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四天王  作者: 原善
第七章 愛は砂漠に・・・
154/209

その3 戦線離脱

 何か大きな船のブリッチ。外の景色は砂塵で何も見えない。船はゆっくりと動いているのだ。

そのブリッチ中央には寛子が薄手の露出の多い軍服の格好で座っている。そこへ参謀の犬飼が入ってくる。


「寛子さま!ツヨシ様のスコーピオが撃沈。ツヨシ様は不明・・・P6は真・四天王を出したと報告があり・・・」

「真・四天王だと!?」と寛子。

「敵艦隊は10隻。スコーピオの働きでほぼ壊滅状態に・・・」

「当方のソーラーシステムか?」

「スコーピオから発射されたのは三発・・・しかしP6は真・四天王を発動させた模様!」

「ふん・・・遂にその姿を現したか・・・我艦隊はこのまま北に進路を取る・・・まずは予定通りP5だ!」

「ははっ!」


「いよいよP6も化けの顔を現したな・・・」



 ロクはレヴィア1番艦に戻っていた。ブリッチのタラップを上がろうとするロク。その時破壊された二式主砲から手に包帯を巻いた砲撃主の多聞が出てくる。ロクはすぐ声を掛けた。

「無事か・・・?」

「まあ主砲がやられましたが・・・艦隊司令こそ・・・なにか顔色が・・・」

 多聞はロクの顔色を伺った。


「一番艦も派手にやられたな・・・?」

「まあ他の艦から比べるといい方です・・・4番艦はブリッチに直撃、死傷者も多数出ました・・・」

「水谷艦長が亡くなったと聞く・・・」

「2番艦はブリッチが無傷で、艦が酷いのでブリッチだけを付け替えると聞きましたが?」

「その判断は正しい!」

「うちも主砲だけすり替えりゃあいつでも動きますよ・・・」

「高橋技師長には優先になるよう頼んでおく・・・」

「助かります・・・」

 ロクはブリッチのタラップを上がった。


「状況は・・・?」とロク。

「うちはこのままP7入りです。被害が少なかったので・・・」と桜井。

「後は?」

「5番と10番だけです・・・海に戻れるのは・・・午前中には出航します。」

「6隻も航行不能か・・・ほぼ壊滅だな・・・?」

「ロクさんはどうされます?」


「さ・く・ら・い・・・」時折こだわるロクの癖だった。

「し、失礼・・・艦隊司令はどうされます?」

「戻ったら暫く帰れんな・・・?桜井?3隻任せていいか?」

「やはり残られますか?」

「キーンの後もある・・・P6に残る。」

「任せてください!」と桜井。



 街は朝日が差し込み、四天王システムの3本の塔は街に長い影を落としていた。太陽光の供給が出来たのか、北の塔に続き南ゲート近くにあった塔が地下施設に沈み始めた。



 南ブロックの地下三階に押し込められていたジプシーは暴動寸前だったが、この塔の沈む機械音に群集は静まり返る。皆ジプシャンが再び攻めて来たと思ったか急に声を押し殺していた。



 レヴィア艦隊の一部はようやく北ゲート入りの許可が出たのか、北の軍事施設を目掛け街の中に入ってくる。入って来たのは第一艦隊ばかりだった。その中、佐々木艦長率いるレヴィア2番艦が北のゲートを通過していた。


「虹が使っていたドックにか!?」と佐々木。モニターに映っていたのは我妻だった。



『はい・・・応急処置だけです。その後はP7へ回って欲しいとの事・・・』

「4番艦はどうする?牽引するか?」

『ドックに入れるのは3隻が限度です・・・損傷の軽いものからという命令です。』

「街じゃ所詮そんなもんだろうな・・・了解した!」

『お願いします!』無線が切れた。


「ほぼ壊滅かよ・・・たった1隻の敵艦に最後のポリスの希望が・・・」



 P6指令室。弘士が不在だったが曽根参謀を中心に指令室を稼動させていた。

「各員!交代で休憩を取らせろ!警戒レベルを下げるぞ!」と曽根。

「こ、これは・・・?」柳澤が何かに気づいた。

「どうした?」と曽根。

「はい・・・日が昇って分かったんですが・・・北ゲートからの映像です・・・中央に出します!」

「ん?」

 中央スクリーンに映し出された映像。それは巨大な砂埃の映像だった。


「お、大きい・・・距離は!?」と曽根。

「観測出来ません・・・」

「気象レーダーに反応なし・・・竜巻ではありません・・・」とルナ。

「新たなる敵シップでは!?」

「ジプシャン・・・まだこのような艦を・・・司令は!?」と曽根。


「何だ!?」弘士が指令室に入ってくる。

「北方面に砂塵・・・竜巻ではありません!」と曽根。

「柳澤?こっち向かってるのか?」

「不明です。ただ映像から見るとかなりの距離です!あと10分下さい!計測します!」


「頼む・・・偵察に黒豹を出す!我妻!?」

「了解です!」と我妻。



 ポリス専用の食堂。黒豹隊の陽と山口らが軽食を取っている。インカムで無線を受ける陽。

「わかったわ・・・私が行く!」

『無茶言わないで下さい・・・陽さん負傷しているでしょ!?』と我妻。

「こんなの怪我に入らないわ・・・それに今、人手出せないでしょ?山猫には休息させて・・・」

『しかし・・・』

「SCも少ない・・・仕方ないわ・・・無傷の我々が行く・・・司令にはそう伝えて!」


『はあ・・・』

「キーンさんも死龍さんもいない・・・バズーさんも離脱よ・・・頼りにして!」



 P6地下三階ジプシー専用医務室。新たに負傷者として担ぎこまれたのはレヴィア6番艦や4番艦の乗組員ばかりだった。皆先日P5から移って来たジプシー出の者たちが多い。その一室に目に包帯をしたバズーの姿があった。バズーはある女性スタッフに包帯を外してもらっていた。

「容態は?」とバズー。

「今のままだとなんとも・・・ただ治療には時間が掛かります・・・」

「戦場に出れないのか・・・」

「詳しくは・・・眼科担当ではないので・・・暫くは安静にして下さい。」

「それじゃ駄目なんだ!!」

 バズーは激しく怒り出した。



 P6指令室。緊張続く指令室にロクが入ってくる。

「ロクか・・・?」と弘士。

「敵ですか?」中央のスクリーンを見てるロク。

「P7に戻るんじゃなかったのか?」

「桜井に任せます。今は艦隊の建て直しが優先かと・・・こっちに6隻を残して私だけ戻るわけにも行きません。」

「そうか・・・お前も少し休め・・・警戒レベルは下げた・・・」

「はあ・・・」


『黒豹出ます!』

 突然流れる陽の声。ロクは思わずモニターを見つめた。

「陽か・・・」とロク。

「北ゲートオープン!」とルナ。

「陽・・・任せたぞ!」と弘士。

『あいよ!』と陽。


「・・・ったく・・・あいつもタフだな?」とロク。

「何か用事か?」と弘士。

「はあ・・・第二艦隊の今後の事で・・・」

「そうか・・・聞こう・・・」



 P6地下三階南ブロック集会室。ある兵士がジプシーが避難している部屋に入ってきた。

「避難勧告は解除となります!地上に出れます!」

 狭い集会室からは安堵のため息が漏れた。ジプシーたちは立ち上がり各々の家に戻ろうとしていた。


「ブロックによっては家や地下一階、二階のシェルターが崩壊してる箇所もあります。その方々は南ブロックの地上に避難施設を用意しております。申し出下さい!」と兵士。

 直美たちは不安になって兵の側に近寄るが、たくさんのジプシーが殺到し入口は混乱していた。



 P6地下会議室。弘士とロクが二人で話しあっている。

「陽をか・・・?」と弘士。

「はあ・・・航海術を専行し、レヴィアを指揮するには適任かと・・・」

「陽はまだ15だ・・・他の兵の手前もある・・・」

「それとキーン亡き後、四天王として陽を考えてはもらえないでしょうか?」

「陽を四天王にか?・・・確かに陽は五期生の主席だ・・・女四天王・・・死龍以来となるが・・・奴はまだ実戦経験が少ない。」

 弘士は目を瞑り考え込んだ。


「今すぐという事ではありません・・・ただ新しい体制を早く取らなければ・・・」

「わかった・・・参謀らの意見も聞こう・・・それと考えたか?」

「はぁ・・・」

 ロクの表情が曇る。


「司令にお任せします・・・軍法を破った私の責任です。」

「そうか・・・高田に伝えよう・・・」

「バズーの容態は?」

「詳しくは・・・ただあまり良くないそうだ・・・暫く前線から退く・・・」

「そうですか・・・」

 ロクは口元に指をやり、ひとさし指を噛み締めていた。


「陽の話・・・本人は承知してるのか?」

「・・・と、言いますと?」

「何時ぞやのお前みたいに、四天王を断ってくる馬鹿もいる・・・陽は大丈夫なのか?」


「あいつの出世欲は俺以上ですよ!大丈夫です。」

「そうか・・・」

「それと・・・」

「何だ・・・?」


「ヒデはこの手で葬りました・・・」

「そうか・・・あのどさくさに・・・よく任務を果たしてくれた・・・」

「あっけない最後でした・・・奴が居なかったら俺は四天王にならなかったはずです・・・そんな奴を俺はこの手で・・・」

「・・・・・・」

「ヒデも語っていました。俺が奴の全てを奪ったと・・・」

「そんな事を奴が・・・?」

「キーンも最後・・・俺たちはなぜ戦うのかと・・・司令?この戦争の・・・ジプシャンとの戦いの意義は一体・・・?」

「・・・」弘士は黙って腕を組んだ。

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