その14 手紙
あるポリスの一室。薄暗いガランとした部屋だった。窓はなくベットが一つ、机が一つが置かれ、机の上には銃が4丁置かれている。机の上の照明だけが薄暗く部屋を照らしている。殺風景な部屋にはこれといった物はない。
そのベットの上にロクが寝ている。横向きに毛布にくるまり、膝を抱えながら熟睡している。疲れているのか、子供のような顔で寝ていた。すると、ロクの足元の方にあるドアを叩く音が聞こえる。ロクはベットからすぐ起き上がった。
「誰だ・・・?」目を擦りながらドアを見つめるロク。
そのドアの反対だろうか、長い廊下に面したある部屋のドアの前に桑田の姿があった。
「桑田ですが・・・」
『どうした?』
「お休みの所すいません。ダブルさんが、ロクさんを呼んできて欲しいと・・・」
すると、ドアが開きロクが出てくる。ロクは上半身が裸、髪は寝癖で目を細いまま桑田の前に現れた。桑田はロクの裸を見て、慌てて横を向き赤い顔をしたままロクに報告した。
「何だ?」
「な、何だじゃないですよ・・・もう、無線くらい持って下さい!内線も出ないんですから・・・」
「そうかぁ~?すまんすまん、ついうっかり・・・で?」
「ロ、ロクさんが昨日に保護した男性が、ロクさんになら話すと言う事で・・・」
「な、なんで・・・?分かった・・・すぐ行く!」
ロクはドアを一度閉めると、制服の上着を肩に通しながら再び中から出てきた。寝起きなのか顔は不機嫌そうだ。ロクは待っていた桑田を無視するように廊下を歩き始めた。
「すいません。非番の所・・・」
「少しは休ませてくれよ・・・で、なんで俺・・・?これダブルの仕事だろ?」
「そうですが・・・」
「またダブルの機嫌が悪くなるよ・・・」
「すいません・・・ロク兄ちゃんが・・・」少し拗ねてみせる桑田。
そう桑田が言うとロクは急に立ち止まり、すぐ後ろを歩いていた桑田を睨んだ。
「桑田!?ポリス内や指令室では、その呼び方はしない約束だろ!?」
「す、すいません!」
桑田を一度怒鳴ったロクだったが、桑田の顔を見ると再び笑顔に戻った。
「なつみ。最近変だぞ。なんか仕事に気持ちが入ってないっていうか・・・その言い方も人前ではするなよ。」
「す、すいません・・・」手を前で捻らせ、深々と頭を下げる桑田。
ロクは再び、廊下を歩き始めた。少し早歩きのロクを追いかけるように桑田も小走りで追いかける。そのロクの背中を見ていた桑田は、意を決したかのように、胸ポケットから紙を出した。そして自分で一度うなずくと、ロクに向かってこう告げた。
「ロ、ロクさん!?」
「んっ!?」
再び、振り返ったロクに、桑田は手にした紙をロクの前に両手で突き出した。
「こ、これ・・・ロ、ロクさんに読んでもらいたくて・・・」
桑田がロクに手渡そうとしたのは手紙だった。その手紙を見たロクは少し驚いた顔して桑田を見つめる。ロクの顔を見ることが出来ず、目を伏せる桑田。
「おい?こ、これは・・・ひょっとして・・・?」
「す、すいません。規則はわかってます。で、でも・・・」
「お前なっ!」
ロクは、その手紙を見ると桑田を再び怒鳴り散らした。
「す、すいません。じ、自分の気持ちに嘘はつけないと言うか・・・」
「これって、紙だろ?」
「・・・は、はい?・・・それが?」
「大事な資源だろ!?連絡ならメールか無線で済ませ!もったいないだろが!」
「はあ?・・・お、怒るとこ・・・そこですか?」気の抜けた桑田。
「で・・・どこで見つけた?それ?」
「はぁ・・・」遠くを見つめる桑田。
「桑田?」
「は、はい・・・お、おやじさんから手紙を書くって言って、も、貰いました・・・」
「とにかくこれを読めばいいんだな?」
ロクは、気の抜けた桑田の手から手紙をさっと抜き取った。
「いや・・・その、あの・・・それは・・・」
桑田はロクが奪った手紙を取り返そうとする仕草をしたが、その手はすぐ自分の口元に戻り黙ってしまった。
「で?カストリーは、どうなったって?」
「は、はい・・・ロクさん怒りませんか?」
「技師長の悪戯は慣れたよ。」
「本当に怒りませんか?」
「ああ、だから今度は何だ!?」少し苛立つロク。
「ほら?もう怒ってるし・・・」
「ああ・・・すまん・・・」その言葉に冷静になるロク。
「あの・・・ガトリングバルカン砲が2門・・・カストリーの屋根部分に装備され・・・あの、その・・・」
「はぁっ!?」
ロクの顔は蒼くなった。