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四天王  作者: 原善
第六章 真・四天王降臨
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その10 ヒデと死龍

 ヒデたちの前に現れたのは、まるで何かを研究するためのラボが広がっていた。何人かのスタッフはヒデたちの様子を見て慌てて反対側の出入り口に逃げていく。ヒデは誰も居なくなった事を確認すると、武器にしていた注射器と高田を早坂に任せた。


「こ、ここは・・・なん何だ・・・?」


 ヒデは一人、ラボ内を歩き回る。そこには大なり小なりの水槽や、円柱のガラスの水槽内に赤ん坊から、成人女性の遺体が全裸の格好で緑色に着色された何かの液体に漬けられている。特に赤ん坊の数は多い。

 すると聖が奥の方から何かを見つけ叫んだ。


「な、なんなの?中にいるの・・・ロクの妹よ!」

 ヒデがその声に聖のそばに近寄った。


「こ、これは・・・あのなつみなのか・・・?」

 そこには巨大な円柱の水槽に入っているなつみの遺体があった。ヒデはなつみとこういった形で再会するとは思ってもいなかった。なつみは全裸のまま、緑色の液体に漬けられ、何かの管が鼻や口、そして腹部やへその辺りに何本も繋がれている。ヒデはそれを唖然と見つめていたが、やがて早坂に羽交い絞めされいる高田の元へと向かった。


「おい、ここは何の施設だ!?」

「ここは・・・ミュウを研究する施設よ・・・」

 高田は悔しそうにヒデに口を開いた。

「ミュウ・・・そんな施設がこんな地下に・・・噂は聞いていたが・・・本当に実在するのか!?」

 ヒデは驚きのあまり、再度施設内を見渡す。



 その頃、地下6階でロクらとバズーらが合流していた。しかしロクと兵らが揉めていた。

「なぜ追わない!?」

「ここからは我々も入れません・・・」躊躇する若い兵たち。

「IDがないんだ・・・入るには司令の許可がいる!」バズーが唇を噛み締めていた。

「その司令は?」

「非常階段から守備隊を送っているとの事・・・ロクさんらはここで待機と・・・」ある兵が答える。

「追えって言ったり、待機って言ったり・・・それで聖は?」とダブル。

「はあ・・・一人女性を連れて行ったとの事です!」

「手が出せないか・・・誰か地下の見取り図を持って来い!」



「ミュウはなぜ産まれ・・・なぜ早く死んで行くのかをここで研究していたの・・・」と人質の高田。

「タケシの捜していた、真・四天王ってこれの事か?」

「馬鹿言わないで。これが四天王に見える?」

 ヒデは言葉を失い、その場で跪いた。

「ポリスは一体何を隠してるんだ・・・?」


 すると奥の階段から、複数の足音が聞こえてくる。早坂はいち早くそれを察知した。


「ヒデ?やばいぞ!ここにも兵が来る!急げ!」と早坂。

「ああ・・・先生よ!?聖は貰っていくぜ!」

「馬鹿言わないで・・・その子はここならまだ治る可能性が・・・」

 高田は必死にヒデを説得した。


「荒野で産まれたんだ・・・荒野で死ぬのが運命さ・・・」ヒデは弱った聖を見つめる。


 するとヒデは空調の網戸を蹴破り、そこに聖を押し込んだ。

「ここから上に向かうんだ!」とヒデ。

「ヒデ・・・」

「いいから先に行け!必ず追いかける!」

「うん・・・」

 聖は一人空調ダクト内を這って行く。


「こいつはどうする?殺すのか?」

 早坂は羽交い絞めの高田を更に締め上げた。

「いや・・・ここを出るまでは、人質になってもらうさ・・・ポリスにとっては、無くてはならない人らしいしな・・・?」

 そこに部屋のドアが開く音がする。身を構える早坂とヒデ。


「久しぶりねヒデ・・・」

 そこにいたのは、青白い顔をしたマスク姿の死龍だった。


「その声・・・手榴か・・・?」ヒデは身構えた。

「し、死龍・・・なぜここに?」驚く高田。



 地下6階で待機中のロクたち。ロクがインカムの無線に耳を澄ましている。

「ダクトを使って逃走だと?・・・おい!図面だ!奴等また上に上がってくるぞ!」


 兵が施設内の図面を床に開く。それを見つめる3人。

「この空調ダクト・・・一体どこに繋がってんだ?」とバズー

「普通のダクトと違うな・・・?」とダブル。

「この施設・・・一体・・・?バズー!?」

 ロクはバズーを睨んだ。

「し、知らねぇよ・・・大体、俺らこの階から下へ入れねぇだろ?」

「こいつ・・・普通のダクトじゃねぇ・・・中央の制御室へ繋がっている・・・なにかを隔離する為に作られている・・・」とロク。

「ヒデ・・・何するつもりだ・・・?」とバズー。



「生きていたか・・・?手榴?」

「勝手に殺さないでよね・・・」冷たく答える死龍。

 死龍の息は荒く、立っているのが精一杯の様子だった。死龍は武器も持たずヒデたちに近づく。


「こんな地下に、こんな施設があるとは思わなかったな・・・」

「お前も知らなかったのか・・・?」驚くヒデ。

「6年ぶりかしら・・・?ジプシャンにいたとはね?」

「そのマスク・・・あの時の・・・?」

「幸いにもね・・・」死龍は仮面に手をする。

「何の用だ?」

「その人と人質の交代よ。」

 死龍は高田を見てヒデに話した。


「信用できないな・・・」

「その人はソルジャーたちに格闘技を教えるくらいの猛者よ・・・私は見ての通り病人よ・・・どう?」

「・・・・・・」ヒデは高田を見つめた。

「追ってくるのはロクよ・・・あなたにとっても私の方が都合が良くて・・・?」

「早坂さん!?」

「ああ・・・死龍ってあのP5の四天王か!?なぜここに?」

 ヒデは高田を早坂に任すと、死龍に近づき身体検査をする。


「武器は持ってないようだな・・・いいだろう。あんたが人質ならロクも手が出せないか・・・?」とヒデ。

「相変わらず、賢いじゃない・・・?」

「早坂さん?そいつを縛って置いてください。」

「ああ・・・この女医はいいのか?」と早坂。

「大丈夫だ!こいつを人質に連れて行きます。」

「・・・」

 死龍はヒデに不敵に笑ってみせた。

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