その5 海戦
ジプシャン軍古川基地。サンドシップ・スコーピオンを側から見つめるツヨシらが居た。ツヨシらは技術のスタッフから説明を聞いている。
「この空母部分の甲板をくり貫き、大型の砲座を取り付けます。奴等がソーラーキャノンと呼んでる物です!」
「何から何までポリスのパクリだな?」とツヨシ。
「はあ・・・詳細は不明ですが、奴等の技術系のトップにスパイを潜り込ませていると聞きます。」
「だろうな・・・あの姉貴がやりそうな事だ・・・」
「それで砲座は、上下の角度だけ調整が出来ますが、左右の角度は出来ません。ですので、空母側の艦首を発射方向に向けてもらいます!」
「わかった・・・いつ完成するのだ?」
「10日ほどで・・・」
「駄目だ!7日で完成させろ!」
「ははっ・・・!」
スタッフがその場を離れ急ぎ持ち場へと走っていく。ツヨシと両角は、作業風景を見つめていた。
「ポリス内部にもスパイを潜入させる・・・総帥も手が込んでますな?」と笑い顔の両角。
「いや・・・親父の代からの手法だ。姉貴や兄貴の頭じゃそんな事思いつかないな。」
「しかし、大きい砲座だ・・・こいつを使うのにまたソーラーパネルをたくさん取り付けるとかで・・・」
「くくくっ・・・せっかくのテニスコートも潰さないといけないな・・・」苦笑いのツヨシ。
海水を進行中のレヴィア6番艦。ブリッチには、船酔いで蒼い顔をしたロクがいた。
「間もなくP7到着です!」と白井艦長。
「やっとかよ・・・」とロク。
すると通信兵がロクに呼びかける。
「ロクさん。加藤司令から無線です。」
「俺?・・・スピーカーへ・・・」
「了解!」
「こ、こちらロクです。」
『敵シップの攻撃!それと女川、石巻の敵基地への攻撃!!』
「あっ?」
『あっ!じゃないよ・・・なんで報告しないのかな。ロクくん・・・』怒りを堪えている声の弘士。
「あれ?その報告は、新隊長の陽の担当じゃないんですかね・・・?アハハ・・・お、おかしいな?」
『一応、まだ君の管轄だったぞ!・・・で?一人で基地二つ潰すなんていい度胸じゃないか?へ?ロクくんよーぉ!?』
「す、すいません・・・」
『相変わらずの、命令無視。それに単独行動・・・まだ牢屋に繋いでいた方が良かったな?敵から雷獣と言われるはずだ・・・』
その無線を聞いていた、キーンや白井も苦笑いしている。
「いやー、まさか本気で撃ってくるとは思わなくて・・・まあそれで、ちょろっとしただけですよ。ちょろっとです・・・アハハ・・・ハハハ・・・はい・・・」
『どこがちょろっとだよ!!2基地の兵は全員射殺したそうだな?山口が吐いたぞ!』
「あ、あいつ・・・」ロクは小声でぼやいた。
『まあ、お前が銃を扱えるようになったのは幸いだが・・・キーン?聞こえてるなら先輩としてキッチリロクを躾ろよ!』
「自分の訓練とリハビリ、そして新しい環境に慣れるので精一杯ですよ・・・とても獣と恐れられる方を飼い慣らせませんよ!?」とキーン。
『フフフ・・・ロクを頼むぞ!』
「了解!」
無線が切れ安堵の顔をしているロク。それを振り返って見守るキーン。
「ふーん・・・二つの基地をね・・・?」とキーン。
「たまたま当たっただけだよ・・・」口を尖らすロク。
「たまたまね・・・?」
ロクはキーンを見て妖しく笑っていた。
タケシ襲撃から半月が過ぎようとしていた・・・
宮城沖40キロの海上。レヴィア1番艦から5番艦が海上を北へと向かって航行していた。
「ソナー反応!水深300メートル、4次の方向です!」と国友。
その声にレヴィア1番艦ブリッチが慌しくなる。
「敵に潜水艦?ジプシャンに潜水艦なんてあったか?鯨の群れじゃないのか?ちゃんと確認しろ!」とロク。
「長さ100メートルを超えます。鯨ではありません!」
「進路は!?」
「こちらに気づいた様子!数は二隻。真っ直ぐこちらに向かっています!」
「三島!各艦に戦闘配備だ!」
「はい!」と三島。
「潜水とは厄介ですね・・・こちらも潜りますか?」
舵を取っていた桜井が心配そうにロクを振り返った。
「いや、進路このまま!」と冷静沈着なロク。
「し、しかし、300メートル海の下の潜水艦です。爆雷も効果は・・・このような時はこちらも潜り、魚雷でしか沈めません!」
「気づくのが遅かった・・・そう敵に思わせろ・・・」
「はぁっ!?」
「こちらは五隻・・・確実に一隻はやられる・・・三島!?」
「はい!?」
「4番艦に照明信号!」
「はあ?無線では駄目ですか?」
三島は不思議そうな顔でロクを見つめ返す。
「そうだ!こう打て・・・」
「敵はまだ海上です。進路そのまま。」
「爆雷攻撃で沈めれると思ってるのか?舐められたな・・・ならこのまま直進。お望みの物を横腹に食らわせてやれ!」
「敵、速度を上げました!射程距離まであと8分!」と国友
「各艦エアーブースター最大!」とロク。
「速度は向こうが上です!逃げ切れません!反転して、潜りましょう!」桜井が慌てた。
「誰が逃げると言った!?奴等の中央を突く!」ロクの低い声が狭いブリッチに響いた。
「中央突破・・・!?こちらの数が多すぎます!しかも5隻とはいえ、爆雷だけで倒せる浅さではありません!少なく見積もっても2隻は殺られます!」と桜井。
「誰が爆雷で倒すって?桜井!?」不敵な笑みさえ浮かべるロク。
「はぁ!?」
「国友?敵の位置は?」
「変わりません!同じ方角です。距離はやや詰めたくらいです。」
「桜井!全艦、面舵いっぱいだ!」
「り、了解!各艦面舵いっぱい!」と桜井。
「敵反転します!我が艦隊の正面に出ます!」
「痺れを切らしたか・・・だが遅すぎたな?各艦魚雷用意!!」
「ま、待ってください・・・て、敵一隻が不明です!?」
「何っ!?潜水したんじゃないか?」
「スクリュー音感知出来ません!エアーの音だけです!」
「レーダーに反応なし!」
「バ、バカな・・・どこに行ったというのだ?・・・潜望で確認する!海面まで近づけろ!」
「敵進路方向に入ります!間もなく射程距離!」と国友。
「妙です!敵潜水艦、速度を落とし浮上して来てます!」
「よし!各艦砲撃用意!」その時、ロクが動いた。
桜井はロクの作戦にようやく気づいた。
『ま、まさか、奴等を浮上させる為に・・・』
前回の話を投稿した際に、完結の話に切り替わってました。慎んでお詫びします。