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四天王  作者: 原善
第六章 真・四天王降臨
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その27 戦争の理由

 スコーピオ空母ブリッチ。

「左舷!敵補給艦!突っ込んで来ます!」

「何だと!?」とツヨシ!

 ツヨシがブリッチの窓を覗くと、猛スピードで荒野を走る虹の三角の姿がある。


「は、発射を急がせろ!!左舷高角砲てぇー!!」と焦るツヨシ。

 するとツヨシは後方のドアの方へ歩きだした。

「両角!?後は任せるぞ!」とツヨシ。

「はぁ・・・どちらへ・・・?」と両角。

 ツヨシは無言でブリッチを出て行ってしまう。



 死龍の乗る虹はスピードを上げ丘を登り始めたが、敵の高角砲を何発か被弾して火達磨と化していた。死龍の乗るコクピットも機器系統がショートし火花を出し始める。

「まだまだー!!」叫ぶ死龍。



 P6指令室。弘士がこの様子をモニターで見ている。

「死龍・・・」



 2時間程前。死龍が突然指令室に現れた時だった。

「死龍・・・」と弘士。

「司令・・・」

 死龍は既に何かが壊れていたのだろう。弘士は死龍の目を見て直感した。


「もうミュウとして末期のようです・・・このままベットで死ねません・・・」

「その体でどうするつもりだ?戦場に出ると言うのか?」弘士は問う。


「戦場で死にたいんです・・・ミュウで死ぬんじゃない・・・ソルジャーとして死を与えてください・・・」

 何かに耐えているのだろう。死龍の言葉に既に力はなかった。


「言って聞かせても無駄なようだな・・・?」

「はい・・・」


 死龍は弘士だけを見ている。恐らく駄目だと言えば死龍はここで自害するだろう・・・弘士はそう感じた。

「行け・・・虹の三角は既に整備が終わってるようだ・・・」

「あ・・・ありがとう・・・ございます・・・」

 死龍は一礼すると指令室を出て行った。



 P6指令室。弘士は中央のスクリーンの虹に向かって敬礼をする。

「死龍・・・」



 虹の三角は丘を登り、敵シップ左舷に躍り出ていた。既に砲撃を所々浴び、動くのも奇跡だった。

死龍はコクピットでハンドルを握りながら笑みすら浮かべている。

「みんな?・・・今・・・みんなのとこに行くよ・・・」


 すると虹は空母側の左舷に頭から突っ込んでいた。その衝撃で虹のコクピットはめちゃくちゃに破壊される。


スコーピオの艦首はその衝撃で本来の目標である、街中心部分から大きく外れてしまう。



 死龍は立ち上がり何かの装置を押そうとしていた。

「これが・・・ポリスの・・・切り札よ・・・」



 虹の先頭部分から閃光が発射され、空母右舷のブリッチ下付近に貫いた。次の瞬間、虹とスコーピオは大爆発し巨大な黒煙に包まれる。



 レヴィア1番艦ブリッチ。

「死龍!!」

 ロクは思わず叫んだ。この日一番の大声だった。ロクはブリッチのタラップを急いで駆け下りると、甲板から下の車庫に伸びるラッタル(急勾配の階段)を駆け下りていた。

 ロクはそのままジャガーに乗り込むと、傍に居た兵に車庫の扉を開けるように命ずる。ジャガーはレヴィアが動いているにも関わらず、夕焼けの荒野に走り出していた。コクピットのロクの目には薄っすらと涙が見える。


「馬鹿野郎・・・馬鹿野郎・・・」

 ロクは誰もいない車内で呟いている。


 ジャガーは丘の上、虹が爆発した箇所にいた。まず目に入ったのは敵空母部分、そして木端微塵になった虹だった。「これはさすがの死龍も・・・」すると次に目に入ったのは、レヴィア6番艦の艦橋部分だった。横に倒れていたが、まだ原型がある艦橋部分にロクは微かな希望を持てた。

「ひょっとしてキーンは生きてるかもしれない・・・」

 ロクは車を止め、拳銃を下に構えながら急ぎブリッチの入口を捜した。脇にラッタルが見える。ロクはそこによじ登ると、ブリッチを目指した。


 ロクはブリッチに入った。車椅子を見つけたが、キーンの姿はない。

「まさか艦内本体の方か・・・?」

 そう思ってブリッチを出ようとした時だった。崩れた天井に下敷きになった足を見つける。


「キーン!?」

 ロクは慌てて近寄り、天井を払い除ける。そこには血だらけのキーンがいた。微かに息がある。

「しっかりしろ!キーン!!」


 キーンを抱きかかえるロク。するとキーンはロクの声に反応して、目を開けて見せた。


「ロ・・・ロクか・・・?」

 ロクは慌ててインカムの無線を口に持っていく。

「桜井!6番艦ブリッチに生存者あり!至急救護班を・・・」


 するとキーンはロクの無線を手で制止した。

「どうした?」とロク。

「腹をやられた・・・もう助からない・・・」とキーン。

 ロクはキーンの腹部の制服を捲り上げる。腹は縦に15センチ程切れ、大量の血と腸までもが出ているのが分かる。


「くっ・・・」ロクは絶句した。

「なあ・・・?無理だろ・・・?」

 キーンはロクに心配掛けまいと気丈に笑ってみせた。


「キーン・・・」ロクの目には涙が溢れ始める。

「ロク・・・どうして俺らは・・・戦わなければならなかったのかな?」とキーン。

「さあな・・・」

「でも・・・これでやっとみんなの所へ・・・」キーンはじっと天井を見つめる。

「馬鹿言うな・・・」

「敵は・・・?」

「ああ・・・死龍がやった・・・」

「無線聞いてた・・・ヤマトは受けたよ・・・それで死龍は?」

「・・・ああ・・・無事だ・・・」

「そうか・・・俺が死んだら・・・死龍に四天王を・・・戻ってきてもらえ・・・」

「馬鹿言うな・・・今、人が来る。助かる!」

「陽でもいいな・・・あいつは昔の死龍に似ている・・・」

「ああ、そうだな・・・」

 ロクは堪えられなくなり、涙が流れ始める。


「泣くな・・・ロク・・・人間いつかは死ぬ・・・早いか遅いかだけだ・・・」

「キーン・・・」

「俺のソードライフルはお前に・・・拳銃は・・・松井にやってくれないか・・・?」

「わかった・・・もうしゃべるな・・・」


「お前と戦えた事を・・・誇りに思う・・・」

 するとキーンは握っていたロクの手を離し、眠るように目を閉じた。

「キーン・・・キーン!!」


 ロクはキーンの遺体を抱き締めながら号泣した。


 外の太陽は西に沈み始めていた。 誰もこの戦争の理由は知らなかった。

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