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四天王  作者: 原善
第六章 真・四天王降臨
119/209

その1 三現主義

 P6地下独房施設。

「仲間を裏切ったのはヒデ、あなたでしょ!?」と聖。

「なっ・・・」ヒデは聖が泣いているのに驚いた。


 聖は泣きながら、更にヒデに訴え続ける。。

「こうなったのも自業自得よ・・・」

「てめぇこそ仲間を・・・」ヒデは牢屋から凄んでみせる。

「わ、私の事なら心配ないわ・・・だって新しい彼も見つけたし・・・」

 聖は作り笑いをしながら、チラッとダブルの顔を見つめた。


「お、俺・・・?」驚くダブル。

「ふん、へぇーこんなチビが好みだったとはね・・・?」皮肉を言うヒデ。

「チビは余計だよ!」とダブル。


「生きるため・・・あんたも同じ事を言ってたわね?私もそうよ!」

「自分だけ生きればいいのか!?」

「だけど、少しでもあんたに気を許した自分がバカだったわ・・・」

「聖・・・」

「これでチームリキも解散ね・・・じゃあね!」

 聖は一人、独房から歩き始めた。


「ひじりっ!」

 ヒデは独房の中から、精一杯の声で聖を呼び止める。背中を向けたまま止まる聖。


「好きだったんだぜ・・・聖の事が・・・」


「・・・」ヒデの言葉に黙る聖。

 聖は突然、独房のドアまで走り出すと、格子窓の隙間に顔を寄せヒデにキスをする。


「おいおい・・・どっちなんだよ!?」

 二人の不意な行動に唖然となったダブルは、慌てて二人を引き離そうとする。


「野暮ね!最後くらいキスさせなさいよ!」

 聖はキスを一度中断すると、ダブルに向かってこう言った。

「ああ・・・」

 聖の迫力に、ただ圧倒されるダブル。するとキス中のヒデの目が一瞬見開いた。次の瞬間、聖はヒデから離れた。


「もういいわ・・・もう後悔しない・・・じゃあねヒデ!」

 そういい終えると、聖は一人独房を後にした。ダブルがそれを追いかける。


 ヒデは二人が消えるのを確認すると、すぐ独房の奥に引っ込み、口元に手をあてる。するとヒデは自分の口の中から針金が折れ曲がった束を取り出す。

「なんだ、あの女・・・今時、針金で鍵が開くわけねぇだろ・・・」

 すると、独房の隅へと針金を投げ捨てた。



 夜が明け、東の空から太陽が昇り始める。ロクは塀の上にいた。


「ふわぁー!よく寝た・・・さぁーて・・・行きますか?」

 ロクはそう言うと、塀の階段を急いで降りて行く。



 P6指令室。早朝なのか人もまばらだ。

「司令っ!これを!」

 柳沢はスクリーンの一部の異変に気づく。

「どうした?」

 司令をはじめ数名が立ち上がった。

「南ブロック高台の映像です。今、正面に投影します!」


 すると荒野の映像が中央スクリーンに映り始める。かなり遠くの映像で、画面中央付近に砂嵐のようなものが映し出されていた。

「砂嵐か・・・??」

「気象レーダーには何も・・・先日の敵シップよりも巨大な事は確かです。」

「距離は分かるか?」と弘士。

「まだレーダー範囲外!」

「進路は?」

「このままですと、ポリス道を北です。こちらは進路を外れてますね。このルートですと・・・敵古川基地方面と思われます。」


「我妻。黒豹を出せ!」

「了解!」

「今日から、黒豹は陽隊長だったな・・・?ん!?」

「はぁ・・・しかし・・・いえ、そうではなくて・・・いやいや・・・ですから・・・」

 弘士は我妻の無線を聞いて何か揉めてるのを感じた。


「どうした?我妻!?」と弘士。

「はあ・・・ロクさんがついでなんで、この件で偵察に出ると言ってますが・・・?」

「ロクが?・・・何のついでだよ?これからP7だろ!?まあ奴の事だ。既にゲート前に居るんだろ?暫くは海の上だ。出ろと伝えろ!」

「了解・・・こちら指令室・・・北ゲート開けます!」

「奴の事だ!偵察だけで済むかな・・・?」笑いながら鼻を掻く弘士。



「さぁーて・・・行きますか?」

 ロクのジャガーは北ゲートから飛び出していく。そのジャガーの遥か先には、巨大な砂煙が高々と空に向かって伸びているのが見える。

「それにしてもでかいな・・・」するとフロントガラスに陽の姿が映し出される。


『ちょっと!ずるいです!今日から偵察隊は私が・・・』

「ごめんね~!別に仕事を追われたからじゃないのよん~!」

『もう!昔から、都合が悪くなると可愛く喋るんだから・・・私も行きますからね!』

「こいつに追いつけるかい?」ロクはハンドルを軽く叩く。

『私をナメないで下さい・・・』

「お、怒んなよ・・・でもお前の車の塗装・・・ちょっと迷惑・・・」

 2台の斑のSCは、P6を後にした。



 ジプシャン軍サンドシップ、スコーピオ。早朝の荒野を北へと移動している。空母側の甲板にはたくさんのソーラーパネルが敷かれているが、その一部にテニスコートが作られている。そのコート内にはツヨシと若い兵が、ラリーを続けている。息を切らしたツヨシが相手側に強くボールを打ち込むが、ボールは走行中のシップの外に飛び出してしまう。


「悪い、悪い・・・」

 すると、艦橋がある側から両角が慌てて走ってくる。


「ツヨシ様、P6区域です。一度艦橋にお戻り下さい。敵偵察車も出てるそうです!」

「バカな・・・あのボケP6が襲ってくるはずがないだろ?」


 すると、突然音を立て甲板付近を銃弾が走った。身を伏せる二人。すると艦橋上の見張りの兵が二人に叫ぶ。

「敵襲!敵襲だぁー!」


「チィッ!!」

 ツヨシは舌打ちをしながら艦橋へ向かった。


 空母側の艦橋内は慌てていた。ツヨシは何もなかったように指令席へ腰掛ける。

「数は!?」とツヨシが叫ぶ。

「SCが2台!偵察タイプ・・・2台とも斑模様!雷獣です!」兵が叫ぶ。

「雷獣だと?」両角の顔色が変わった。

「なんだ雷獣って?」

「2台とは言いましたが、実際近寄っているのは1台のみ!高速タイプです!」

「機銃!?何してんだ!?撃ち落とせよ!」

「はっ!何分、あ、足が速く・・・」

「右舷機銃何してる?相手はたった1台だろ?」

『敵の足、思った程早く・・・うわっ・・・』爆音と共に切れるスピーカー音。

『右の機銃兵負傷者多数!交代要員をまわして下さい!』

『54機銃被弾!消火急げ!!』


「何してんだ・・・ボンクラどもが・・・?たった1台のSCに何振り回されてるんだ?で・・・雷獣とは何だ、両角?」呆れるツヨシ。

「はあ・・・北の兵たちを脅かしているSCだそうで、一説によると覚醒したミュウの子とも、神の子とも言われており・・・」

「ポリス事だ。ミュウを手懐け、人間兵器にしてこちらに送ってくる事も十分に考えられるな・・・?」

「あのミュウ狩りをしていたポリスがですか?お言葉ですがそのような事をポリスが・・・」

「なんなら俺がこの目で確かめてやる・・・船を止めろ!」

「ツヨシ様?何をなさるのですか?」と両角。


「俺は昔から“三現主義”でな・・・」

「はぁ・・・?」


「現場で、現物を、現実に捕らえる・・・見てくるぞ!神の子と呼ばれる雷獣とやらを・・・」ツヨシは不敵に笑う。

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