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四天王  作者: 原善
第一章 プロジェクトソルジャー
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その12 四天王の首

 そこに座っていた女は、20代前半で透けたマントに露出が多い服や、数多くの装飾品を纏っている。まるで二人を誘惑するように、女はイスの肘掛に右手を置き、体を斜めにし自分の指をコメカミに当て、露出した足を組み、その大きな瞳で二人を見つめた。たまに揺れるローソクの炎が彼女を妖艶に魅せていた。

 更に土井の後ろには、一人の目つきの悪い軍服を着た男が参謀のように控え、二人を睨んでいた。


「リキの姿がないな!?奴はどうしたのだ!?」

 突然、女総帥が大声を上げる。二人はその大声に驚く。

「き、昨日のP6との戦闘で死亡しました・・・」丸田が重い口を開く。


「ふっ・・・柔な奴よの・・・」寛子は笑ってみせる。


「なにっ・・・?」

 ヒデは聞こえるか聞こえないくらいの声を、思わず漏らしてしまった。ヒデを横目で静止する丸田。だが幸いにも総帥の耳にはヒデの声は聞こえなかったようだ。

「私の前では、四天王の首を取るなどとノウノウとぬかしておったのにな。・・・それで?その方ら、四天王の首はどうしたのだ?それが入隊の条件だったはずだが・・・?」

「はい・・・それが・・・」


 何も言えない丸田に代わってヒデが口を開く。

「正直に申しますと、失敗に終わりました!」

「ほう・・・四天王の首一つ取れずにここに舞い戻って来たと言うのか?」

「申し訳ございません・・・」

「ならば、入隊の話はなしだ。とっとと立ち去るがよい!」寛子が席を立とうとする。

「出来ません!もうポリスには戻れません。女、子供もいます。なんとか、ここの軍に置いてはくれませんか?」

「正直に話し、装甲車を返しに来たのは褒めてやろう。最近では仲間の遺体の首を切り取り、これが四天王の首ですとわざわざここに来る族が多い中、お前らの行動は関心するが・・・」

 

そのセリフを聞いた丸田は、少し蒼くなった。

「しかし、仲間の仇すら取れないお前らに、ここの居場所はない。即刻立ち去るのだ!」

「もう一度、チャンスを頂けないでしょうか?」ヒデが食い下がる。

 

 すると、後ろに控えていた男が、土井の前に立ちふさがり、二人に叫んだ。

「貴様ら!帰れと言っているのがわからんのか?」

「どうしてもというなら、せめてリキの仇でも取って来たらどうだ?話はそれ以降だ。」


 二人を置き去りにし、土井らが席を立ちその部屋から出ようとした時だった。土井らが入って来た同じ通路から、3人の軍服姿の男性が入って来た。中央に迷彩帽を被った小柄な不精髭の男。その右には、何か荷物を持った背の高い痩せ型の男、左には、同じく荷物を持った体格がいい男の3人だった。すると、中央の帽子の男が土井に向かって話しかけた。


「よっ!」

 驚いた総帥が声を上げる。

「タケシ!?いつ戻った?前線は?」

「今さっきだ。前線は死神に任せてある!」

「あいつにまともな指揮が勤まるはずがないだろ?」


 そうこう二人が揉めていたのを見ていたヒデと丸田であったが、丸田は何かに気づいて横にいたヒデに小声で囁いた。

「こいつ・・・あのストラトスのタケシだ・・・」

「ストラトス?ストラトスのタケシか・・・!?」驚くヒデ。



「・・・補給を頼んでも、銃弾一つ届かない!俺たちは銃弾がなければただのSC隊だ。面倒だから取りに来ただけだ!」タケシはめんどくさそうに寛子に説明をする。

「勝手に前線を離れおって・・・」

「新しい船も出来上がるそうじゃねぇか?それと新しい武器ってのも気になる・・・」


「そんな事で、わざわざここまで戻るお前か?・・・そうか?本当は、大場の事だろ?」

 図星なのかタケシの顔が一瞬引きつった。

「・・・で?どうなんだ?大場は!?」

「追手は出した。まだ見つかってはいない、足の遅いトラックで逃げてる。捕まるのは時間の問題だ。」

「どう命令したのかは知らんが、大場だけはどうにもならんのか?」

「脱走兵は銃殺!その掟は変わらない。」


 すると、後ろの参謀が再び口を挟む。

「大場は我々を裏切ったんですよ、タケシさま!」

「残念だが、時機に大場の首はここに届く。」

「その家族も・・・だったよな?」

「お前としては珍しくしおらしいな?もう、忘れたらどうだ?」

「忘れたさ・・・綺麗さっぱりにな・・・」

「どうだか・・・?」疑いの目でタケシを見る寛子。

「そうそう姉貴に土産だ!姉貴の新しいコレクションに加えてくれ。おい!」 


 そういうと、タケシは後ろにいた二人に声を掛けた。すると二人は、背中に担いだ荷物を土井と犬飼の前に投げ捨てた。


「な、なんだ・・・?こいつら・・・!?」驚くヒデと丸田。


 それは足や手を後ろに縛られた2体の遺体だった。断末魔の顔。開いたままの目。首には紐のようなものに繋がれ、特に首の部分の皮は剥がれており出血の痕がある。また着ていたと思われる服はボロボロで、体中には無数の傷痕があった。


「第五ポリスの二人の四天王だ・・・」


「こ、これが・・・」

「し、四天王だと・・・?」

 ヒデたちは言葉を失った。

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