その27 なつみの夢
夕方、ロクは南ゲートの塀の上にいた。ロクのいつもの定位置である。
「いつもここにいるんですって?」
ロクはその声に振り向くと、塀の階段を上がって来たのは大場の娘の直美だった。
「外に出れるようになったのか?」とロク。
「おかげ様で・・・」
「そうか・・・」
「あなたもでしょ?暫く重傷だったって・・・?」
「ああ、ここに来るの久々なんだよ・・・」
「お母さんの件・・・」
「ん?」
「ありがとうね!罪人なんでしょ?ポリスにとっては?それにしてもいい墓だった・・・あんたがやったって言ってたわ。」
「気にすんな・・・」ロクは正面を向き続ける。
「うん・・・」
「タケシの事・・・?」言葉の途中で切れるロクの言葉。
「聞きたいって顔してるね・・・?」先に開口を開く直美。
「そういう交渉・・・お前、あの親父にそっくりだな・・・?」ロクはその直美の口調に苦笑いした。
「なんせ、あの人の子供だもん!!」
ロクは直美の強がりに気づいた。
「ふふ、容姿はおかあさん似だよな?」
「あれ・・・お母さんとなんかあった?」
「バ、バカ言うな!」急に照れるロク。
「そうだよね・・・ロクは・・・」
「・・・」
ロクは急に寂しそうな顔を見せた。
「ご、ごめん!そんなつもりじゃ・・・聞いたよ・・・なつみちゃんの事・・・」
ロクは寂しい顔をしたまま、直美を見る事はなかった。
「なら、なにも聞くな・・・」
「うん・・・ごめん・・・」
「聞かせろよ。タケシと父親の事?」
「私は・・・タケシの許婚だった・・・嫌だったの、親同士の政略結婚なんて・・・まあ、タケシもだけどね・・・それで父親が私をジプシャンから逃がしてくれた・・・」
「うん・・・それで納得した。まあちょっと普通なら無謀だよな?でもあの人ならありか?」
「戦争しか頭にない男なんて嫌いだし・・・あいつから逃げるなら、死んでもいいと思ってた・・・」
「それで、幼い弟と妹も巻き込んだのか?」
「しょうがないじゃん!置いていく訳もいかないでしょ?逃亡は家族も銃殺・・・それがジプシャンの掟・・・」
「確かに・・・ん?何か俺に用でもあったのか?」ロクは急に何かを思い出した。
「あんたが明日からここを離れるって聞いて・・・お礼が言いたくて・・・それとなつみちゃんの事と・・・」
「そうか・・・なあ?大陸ってまだ草木があるって噂だぜ。」
「えっ?・・・どうしたの急に?」
「見て見てぇんだよな・・・」
「えっ?」
「草原ってやつを・・・」
「草原?」
「あいつのガキから夢だったんだ。この地球に植物を復活させるって言ってたっけ・・・」
「なつみちゃんが・・・?」
「俺がなつみの夢を引き継ぐ・・・」
ロクは左脇からワイルドマーガレットの拳銃を取り出すと、握り手のマーガレットの花の絵を見ている。
「その花は?」
「マーガレット・・・凛と咲き、大地に根強い花らしい・・・そして大地を覆い尽くすように咲き誇る花・・・今、気づいたが、あいつみたいな花だな・・・」
「ふーん・・・草原か・・・そんな事、一度も考えた事ないな・・・私たち生まれた時から砂の上だもん・・・」
「違いない・・・」
二人は塀の上から海を眺めていた。
「何か用かっ!?」
ヒデの独房。ヒデは聖を見ると怒鳴りちらした。聖は歓喜から一転し、黙ってしまい下を向いてしまった。
「おいおい、死刑囚のお前に最後に会いたいとわざわざ面会に昔の仲間が来たんだぜ?それはないだろ?」とダブル。
すると、ヒデはダブルを睨んだ。
「こいつは仲間を裏切ったんだ。自分の兄貴を殺したポリスに取り入るなんて・・・」
「裏切り者はお前だろ!?仲間に弓引くような事しやがって!」
「ポリスの犬が黙ってろ!」
「何だとっ!」いがみ合う二人。
「やめて!」
二人が言い合いになったのを聞いて、聖が叫んだ。
「ちゃんとヒデにお別れが言いたくて・・・」
「・・・」
ポリスのある地下施設。見たこともない特殊な機器類。たくさんの瓶の容器には動かない赤ん坊が薬品のような液体に浸けられ部屋を囲んでいる。その部屋には、白い感染防護服を着たスタッフが2、3名程、機器を覗いている。部屋の中央には大きな円柱の水槽が何本かあり、良く見るとその中の一つに全裸姿の少女が、数本の管に繋がれ水槽の中央部分に浮いた状態になっている。その前には、高田女医がいて、その水槽の中の様子を細かく観察していた。するとマスクをしたスタッフの一人が高田に近づく。
「順調です・・・怖いくらいです・・・こんな状態は奴以来です!」
「ふん・・・やはり生きていたのか?このまま観察を続けなさい!」
「はっ!」
スタッフは、再び機器をチェックし始めた。すると高田は水槽の中の女性に語り始める。
「あなたが、悪いのよ・・・なつみ・・・」
高田が見ていた、その水槽に入っていたのは全裸姿の桑田だった。
四天王 第五章【カラー・フィールド】完
四天王 第六章 予告
【遂にロクVSヒデ・・・決着!!】
ヒデの銃弾が、ロクを貫く。
聖「最後くらいキスさせなさいよ?」
ダブル「ああ・・・」
独房の格子窓越しにキスするヒデと聖。目を見開くヒデ
【ジプシャン軍大型サンドシップ・スコーピオVSレヴィア艦隊】
キーン「P6始まっての艦隊戦だ!気合入れろ!」
【激戦の中、若き英雄たちが散っていく・・・】
死龍「友人として・・・いや同じ戦士なら・・・死に場所くらい・・・与えてよ・・・ロク・・・?」
ロク『早まるな!死龍!』
虹の三角で敵戦艦に体当たりする。
大破したブリッチ内でロクに抱きかかえられるキーン。
キーン「お前と戦えた事を・・・誇りに思う・・・」
ロク「キーンっ!!」
【混沌とするP6・・・遂にミュウの正体が明らかになる・・・】
高田「桑田は・・・生きているの・・・」
ロク「なら、あの墓はなんだ!?」
ヒデと聖はある水槽の前で立ちすくんでいた・・・
聖「な、なんなの?中にいるの・・・ロクの妹よ!」
ヒデ「こ、これは・・・?あのなつみなのか・・・?」
巨大な水槽に全裸のまま入れられ、何本のチューブに繋がれている桑田。
【ロクVSツヨシ】
SC同士をぶつけ合い激しくぶつかり合うロクとツヨシ。
弘士「四天王システム作動!」
【30年の眠りから目覚めた本当のポリスの姿とは・・・?】
大地が轟く中、ロクは驚き頭上を見上げる。ロクに覆いかぶさる巨大な人影・・・
ロク「こ、これが・・・真・四天王か・・・!?」
次回 四天王 第六章 【真・四天王降臨】