その33 ミュウ研究室
ロクは桑田の棺桶を開けてみた。そこには・・・
ロクは薄目を徐々に開きながら棺桶内を見渡す。しかし棺桶の中は空になっていた。
「やはり・・・」
ロクはそう呟くと、街の中心に向かって走り出した。
P6指令室大会議室。弘士と参謀三名ほどが打ち合わせを終え会議室から出るところだった。会議の入口に駆け寄るロクの姿があった。弘士と目が合う。
「司令・・・」
「うん・・・そろそろ来ると思っていたよ・・・連いて来い。」
「はい・・・」
ロクは言われるまま弘士の後に連いて行く。
地下に降りるエレベーター内にロクと弘士はいた。
「なつみが生きてるって聞きました!!」
黙る弘士に対し、ロクが先に口を開いた。
「生きてる?うーん・・・言葉の言い様だな・・・?」
「言い様?」
「体はという意味だ・・・」
「体・・・?それはどういう意味です!?」ロクは戸惑った。
そうこうするとエレベーターが止まり、扉が開く。ロクにとっては初めての場所だった。
「ここは・・・?」
「ミュウ研究室・・・」と弘士。
「ミュウ・・・」
暗い室内には緑色の液体に入った百体近くの赤ん坊が、まずロクの目に飛び込んで来た。弘士が歩き出すとロクは辺りを伺いながら、その後を追いかける。室内の中央部分にはスタッフが5名ほど動いていた。高田もその中に混じっていた。
「あら?来たの?」高田はロクに軽い挨拶をする。
ロクは水中容器に入った赤ん坊を一つ一つ観察していると、中には手と足をバタつかせるものまである。
「こ、こいつ・・・い、生きてる・・・!?」驚くロク。
「桑田は?」と弘士が高田に問う。高田は更に奥へと二人を案内した。
暗い室内の奥にやや大きな円柱の水槽がありやはり、緑色の液体が入っている。高田はそこで止まった。
「桑田よ!」
高田の声にロクは耳を疑った。
その円柱の水槽には全裸のなつみが体を丸めるように浮いていたのだ。円柱の上からは十本程の管がなつみの口や腹部に伸びている。
「なつみ・・・」
ロクはすぐなつみとわかった。ロクは水槽に顔を寄せると、中のなつみをマジマジと見つめる。
「ど、どういう事です・・・どうしてなつみが・・・?」
ロクは水槽のすぐ側でしゃがみ込み、下を向いてしまった。
「生きているのは、桑田の赤ちゃんよ・・・」と高田。
その言葉にロクは高田の顔を見上げた。
「その父親は・・・ロク・・・あなたね?」
ロクはその言葉に床に頭を擦り付けた。ロクはなにも返答出来なかった。
「まあ、桑田が他の男と寝てなければの話だけど・・・ロクに心当たりはあるの?」
高田の優しい言葉に、ロクは無言で一度頷いた。
「すごい生命体よ・・・」と高田。
ロクはようやく顔を上げ、高田に詰め寄った。
「どうして・・・どうしてお腹の赤ん坊だけが・・・なつみは死んでるんでしょ?なのになぜ・・・」
弘士は黙って二人を見つめる。
「正確にはまだ赤ん坊ってもんじゃないわ・・・細胞って呼んだ方がいいかしら・・・?」
「細胞・・・?」
「あなたが桑田の検死を頼まなかったら、恐らく誰も気づかなかった・・・」と高田。
「どういう事です?」とロク。
「桑田が戦死した日・・・解剖が終わって桑田の死体の処置をしていた時、微かな電流を機械が感知した・・・」
「電流?」
「びっくりしたわ・・・死んだ遺体から電流を検知するなんて・・・でもそこで初めて桑田が妊娠しているんじゃないかって調べたの・・・そしたら・・・」
「・・・」
「レントゲンにも写らないはずよね・・・まだ受精して間もない受精卵ですもの・・・」
「なつみは・・・なつみをどうするんです・・・?」
ロクは高田の肩を激しく揺さぶった。弘士が慌てて割って入る。
「このまま出産させるわ・・・あなたと桑田の子供を・・・」
「し、出産って・・・?」
「事例がないのよ・・・この細胞から育てるなんて・・・ミュウを研究するにはいい材料なの・・・だから・・・」
「ミ、ミュウ?ミュウの子なのか!?」ロクは大声を上げた。
「司令・・・」
高田は目線で司令に助けを求めた。
「すまん、まだロクには・・・」と弘士。
「ならいいわ・・・私が話す・・・ロク、よく聞いて頂戴・・・こうなったのはあなたか桑田のどちらかが、ミュウって事になるの・・・」
「お、俺が・・・ミュウだと・・・?」
四天王 第六章 【真・四天王降臨】 完
四天王 第七章 予告
海辺でロクに抱きかかえられる傷ついた久弥。
久弥「ロクに・・・全てを話さなければならない・・・」
ロク「親父さん・・・」
【ミュウ誕生の謎とは・・・】
『永田町の国会議事堂に降り注ぐ飛行機雲』
【ジプシャンとの対立とは・・・】
『潜水艦の上空を飛び回るたくさんのヘリ』
『緊急発進する戦闘機』
【プロジェクトソルジャーとは・・・】
『核爆発で破壊される街』
【桑田暗殺・・・】
『目を開く桑田』
【そして・・・最後のスパイは・・・?】
ロク「お、お前がスパイか・・・?」
【そしてポリスVSジプシャン、戦いは終焉を迎える】
寛子「捻り潰せ!!」
『ポリスの前に現れた巨大なレヴィアと500台のSC』
松井「出力限界です!!持ちません!!」
【街を覆う巨大な閃光】
【ロクVS寛子】
ロク「おまえがジプシャンの総帥か?」
寛子「ありがとう・・・礼を申すぞ!」
バズー「ロク・・・後は任せる・・・」
ロク「お、お前・・・?」
バズーがロクを抱き締める。
【最後に生き残るのは?ミュウか?人類か?】
久弥「なつみを撃ったのは・・・わしだ・・・」
ロク「バ・・・バカな・・・?」
【全ての謎の答えがここにある!】
四天王 第七章 【愛は砂漠に・・・】
そして・・・四天王は最終章へ・・・
【荒野でロクが自分の頭に銃を突きつけて目を瞑る。】
弘士「ロク!死ぬな!!」
【懸命にロクに叫ぶ弘士・・】
ロク『ありがとう・・・みんな・・・』
【銃声・・・・・・荒野に顔から倒れるロク・・・】
『ロクはなぜ自ら死を選んだのか・・・』
四天王 最終章 【さらば・・・ロク】