その18 砂塵という闇へ
東ブロックの直美宅の地下施設。直美と雨音、勝也らが身を縮めて待機をしている。時折聞こえる警報やサイレンなどに怯える下の二人。
「お姉ちゃん・・・」雨音は直美に抱きつく。
「大丈夫よ・・・地下だったら・・・」
ジプシャン軍旧浜田基地。半壊した2階建ての建物の上からある兵が丸田に叫んでいた。
「北の方角に砂煙!こっちに来るぞ!」
装甲車の中にいた丸田は慌てて外に飛び出した。
「何だ・・・サンドシップか?・・・それにしてはなんて排出量だ?」
「どうする?この風だ・・・巻き込まれるぞ?」と羽生。
「P6へ行くのか?どこの誰かは知らんが・・・ならこの風と砂塵に便乗させてもらうぞ!」
そう言うと丸田は装甲車に乗り込んでいた。
P6指令室。ルナの所に無線が入った。
「こ、こちら指令室ルナ!」
『こちら黒豹ヘッド・・・敵シップは旧三陸道を南下。このままだとP6まで70分だ。』と陽の声。
「旧三陸道ですね?了解!」
『案外、足が遅いんで助かったわ。そっちは?』
「万全の構えです!」
『このままだと、北の丘の横に出るわ!気をつけて!』
「了解!」
レヴィア6番艦。ブリッチのキーンと白井艦長。
「間もなく、9と10が上陸予定!」
「間に合ったか・・・」安心するキーン。
「第一艦隊は北に進路を取った模様!」
「ロクたちは北に?砂塵が直撃するぞ?」
「砂塵を利用する敵に対し、その砂塵を利用する気では?」
「砂の中に身を潜める気か・・・?ロクならやりかねない・・・ならこちらはプレッシャーを掛けてやるか?ポリスの西に進路を取る!9番艦、10番艦に伝えろ!」
「了解!」
「P6始まって以来の艦隊戦だ!気合を入れろ!」
黒の第二艦隊はポリスの西に移動始めた。
ポリス北10キロ旧三陸道付近。単独行動のロクのジャガーがいた。既にこの辺り、敵シップの砂塵と風のせいか、かなり視界が悪くなっている。すると南下している敵のSC隊をジャガーのレーダーが捉える。ジャガーのフロントガラスに警告の文字。
「敵か!?3台だけ?レーダーがなければ気づかなかった・・・お前は凄くいい子!」
ロクはスピードを落とし、ジャガーのガトリングバルカンのレバーを引き上げた。
「砂塵の中、ご苦労さんね?偵察隊かな?」
スコーピオブリッチ。通信兵がツヨシに叫んでいた。
「味方偵察隊より連絡!12キロ先に雷獣発見!!」
「雷獣だと!」両角がいち早く反応した。
「我が後ろにいるのは、雷獣ではないのか?モ・ロ・ズ・ミ!?ポリスめ舐めた真似を・・・」
「どうされます?ツヨシ様?」
「このシップに挑んで来る気ではあるまい。我が船はこのままP6に直進する!」
「了解!このまま前進だ!」
ロクのジャガー。
「SC隊が下がった?・・・今度の敵はタケシと違って随分と慎重だな?さて・・・どうしたもんだか・・・?」
ロクは引き上げる敵SC隊の砂塵を見て困り果てていた。
「今度の敵は艦隊戦をお望みか・・・?なら・・・」
ロクもハンドルを切るとP6方面と引き返していた。
スコーピオブリッチ。通信兵が再びツヨシに叫んだ。
「雷獣下がりました!」
「どういう事だ!?」と両角。
「ふん・・・面白いな雷獣・・・まあまだ何か出てきそうだな?しかし、偵察隊が前に出れないとは・・・」
「海岸から浜田経由で偵察を出させます!」
「偵察隊は戻すんだ!」
「しかし・・・」
「中央を堂々と行こう!」
「はあ・・・」
「段々と敵の動きが読めてきたぞ・・・」
仁王立ちのツヨシが前方を見据えていた。
P6指令室。我妻がインカムの無線を受けている。
『敵は偵察を下げた!奴等艦隊戦で来るぞ!』とロクの声。
「了解しました。」
『ああ、俺が偵察に出てるのは司令には内緒な!?』
「はいはい、まだ気づかれてませんがね・・・」小声になる我妻。
『よ・ろ・し・く・・・俺はレヴィアに戻るよ!』
「了解!」
その時、指令室に軍服の死龍が入ってくる。驚く室内。弘士は雛壇上の司令室を下りてきた。
「死龍・・・?どうした?」
「司令・・・」
北ゲート内に待機中のP6のSC隊。その中にダブルのジャガーストームとアシカムがある。ドライバーたちは皆外に出て北側に徐々に広がる砂塵を見つめていた。ダブルはバズーとアシカムの上にいる。
「やばいな・・・風が強くなってくるぞ!砂塵も高くなるばかりだ・・・」とダブル。
「あのシップの排出量から考えると、砂塵は相当の量になるな?」とバズー。
「視野が奪われるな・・・?」
「接近戦は不可か・・・?」
「厄介だな・・・」
南下中のスコーピオ。スコーピオは巨大な砂塵を進行方向に撒き散らしながらP6へ向かっていた。ブリッチではレーダー員だろうか、ツヨシに大声で報告をする。
「間もなくP6がレーダー範囲内になります!」
「そろそろか・・・」ツヨシは立ち上がった。
「まずはSC戦と行きますか?」
「P6とはいえ、100台の数はあるだろう・・・こちらは50・・・分が悪い・・・まずは敵の戦艦潰しだ!」
「ははっ!」
P6の北には巨大な砂塵が広がっている。その砂塵は北から吹くやませという季節風でP6を今まさに覆おうとしていた。
ロクはレヴィアの甲板に立ち北の砂塵を見ていた。
「嵐がくる・・・」