表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四天王  作者: 原善
第七章 愛は砂漠に・・・
158/209

その7 合同葬儀

「どういう事だ!?」五十嵐は叫んだレーダー員の席まで降りていく。


「東、南もです・・・西の本隊まで・・・何があったんだ?」

「猶予でも与えるって事か・・・ジプシャンめ!!」

 五十嵐は机を拳で叩きつけた。


「チャンスじゃないですか?今こそ脱出を・・・」と陽。

「ここのプラントを放棄はしない・・・我々は最後まで戦う・・・」と五十嵐。

「五十嵐司令・・・」


 陽はこれ以上は無理だと感じた。

「諦めろ・・・ここの兵は皆死ぬ気なんだ・・・」とボブ。

「そういう考え・・・好きじゃないの・・・」

「陽・・・」

「帰るわ・・・」と陽。

「明日の朝にしろ!車だってまだ修理が・・・」

「タイヤだけ頂戴・・・あとバッテリーと・・・私が直す・・・」

 ボブは同期の陽の性格を知っていた。


『一度言い出したら聞かない・・・』


「そんな所はロクさんに似ているな・・・」とボブ。

「あんな馬鹿と一緒にしないで・・・」

 そう言うと陽は指令室から出て行ってしまう。見つめる五十嵐とボブ。


「司令・・・?」と五十嵐の顔を見るボブ。

「いいんだ・・・」と五十嵐。



 P6南ブロック付近塀の上。ロクはまた塀の上に来ていた。すると階段を上がってくる足音。振り返るとダブルだった。

「何だ?また逮捕しに来たか?」とロク。

 以前ここでダブルに逮捕された事を根に持った言い方だった。

「なんだまた何かしたのかよ?」とダブル。


 互いに笑い出す。ダブルはロクと反対側の塀の手摺りに寄り掛かった。

「何か用か?」とロク。ダブルがここに来るのは珍しい。

「なんか直美とデートしたって聞いてな?」

「スミの奴・・・」と小声のロク。


「ロクにしては珍しいなと思ってさ!」

「デートじゃねぇし・・・」

「そうか・・・ポリス兵も苛立ってたぜ・・・ロクの野郎いつもいい所を・・・って。」

「それ絶対お前だ?」

 笑顔の二人。しかしなぜか会話が続かない。


「お前が本気なら俺は降りてもいいぜ・・・俺にはあの子はちょっとじゃじゃ馬過ぎる・・・」


 真顔のダブルにロクは吹いた。

「何の話かな??ダブルく?ん?」

 ロクの言葉が凄く優しい。これは凄く怒っているロクを示す。ダブルは直感した。


「い、いや・・・なつみが死んで新しい恋をしろって言ったのは俺だしな・・・」

「お前と違って最初に決めた事をそうそう変えれない・・・不器用なんだなこれだけは・・・」

「うん・・・それがロクだな・・・」

 ダブルはなぜか安心した表情になる。

「ったく・・・お前も“ほどほど”にな?」とロク。

「ああ?・・・ああ・・・」



 翌朝、P6東ブロックのポリスの合同葬儀会場。たくさんの兵が整列をしている。その前には弘士を筆頭に曽根やロク、ダブルの姿がある。指令室からは松井、ルナ、東海林などがいた。


「敬礼!!」


 ある兵の一声で全ての兵が敬礼をする。兵たちの視線の先には50近くの布をかけられた遺体が並べられている。おとといの戦闘で亡くなった者たちだった。遺体はひとりひとり棺に入れられていく。中には子供なのか小さい遺体が目立った。彼らが棺にいる際はすすり泣く声が会場に響いた。


 整列された一番端に訓練生か、10歳くらいの子供らが並ばされ、仲間が棺に入るのを涙ながらに見守っている。その生徒たちの横には、白軍服の高森の姿があった。高森は泣いている生徒を見つけるとすぐそばに近づき、ひとりひとりを殴り付けている。


「人前で泣くんじゃねぇ!!」静かな会場に高森の声だけが響いた。


 ロクは昔の自分たちを思い出していた。ロクは思わず列を離れ高森の傍に歩いていった。

「ロク・・・?」呼び止めようとするダブル。


 すると訓練生を殴りつける高森の手を押さえつけた。

「ロクか・・・?離せ!」と高森。

「教官・・・」

「こいつらには明日のP6を背負ってもらう・・・だから殴るんだ・・・」

「仲間が・・・死んだんです・・・今日だけ・・・本日だけは・・・泣かせてやっては貰えませんでしょうか?教官?」


 ロクの目には涙が光っていた。式では今まさにキーンと死龍が棺に入れられようとしていた。高森は殴っていた右手を下ろすと訓練生たちに背を向けた。


「仲間が死んだんだ!我慢する事はない!悲しかったら大声で泣いてやれ!!」ロクは幼い訓練生に叫んだ。

 ロクの声で、訓練生たちは声を出し泣き始めた。会場は訓練生のすすり泣く声が広がっていく。



 式が終わったのかロクはいつもの場所に来ていた。そこにまたあいつ。

「よう!」とダブル。

「今度は何だ?」ボヤくロク。


「陽が戻ってきてないそうだ・・・」

「昨日戻ってきたんじゃないのか?」

「山口だけな・・・話によるとP5に何か知らせると言ってたらしい・・・」

「P5にか?1台で?無茶するな??」

「行くか?お前と俺なら片道一時間掛かるまい!」と笑顔のダブル。

「おいおい・・・」呆れ顔のロク。



 P5南ゲート付近。陽のロータスは整備され陽が運転席にいる。運転席側の外にはボブがいた。

「考えておきなさいよ?」と陽。

「なんだよ!」と不機嫌なボブ。


「残り少ない同期の言葉よ。生きてなんぼでしょ?P6へ避難して!」

「命・・・?惜しくねぇ・・・」

「ほんと・・・ここはバカばっか!!」

 陽は車のエンジンを掛けるとゲートギリギリまで車を近づけた。ボブの顔を見たくない様子だ。ボブは陽の車を追いかける。


「外に敵は居ない・・・全軍南に下がっている。海岸線を南下しろ!」

「ふん・・・中央突破してやる!北上した敵の正体も暴いてやるわ!」

「じ、冗談だろ?」慌てるボブ。

「嘘よ!」

 ゲートが上に開き始める。陽はボブに挨拶もしないで車を走らせた。見守るボブ。陽は窓から右手を出し親指を立てた。



 P5より南へ30キロ付近。大広のバイク隊をはじめ、SCが数多く並べられている。先日タケシとP6を襲った新鋭艦も荒野にその姿を現していた。


どこぞやの戦艦のブリッチ。広いブリッチには若い女性兵が多く。その中央に寛子が座っていた。寛子の横には犬飼が立ち、その前には大広が跪いている。


「この度は、弘子様直々にお越しなさるとは・・・この大広感激であります・・・」

 下をむいたまま顔を上げない大広。かなり緊張している様子だ。

「いつまで経ってもP5陥落報告をせぬ貴様に変わってやろうというのだ!ありがたく思え!」

「ははっ!しかしなぜ総帥自らこちらへ・・・?」


「雷獣だ・・・」と寛子。

「雷獣ですと・・・?」顔を上げる大広。

「奴が単独で基地3つを潰してくれた・・・これ以上好きにはさせん・・・」

「基地3つですか・・・?」

「先日もスコーピオが沈んだ・・・我々はP6を甘く見ていたのかもしれん・・・」


「それはどうでしょう?」大広の後ろから声が聞こえる。


「ツヨシ・・・」寛子は驚いた。

 そこに居たのは両角を率いたツヨシが立っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ