その21 閃光の荒野
レヴィア6番艦ブリッチ。怒号と混乱でブリッチは慌てふためいている。
「右舷艦尾大破!」
「同じく8番、9番艦もです!」
「後首エアーブースター緊急停止!」
「何が爆発した!?」
「火を消すのが先だぁぁー!」
「各艦次の指示を待ってます!キーンさん!?」
「右第7ブロック火災発生!消火班は消火に当たれ!」
様々な情報が流れる中、キーンは次の自分の行動が分からないでいた。そんな中一つの情報でキーンは我に返った。
「敵SC隊!第一艦隊に向かいました!」
「敵SCが!?ロクに連絡だ!」とキーン。
『どうした?何が起こった!?』とロクの声。
「気をつけろ!敵SC隊がそっちの進路方向に地雷をバラ撒いている!」
『何だと!?』
その頃、ジプシャンの第二次SC隊はスコーピオとレヴィア第一艦隊の間の砂塵の中を縦横無尽に走り出している。
レヴィア6番艦ブリッチ。キーンは無線のプレストークボタンを押しながらロクに語る。
「すまん・・・ロク・・・我、第二艦隊は完全に敵の罠にはまった・・・」
『キーン??・・・巧遅より拙速!!・・・だろ?』無線のロクが急に大声を出した。
「何っ!?」驚くキーン。
『高森教官の教えだ。巧くやっても遅れていては駄目・・・荒くても早く動く事・・・忘れたか?』
「ああ・・・覚えてるさ・・・」
『ならまだ反撃する余地はある。なんせまだ敵は現れてないんだからな!』
「そ、そうだな・・・」ロクの言葉に励まされるキーン。
『まあ俺は突っ込む事と奇襲しか能がない俺のセリフじゃないか・・・そうだろキーン!?』ロクは余裕で答えた。
「ふふふ、わかった!やってみる!」
しかし、その時キーンたち第二艦隊の前に奴が姿を現してきた。
巨大な砂煙・・・まるで丘自体が噴火でもしてるように砂煙が上空に舞い上がっている。その砂煙のせいか、戦艦本体がまるで見えない。かろうじて見えるのは地上から30メートル程にある艦橋部分が時折見えるだけであった。
そして彼はその最高部分に腕を組みキーンが率いるポリスの艦隊を見下ろしている。
「SC隊め・・・いい働きをする。右翼の艦隊は動けん様子だ!まだ射程距離外だ。ほっておけ!」
ツヨシは最も高いスコーピオのブリッチ部分にいた。砂塵に巻き込まれていない所で身動きが取れない第二艦隊を見ては薄ら笑いを浮かべている。
「空母甲板開け!目標P6!!」とツヨシ。
すると空母側の前部甲板が開き、長さ20メートル、直径3メートルほどの黒い砲筒が迫り出してくる。
「主砲!左舷の艦隊をレーダーで確認!発射準備出来た物から撃ちまくれ!射程距離が届かなくても構わん!」
スコーピオの戦艦部分の主砲が左舷の砂塵の中に向くと次々と火を吹きまくる。
後手に回ったのはキーンたちだけではなかった。ロクたちの第一艦隊も砂塵の中、敵砲撃音で混乱している。
「て、敵の砲撃です!」と三島。
「バカな射程距離はまだのはずだ!?」とロク。
「敵の牽制です!」と桜井。
「敵SC隊撤退します!」と国友。
「敵はまた地雷を撒いてんでしょうか?」と桜井。
「くそっ・・・完全に劣性だ・・・」と悔しがるロク。
スコーピオ戦艦側ブリッチ。ツヨシの元に様々な情報が報告されていたが、ツヨシはある機関からの音だけを目を閉じじっと聞いている。
「敵、砲撃してきました!」
「左舷艦隊が後退してます!」
「馬鹿め・・・敵は同じように地雷を撒いていると勝手に思い込んだな・・・くくく、砂塵の中で目の見えない恐怖と戦うがよい・・・」と細笑むツヨシ。
「エネルギー充電100パーセントを超えます!」
「発射角度調整マイナス1、5度!」
「目標P6の中心に合わせました!」
「撃てます!」各兵士たちが叫ぶ。
するとツヨシはサングラスをかけブリッジ全体に叫んだ。
「よし・・・てぇぇー!!」
スコーピオの空母甲板部分から金の閃光が砂塵の中に向けられ発射された。空は一瞬ピンクに染まり、閃光は砂塵の中へと伸びて行く。その次の瞬間、巨大な爆音が響き、ブリッチの向こうに見える砂塵の更に上に巨大な黒煙が舞い上がっていた。
街の一部が巨大な力で捩じ伏せられた。ポリスの西ブロックの外壁の一部が爆風で内側から吹き飛び、塀の上に居た兵士たちが爆風に飛ばされる。
直美宅地下シェルター内。巨大な轟音と地震並みの揺れが3人を襲った。
「きゃー!」
泣き叫ぶ雨音。二人を抱き締める直美。
「大丈夫よ!」直美が二人を言い聞かす。
スコーピオ戦艦部分ブリッチ。
「ブースター停止!大筒を一時格納!」とツヨシ。
空母甲板の大筒は格納され姿が消えていく。
「砂塵で太陽光が拾えなければ事だな・・・うーん良い攻撃だった。第二攻撃まで20分だ!戦艦主砲は左舷敵艦隊を牽制!寄せるなよ!俺はそれまでランチだ!」
「ツヨシ様!?」両角が驚く。
ツヨシはそう言うとブリッチに両角を残し出て行った。
P6指令室は先程の攻撃によって混乱している。
「なんだ!?今の振動は!?」弘士が叫ぶ。
「西ブロックで火災です!」
「敵はあの丘から攻撃を・・・」
「西ブロック!?応答して!西の守備隊の連絡ありません!」
「36、40、43エレベーターがか!?・・・ない?ないってどういう事だ!?ちゃんと説明を・・・!?」
「北ゲートと西ゲートの間の塀の一部が崩壊してます!!」
「救護班は至急現地へ!」
「地下のシェルターから助けを求める連絡多数!!」
指令室は混乱している。そんな中、弘士は柳沢に近寄る。
「わかったか?」
「ミサイルではありません!砲撃でもないです!火薬反応なし!レーザー反応なし。熱反応だけです!なんて言うのか・・・?焼かれた・・・って感じです!」と柳沢。
「焼かれた・・・ま、まさか敵は・・・」
そんな中、地上班の兵士からライブ映像が届く。
「地上班からの映像!中央に映します!」とルナ。
『指令室!聞こえますか!?西ブロック特別隔離施設近辺です!』
食い入るように中央スクリーンを見つめる指令室のスタッフ。ある若い兵士が変わり果てた街中にいる。
『街の一部が焼かれて無くなっている感じです・・・確かにここには建物が・・・見てください!付近の建物は爆風で崩壊してますが・・・ここは何も残っていません!・・・・それと・・・あっ!見て下さい!ち、地表が・・・地表がえぐり取られています・・・』
「地表がだと・・・?無くなっているってどういう事だ!」弘士が兵に叫んだ。
『幅10メートル程でしょうか?深いところで5メートルくらい・・・しかし地下1階部分の住居シェルターまでには達してないようです・・・』
「柳沢!?敵シップは!?」と弘士。
「はい・・・現在停止してます。エアーブースターを切ってる様子で、間もなくカメラで映像が捉えれます!」
「動いてない・・・?ルナ?地下の様子は?」
「は、はい。こ、混乱してるようですが、まだ被害はありません!シェルター内は死傷者なし!」とルナ。
「敵はなぜこんな攻撃を・・・ま、まさか?・・・各員に告ぐ!西ブロックのジプシーを地下3階の連絡通路を使って南ブロックへ避難!全員だ!」弘士は何かに気づいた。
「しかし・・・それでは・・・このブロックだけで六千人のジプシーがいます!病人も居ます!移動だけでも約一時間は掛かります」と曽根。
「急げ!敵はもう一度ここを狙ってくる!急げ!次はもたないぞ!・・・敵はここを狙っている・・・この地下を・・・」弘士は焦っていた。