・技師長は確かに自衛隊のどこぞやの部署にいた。しかしなぜ過去のデーターがないんだ?』

ロクは一人、顎に手をあて目を細めていた。


「お前、また何悩んでんだよ?」高橋がロクに檄を飛ばす。

「いえ別に・・・ああ、さっきの対戦車の作戦、参考になりました!」

「さっき?俺そんな話したか?」

「あ!?いえいえ!?・・・昔、技師長が話してくれた対戦車の作戦なぜか今思い出して・・・あれを使わせて頂きます!」

「ん?・・・戦車?昔の話だな?」

高橋はきょとんとして自分の頭に指を付けた。


「じゃあ、俺行きます!レヴィアを宜しくお願い致します!」

「ああ、最低動くようにはしてやるさ!」

高橋の声にロクは軽く手を上げると、その場から走り去って行った。しかしその裏腹で高橋は暗い顔を見せていた。



ジプシャン軍旗艦メインブリッチ。広過ぎる程のブリッチの中心には寛子が肩肘を付き座っている。船を動かしているクルーたちはまだ幼い顔付きの女子ばかりだった。寛子の横には犬飼、その前にはツヨシと大広の姿があった。そんな中、不機嫌そうな寛子に対し大広が口を開いた。


「寛子様!明日のP6戦、とっかかりは私にさせては頂けないでしょうか?」

大広は頭を下げたまま寛子に進言する。

「バイク隊をか・・・?犬飼はどう思う?」寛子は横の犬飼に問う。


「はあ・・・このままこの艦で捩じ伏せるがよいかと?」

「ふふ・・・力でか・・・?」笑みがこぼれる寛子。


「しかし、敵も小型ではありますがサンドシップを持ち、車両もまだ温存の可能性があります・・・」犬飼の意見に反対したのはツヨシだった。

「敵シップは前回の戦いでツヨシ様が壊滅してくれたのでは?」と犬飼。


「確かに敵にダメージを与えた。しかしだな・・・新兵器は巨大になり大きくなった。威力も大きい・・・だが太陽光を充電中に攻撃を受ければこちらのダメージも大きいのです!」

「回りくどい話はやめよ!ツヨシ?お前ならどう攻めるのだ!?」


「はっ!敵SC隊は死神部隊と各基地のSC部隊に、敵シップはこれより参る古川基地の新型シップで私めが引き付けます!総帥はこのままP6を叩いて下さい!」

「まとも過ぎるな・・・敵に読まれてしまう。されど犠牲は少ないか・・・どうだ犬飼?大広?」と寛子。


「はあ、問題ないかと・・・」やや不服の犬飼。

「私めが先鋒であれば何も・・・」頭を更に下げる大広。


「では作戦は明後日としよう。兵も古川基地にて休ます!よいな!?」

「ははっ!」頭を下げる3人。ブリッチの窓の外は砂埃で何も見えない。


「それとこの作戦より、この艦をプロメテウスと命名する!」寛子が全員に向かって叫んだ。

「プロメテウス・・・?」犬飼が寛子を見直した。

「ギリシャ神話によると、人類に初めて火を与えた神だと聞く・・・この大筒を積み込んだ我が艦に相応しいと思わんか?」

「ははっ!!」全員が寛子の前にひれ伏した。



ロクは地下のポリス専用の食堂に一人でいた。テーブルには一人。既に食事を終えたのであろう、皿の上には空になっている。ロクはその皿をトレーから取り出すと、テーブルの中央に置いた。すると皿だけでは終わらず、スプーンやフォークをテーブルの上に並べ始めた。

「ここがポリス・・・ここが丘・・・そして敵シップの残骸・・・まずこのルートは避けて来るはず・・・北の海岸線は傾斜が急過ぎる・・・すると残りはポリス道か?南への海岸ルート・・・敵はどちらで来るんだ・・・?」苦悩するロクの姿があった。

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