その14 白髪のヒデ
スコーピオブリッチ。ツヨシが中央の司令席に座っている。そこへある兵が叫んだ。
「敵のSCです。真っ直ぐこちらに向かっています!」
するとツヨシが余裕の笑みを浮かべ答えた。
「1台だと・・・?まさか奴か?こちらのSC隊は出撃させた。斑なら囲って討ち取れと言え!」
「はっ!」
すると両角がツヨシの傍に近寄ってくる。
「ツヨシ様?雷獣でしょうか?」
「さあな・・・しかし1台とはねぇ・・・こちらも舐められたな・・・」
「艦砲射撃はどうされます?」
「味方のSCがいる・・・?だが・・・任せるよ・・・」
「かしこまりました・・・敵SCに砲撃用意だ!」両角が指示を飛ばす、
スコーピオの左部分。戦艦の主砲3門が静かに動き始めていた。
陽のロータス・エスプリ。車窓前方には複数のSCの砂塵が見える。
「来たか・・・偵察相手に20台・・・本気ね・・・」
スコーピオブリッチ。緊迫した中、1本の無線が流れた。
『敵、黄色と黒の斑!雷獣です!』
「艦を止めろ!」
「しかし・・・ツヨシ様・・・」
いきなりのツヨシの命令に両角が止めに入った。
「先日2台確認した内の1台かもしれません・・・今出るのは・・・」
「囮という事か・・・」
「まずは艦砲かと・・・?」と両角。
「ふん・・・相変わらずお前は賢くて硬いね・・・?」
陽のロータス・エスプリは間もなく敵SC隊と接触しようとしていた。陽はあるレバーを引き抜くと、左右のボンネットから小型バルカンが迫り出してくる。
「あの人ならこんな時、どう戦うのかな・・・?さぁーて行きますよ!」
陽は敵のSC隊の中心にあえて飛び込んで行った。
「何っ!!」
すると飛び込んだと同時にスコーピオからの艦砲射撃と思われる爆撃がある。陽の近くにいた敵SC隊の何台かは、その爆撃で吹っ飛んでしまう。
「バカな・・・味方の所に砲弾を撃つなんて・・・」
敵のSC隊はその異変に気づき、陽のロータスから遠ざかった。
「き、嫌わないでよね・・・好きになられても困るけど・・・」
陽はハンドルを巧みに捌きながら、敵サンドシップに近づいた。
スコーピオブリッチ。ある兵の悲痛な無線が流れた。
『こちら先発隊!艦砲を御止め下さい!味方が・・・味方が!』
「無線は無視だ!敵は討ち取ったか?」
ツヨシはその無線を無視して、敵の確認を優先した。
「敵SC、来ます!」
ツヨシの表情が変わった。
「1台でか・・・?機銃!生きて帰すな!」
陽のロータスは、砂塵がたくさん舞う敵シップ近くまで取り付いていた。その砂塵の少しの隙間にあの船の姿を確認する。
「やはり、先日の大型か・・・?」
陽のSCはスコーピオからの機銃攻撃の標的になっていた。
「これだけ確認できれば・・・」
陽は急ぎハンドルを切ると、今度はP6方面へと向かってアクセルを踏んだ。
ヒデはその頃、再びあの巨大空洞の手摺階段を登り始めていた。そして聖と死龍が待機している薄暗い横穴のシャフト口に入る。そこには聖の姿しかなく、聖もシャフト内で大量の吐血をしている。
「大丈夫か!?聖!?」とヒデ。
「私は・・・もう・・・」聖は虫の息になっている。
「あの女は!?」死龍を捜すヒデ。
「この先に様子を見に行くって・・・」
「あいつ・・・」
すると、そこに早坂も上部から戻ってきた。
「ヒデ!上も駄目だ!なにか電子ロックが掛かっている・・・手動じゃ開かない!下はどうだ?」
「下には何もなかった。行き止まりって事か・・・」
「あの仮面の女は?」と早坂。
「この先に向かったらしい・・・」
ヒデたちは薄暗くなったシャフトの奥を見つめた。
「やっぱり逃げたんだよ。俺たちの居場所を伝えるぞ?ここじゃ危険だ・・・おい・・・ヒデ!?」
突然早坂がヒデの様子を見て、顔色を変えた。すると虫の息だった聖もヒデの様子を伺う。
「どうした・・・?」とヒデ。
「ヒデ・・・お、お前その髪の毛どうした・・・?」
「髪の毛だと?」
早坂の言葉に聖もヒデの顔を見つめる。よく見るとヒデの黒髪が全て白髪に変わっていたのだ。
「ヒデ・・・」聖も思わず声を上げた。
「どうした?」
「髪の毛がどうした?」
「白髪になってしまってるぞ・・・」
ヒデは自分の髪の毛を撫で回した。
「埃でも付いたんじゃないか・・・?」
すると早坂はヒデの髪の毛を恐る恐る触り始める。
「間違いない。白髪だ・・・お前一体何をしたんだ・・・?」
「何っ・・・」
「・・・」
ヒデも聖も驚いて声にならなかった。
その頃、死龍はあるダクトの入口を蹴破ってある地下室に辿り着いていた。そこは非常灯だけが点いている薄暗い機関室だった。
「ここはどこだ・・・?」
死龍は部屋中を捜しまくり、ある内線電話を見つけ操作してみた。
「かかるのか?かなり古いタイプだ・・・?」
P6指令室。我妻が内線電話を受けていた。
「死龍さんから内線連絡!」
弘士が慌てて我妻の席に降りてくる。
「死龍か?場所は?」
「地下17階、北特別機関室からです!」と我妻。
「代われ!」
「はい!」
弘士は我妻の席の内線を手にする。
「死龍か?なぜそこから・・・」
『北の空洞から更に下の階に・・・ここは一体何なの!?』
「そこは、戦前の施設・・・立ち入り禁止区域だぞ!」
『戦前の施設?だけどまだこの施設は生きてるわ・・・それとあの巨大な空洞はなんなの?』
「後で説明する。無事なんだな?ヒデたちの人質になったと聞いたぞ!?」
『奴等もこの先にいる。今は奴等から離れている。脱出できなくて困っている様子よ。なぜあのダクトに兵を送らない?』
「死龍・・・そ、そこの施設はな・・・」
弘士は返答に困っていた。