その22 四天王システム
直美宅の地下シェルター。怯える3人。その中館内放送が流れる。
『西ブロック38から47ブロックのシェルターのみなさま。地下3階へのロックを解除します。直ちに地下3階を経由して南ブロックへ移動して下さい・・・こちらは・・・』
「お姉ちゃん・・・?」と不安そうな勝也。
その放送を聞いた3人は地下三階への緊急扉を開くと、そこは既にたくさんの人で既にパニックになっていた。ポリス兵が所々で誘導をしているが、たくさんのジプシーたちが我先にと狭い廊下を南ブロックへ走っている。
「行くわよ!いい!?」
直美は雨音を背負い、勝也の手を握り締めると意を決してこの集団に飛び込んで行く。
レヴィア1番艦ブリッチ。ロクが立ったまま三島のすぐ後ろにいる。
「駄目です!無線が混乱して指令室とは不通状態です!」と三島。
「わかった。飛び交う無線を聞いてる分では大した事なかったようだな?」とロク。
「あそこから敵は何を仕掛けたんでしょうか?それと閃光みたいなのが空を走りましたが?」と桜井。
「さあな・・・?」遠くを見つめるロク。
するとキーンからの無線が入ってくる。
『ロクか?』
「キーンか?そっちは無事か?」
『今、地雷除去作業中だ!これから突っ込む!それより街だ?なんか掴めたか?』
「死傷者は出てない様子だ。だいぶ混乱している。電波塔がやられたのか、無線が通じない・・・」
『まあみんな地下に避難してたはず、被害が少ないようなのは確かだ・・・そっちは?』
「地雷を撒かれた所を迂回中だ。もうすぐ敵と交戦に入る・・・敵はなぜかブースターを制止した。間もなく砂塵は消える・・・そうなったらこっちから反撃する!いいなキーン!?」
『わかってるさ!今バズーとダブルが敵の傍まで行ってる。それ待ちだ!』
「了解!待ってるぜ!」
バズーのアシカムが敵シップ側まで近寄って走行している。
「さすがにでかいな・・・しかしさっきは何を発射したんだ?それらしい武器が・・・」
アシカムが近寄ると、敵の砲弾が飛んでくる。寸前でかわすアシカム。
「おっと・・・しかし奇妙な戦艦だ・・・なぜ2隻の船をくっ付けたんだ・・・?どう思うダブル?」
『バズーさんからそんな言葉を聞くとは・・・ほんと男って生き物は・・・ふ・し・ぎ・・・』
突然女性の声が割り込んでくる。声の主は陽だった。
「陽か?こいつのケツに付いてたんじゃないか?」
『そうですな~しかし我々は偵察専門ですので・・・』
「お前な・・・そうだ!お前?戦車くらい乗れるよな?」
『はぁ!?』呆れた陽の声が響く。
スコーピオブリッチ。空母側のブリッチの自分の席で、優雅にフォークとナイフを使ってランチを食べているツヨシがいた。
「敵SC隊接近!高速戦車も混ざっております!」
「機銃で対応せよ!」とフォークで指揮を取るツヨシ。
「間もなく2発目が発射出来ます!」あのスタッフがツヨシに叫ぶ。
「よし!二回目発射準備だ!」口元を制服で拭いさると食事を途中で止め立ち上がるツヨシ。
空母側の甲板が再度開き、黒い大筒が再び競りあがってきた。
「発射角度よし!」
「エネルギー充電125パーセント!」
ある戦闘のない荒野で、陽とバズーが車を降りている。
「どうするんです?」と陽。
「とにかくこいつを運転してくれ!」
「やりますけど・・・」
その時、二人の後ろを閃光が走った。
「な、何だ・・・?」バズーが目を伏せながら空を見上げた。
再びP6方面で巨大な轟音と黒煙が上がる。バズーが敵シップの方を見ると、甲板部分から巨大な砲塔が見えた。
「あれか・・・?」
地響きをあげるP6指令室内。
「敵の攻撃です!」ルナが叫んだ。
「被害は!?」と弘士。
「同じ箇所に直撃!今度は地下1階、2階のシェルターを突き破りました!地下3階にも被害!」
「避難中のジプシーが数名負傷!」
「レヴィア艦隊は何してるんだ!」
「SC隊!機動部隊!敵に取り付いてますが、レヴィア艦隊は・・・」
「柳沢?敵は?」と弘士。
「位置は変わっていません!エアーブースターも動いてません!」
「・・・・・・柳沢!?エスチームを呼べ!」と弘士が叫んだ。
「は?は、はい・・・」慌てる柳沢。
スコーピオ空母側ブリッチ。
「大筒を収納!エネルギー充電開始せよ!」とツヨシ。
「ツヨシ様?P6はこれで・・・?」と両角。
「そうだな・・・次でとどめだ・・・だが・・・敵も黙ってはいないはず・・・3回目はそう簡単に撃たせてくれまい・・・特に敵があの雷獣ならばな・・・」
するとレーダー員が叫ぶ。
「敵の右舷艦隊接近!」
「ほらな・・・も・ろ・ず・み!相手してやれよ・・・」薄笑みで両角を振り返るツヨシ。
「ツヨシ様・・・?」
「なんとしてもあと30分持たせろ!!いいな!」
ツヨシは両角に鬼気迫った顔で詰め寄る。
「ははっ!主砲!敵右舷艦隊に攻撃を集中しろ!」両角が檄を飛ばす。
P6指令室。
「どうだ?」と弘士。
「このままですと、次の攻撃でこの地下5階まで達します!計算ですとこの指令室近辺!」パソコンをいじる柳沢。
「しかし、地下3階以降は核用のシェルター・・・地下1階から3階の戦闘用シェルターと作りが違います!」と曽根。
「地上の建物の消失から計算して・・・一瞬のエネルギーは核エネルギーの20倍と考えられます!このシェルターでは持つかどうか・・・?」
「バカな・・・ここが持たないと言うのか・・・?」と曽根。
「はっきり言います!これは我軍が開発したソーラーキャノンシステムです・・・」と柳沢。
「その計算!間違いないのか?」と曽根。
「威力こそ違えど・・・間違いありません。虹に取り付けているこちらの大型のキャノンタイプの倍の威力はあります!元々は対艦や拠点攻撃用の武器です!それを砲口を大きくしてジプシャンが改良したと考えていいでしょう。」
「バ、バカな・・・なぜ奴等がこのシステムを・・・」曽根は全てが信じられない様子だった。
「北の見張り台からの映像が届きました!5分前のものですが、発射直後の映像です!中央スクリーンに映します!」とルナ。
そこには敵シップの空母部分の甲板から大砲のような物が閃光を発射される映像が映し出された。一同は唖然となった。そこに映っていたのはポリスが開発したソーラーキャノンと同じ形の砲筒だったからだ。
「やはり我々の・・・」
曽根は跪き、制帽を床に叩き付けた。落胆する一同。
「計算が出ました!一回目から二回目発射まで30分程度・・・次の発射と推測される時間まであと25分です!」と松井。
「25分だと?・・・敵は充電の為に停泊しているのか!?司令!?緊急避難命令を・・・?レヴィア艦隊の攻撃が出来ない今、我々としては街を放棄するべきかと・・・」と曽根。
「・・・・・・・・・待て!」
その時、弘士が重い口を開いた。
「全員に告ぐ!四天王システム作動させる!」
指令室の全員が弘士を見つめた。