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四天王  作者: 原善
第七章 愛は砂漠に・・・
156/209

その5 デートじゃねぇし!!

 直美は不機嫌なまま、再び謎の生物を足で潰し始めた。

「おいおい・・・」と呆れるロク。すると直美は床の生物を目で追いながら語り始める。


「一晩中、狭い集会所に押し込まれ!!・・・このっ!!夜も寝れず・・・この虫っ!!・・・やっと外に出れたと思ったら・・・・・・死ねっ!!今度は家が消えているし・・・逃げるな虫っ!!・・・やっと寝れると思ったら・・・ああもう!!・・・食堂を手伝えって・・・なんなのポリスって!!」


 ようやく直美の不機嫌な原因が分かる二人・・・

「家が・・・そうか攻撃されたの特別保護区だったな・・・?」とロク。

「父親の形見とかあったわけで・・・・・・死ね!!」

「おいおい・・・」直美の豹変振りに黙る二人。


 直美が粗方、謎の生物を潰し終えた頃は、床じゅうが緑色の液体となにか変な臭いで覆われていた。ロクたちはすっかり食欲を無くしてしまった。

「ごちそうさま・・・」

 食事の途中なのに、自分の食器を片付け始めるダブル。


「さあーて!掃除!掃除!」

 直美はどこぞやからモップを持ってきては床を掃除し始める。少し落ち着いたかロクは直美に声を掛けた。


「そう言えば、ちびっ子ふたりは?」とロク。

「学校!」直美は床を拭きながらロクに答えた。


「なんだ通わせてるんだ?」

「訓練校はごめんよ!戦士にさせるつもりないし!」

「男の子は拳銃の使い方くらい覚えてなきゃさ・・・」

「あんたの仲間もそう言ってた・・・名前出てこないけど、前髪が長く背中に刀みたいなの背負ってる人!」

「キーンか!?」

「そうそう・・・この時代生き残って行けないとか・・・偉そうになんちゃらかんちゃら言ってたわ!」

「偉そうに?」直美の言葉にロクの表情が変わった。

「何よ!?本当じゃない!」


 ロクが直美の手を掴んだ。

「ちょっと付き合え!」とロク。

「ち、ちょっと何よいきなり!まだ仕事中なの!」手を離そうとする直美。

「コック長!?彼女ちょっと借りるよ!」厨房のコック長に叫ぶロク。


「ロクさん?デートかいな!?」とコック長。

「そんなんじゃねぇや!」

「ほな30分だけやで・・・デート!」このコック長なぜか関西弁。

「デートじゃねぇし・・・」とロク。

「その前に“みな”の許可取った方がええで!艦隊司令!?」とニヤケるコック長。

「なんだよ許可って!?」

 ロクが周りを見渡すと、食堂にいたのポリス兵のほぼが皆ロクを睨んでいる。


「お前ら・・・な、何だよ!何んで俺を睨んでるんだ!?」と困惑するロク。


「睨んでる人。みんなデートの順番待ちなのよね!」と能天気な直美。

「あらら・・・だからデートじゃねぇし・・・」ロクは更に困惑する。



 エレベーターで地上に上がるロクと直美。

「お前・・・結構もてるんだな?」とロク。

「知らなかった?そうねロクにはなつみちゃんしか見えてないみたいだし!」

「なつみは・・・」言葉途中で止めるロク。

 互いに顔を合わせないふたり。


「あいにく恋愛は御法度でね・・・」

「おかしいな・・・?」

「な、何がだよ・・・?」

 ロクはなつみとの関係がこの子に知られているのかと焦った。


「さっきのおチビさんとはもう2回もデートしてるんだけど・・・」

「あ、あいつ・・・」呆れる反面、ちょっと安堵するロク。



 南ブロックにあるポリスの共同墓地。太陽は真上。今日も風が強い。ロクと直美はある墓の前にいた。墓はまだ新しい。しかもまだ名前が刻まれてない。直美はそんな中、恐る恐る墓に近づく。

「なんなの?こんな所に・・・?誰の墓よ・・・?」と困惑な直美。

「明日・・・キーンが入る・・・」

「な・・・亡くなってたの・・・?」

「昨日の戦いで・・・あいつがいなかったら、街のみんなは死んでいた・・・」

「知らなかった・・・私・・・ごめん・・・」


 ロクは黙っていた。

「どうして私をここに・・・?」と直美。

「知って欲しかったんだ・・・俺たちの戦いを・・・」

「戦い・・・?」

「ここに入る為に俺たちは戦ってるんじゃない・・・」

「・・・・・・」直美は黙り込んだ。


「時間だ・・・帰るぞ・・・」腕時計を見るロク。

「デートは?」

「お前な・・・だからデートじゃねぇって・・・」

 そこを立ち去るロク。直美は誰もまだ入ってない墓に手を合わすと急いでロクを追いかけた。


「まだ時間あるよね?」と直美。

「あと18分かな?」とロク。

「私・・・海見た事ないのよね・・・」

「海ですか・・・」ロクは南の方を見つめた。



 ロクと直美はP6の南の海岸に来ていた。すぐそばには、昨日ヒデの戦いで損傷したジャガーカストリーがフロントガラスがないまま停車している。直美ははしゃぎながら砂浜で波と戯れている。時折海岸にいる虫の大群を見つけては、足で潰している。

「おいおい・・・」呆れるロク。

 直美はそんなロクに構う事なくひとり波打ち際で走りまわっている。


「おーい!仕事じゃねえのかい?」

 時間を気にして直美に叫ぶロク。

「もーちょっと!!」

 初めて見る無邪気な直美の姿。ロクも一瞬、今戦争中だという事を忘れてしまいそうになっている。


『そう言えば遠い昔、なつみとこの海に来ている・・・』ロクはふと思った。

 10歳くらいのなつみ。やはり砂浜でひとり走っている。時折波際の海水を手ですくってはロクにかけようとしていた・・・

『なんで今思い出すんだ・・・?』

 ロクは現実の直美を見つめなおした。


「あと7分ですが・・・」

「はーい!」直美がジャガーの方に戻ってくる。ロクも車中に入りエンジンを掛ける。


「あーあー!靴の中砂だらけ・・・」と直美。

「行きますか・・・?」

「楽しかった!デート!」

「おいおい・・・デートの意味わかってる?」

「みんなで遊びに行く事でしょ?」

「うーん・・・それは・・・」ロクは黙ってギアを入れた。



 地下3階のSC整備室。エレベーターが開くと、ロクと直美を乗せたジャガーが入ってくる。そこには整備中のスミの姿があった。スミは二人を見つけるとジャガーに近寄ってくる。


「おやおや・・・艦隊司令?デートですか?」とスミ。

「だから、デートじゃねぇし・・・」と不機嫌なロク。

「それにしても派手にやられましたね・・・フロントガラス・・・ああバンパーとドアも交換だ・・・」


 すると直美が助手席側から降りる。

「ありがと!楽しかったわ!デート!」と直美。

「ほらほら!」とスミが騒ぎ出す。

「だからデートじゃねぇし!!」スミの言葉に怒り出すロク。



 旧岩手県一関付近。陽のロータスは北に向かって走っている。当初は巨大な砂塵に向かって走っていたが、その砂塵は陽のロータスから見て左に位置する。つまり陽の西側に位置していた。陽は何かに気がついていた。

「奴等・・・間違いない・・・P5に向かっている・・・」

 陽はアクセルを踏むとスピードをアップした。

「しかし・・・この砂塵・・・移動スピード・・・昨日の敵とは桁違いだ・・・」

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