その16 ポリスの秘密
大場の一言で、指令室は静まり返った。
「どうせ、はったりだろが!?」バズーが大声を張った。
「どうでもいいが、司令?包囲網ってなんですか?」とキーン。
「ロク・・・あいつまたなんかやったな?」呆れる弘士。
「まもなく、ジプシャンは、2隻の巨大シップが完成する。そこにあんたらが開発した、太陽熱砲を取り付ける。対要塞型の新兵器なんだろ?それが完成したらポリスは消える・・・」と大場。
「あらら、それは耳が痛いな・・・」
「あららが出るということは、あんたの本音だ。」
「あらら、またバレた?」焦るロク。
「かなりの強わ者だよ。このおっさん!」とバズー。
「どこから漏れた情報だ?」とキーン
大場の言葉を聞く度、弘士も久弥も顔が強張っていく
「それだけじゃない。沖の浮遊ドックもジプシャンは把握してるぞ・・・」動揺するロクを見つめる大場。
「スパイがいるのか?」慌てるロク。
「ああ、仕方ない。作業はジプシーにさせているんだろ?作業時は内部にも入れる!」
「それはそうだが、その情報はトップしか知らない。」
「いるんだよ。そのトップに・・・」
この大場の一言は、指令室をざわつかせた。それは弘士も一緒だった。
「誰かが裏切っているという事か・・・」
「スパイ・・・トップに?」
桑田も不安げな表情でモニターのロクを見つめていた。
「誰がスパイだ?」とロク。
「教えてやりたいが、残念ながら俺の担当ではない。」
「あらら、そこが一番肝心でしょ・・・?」
「そこまでしゃべったら、俺は本当に消されちまうよ。」
「そりゃ、そうだな・・・」
「それと、ジプシャンの総帥は女だ!しかもこいつの悪趣味は四天王の首を飾ること・・・首を切り落としガラスの水槽に入れて飾るんだ。」
「あらら!?」とロク。
ロクの表情は瞬時に曇った。
「息子になる、あんたをあの中に入れたくはないんでな・・・」
「あらら、勝手に息子にしないでくれ・・・」
「俺の話が嘘だと思うならこんな話はどうだ?最近P5の四天王が2名不明になってないか?」
「聞いてないぞ!どういう事だ!?」席から立ち上がるロク。
「何日か前に、捕らえられた報告があった。もう既に飾られているか、タケシの車の後ろを引きずられている。」
ロクの顔が急に険しくなる。
「タケシ?あのストラトスのタケシか!?」
「こっちでも有名人らしいな・・・ああ、恐ろしい男だ。だが今のあんたの腕なら・・・」
「残念だが、俺は偵察専門でな!期待には添えないよ。」
「ドライバーとしても、ガンマンとしてもいい腕なのにな。それでいて偵察隊か?それを封印するのはもったいない。それならあんたが言っていた四天王様はさぞ強いんだろうな?」
「・・・強いのか!?そのタケシって奴?」
「そうだな。俺がイチから育てた。」
「どんな奴が来ようが、問題ない・・・なんとかする!」
「出た出た・・・」ロクの言葉に、秘かに楽しむ桑田。
「・・・ロク!今ジプシャンを叩け!」突然、大場はロクの両肩を掴んだ。
「はぁ!?」
大場は身を乗り出し、ロクの肩を揺さぶる。
「ジプシャンの本隊が北にいる今!本部を叩くんだ!本部や周りの基地のSCは僅かだ。」
「残念ながら・・・今のP6に敵に攻めに行くような力はない・・・」
ロクは下を向き落胆した様子だった。
指令室は二人の会話に落胆していた。何人かの兵はそのまま指令室を出る者までいる。 弘士は深刻な顔付きになっていた。
「まずはスパイ狩りだな・・・?」
その時だった。警報の一部が鳴り始めた。柳沢が叫んだ。各員が各々の席に戻る。
「北よりSC確認!例の装甲車もです!」
「キーン頼むぞ!バズーは待機だ。街には2次警報。各員戦闘配備だ。ダブルは出れるか!?」
キーンは急いで指令室を出る。弘士は急ぎ指示を出した。
「前のSCなら可能ですが!」と桑田。
「よし!ダブルの隊はスタンバイだ!」
「了解!」
急遽、指令室が騒がしくなった。
「変です。装甲車以外の3台はデータにありません。新顔です。例の丘に停車しています。夜なので望遠でも確認不能!」と柳沢。
「またキャンプか・・・」とモニターを見る弘士。
P6を見渡す丘に、タケシと嶋、石森そしてヒデと丸田が既に車を降りていた。ヒデの立っている側にはリキの墓があった。ヒデはリキの墓をじっと見ていると、P6の見える所に移動した。
「P6か・・・意外と低い外壁だな?ヒデ?なぜこんな無防備な街を、どうして我々が最後に残しているか分かるかい?」タケシはヒデに問う。
「さっき父の遺言が、どうのこうのと言われてましたが?別の理由があるのですか?」
「それは他の兵への建前だ。本当はな・・・P6が見えないのさ!」
「・・・見えない?・・・と言いますと?」戸惑うヒデ。
「なぜ、丸い?」
「はぁ?」
「なぜポリスは、ああ丸いと思う?ヒデ?」
「丸い・・・!?」と戸惑うヒデ。
荒野は間もなく、夜が明けようとしていた。