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四天王  作者: 原善
第五章 カラー・フィールド
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その25 ロクの異変

「ん?な、なんだよ・・・警報?各車スピード落とせ!」


 ロクの号令で黒豹隊の各車はスピードを落とし、警戒態勢を取った。すると今度はジャガーのフロントガラスには“ロックオン”の文字がいくつか点滅する。

「勝手に目標を捕らえるなよ。気に入らねぇな!機械の分際で生意気なんだよ・・・とは言え・・・はいはい、撃てばいいのね?撃てば・・・」


 ロクはガトリングバルカンのレバーを押し当て、グリップを握ると前方の暗闇の荒野にバルカンを発射した。暗い荒野に数十本のオレンジの線が伸び、瞬時に消えていく。

 次の瞬間、暗い荒野に昼間の太陽ような鮮光が大地を覆う。

「おっ!?」

『うおっ!』驚く山口。


 光は炎となり、巨大な火柱になりロク隊の前を立ち塞がった。ロク隊は徐行をして速度を落としていたが、その火柱を回避することが出来ず、その炎の壁の中を突破する。黒豹隊の全車は、炎の中から出てきた。

 その炎の勢いは、窓を開けていた山口の衣服までにも引火し、山口は運転しながら慌てて衣服の火を消す。


「ひっ!ヒッ!火ぃー!」驚く山口。

『きっと、火って言葉はこんな時に生まれたんだわ・・・』冷静な陽。

『ぜってぇーちげぇー!』呆れるアキラ。


 ロクはその中、ガトリングバルカンの追尾装置を一人感心していた。

「お前・・・凄くいい子・・・」



 ロク班は、ジプシャンの最東の基地、女川基地まで足を伸ばしていた。既に夜が開け、ロクを中心に小高い丘で女川基地を観察している。数人は軽食を取りながらくつろぐ者までいる。

「バッテリーはどうだ?」

「夜が明けたんで心配はありませんが・・・」と不満な様子の陽。

「で?どうするんですか?向こうも俺らがここに居るのを感づいてますよ?」山口は双眼鏡で敵基地を見下ろしてる。

「中央突破かな・・・?」腕を組んだロクが意気揚々と語る。

「出た出た・・・」いつもの山口。

「武装もしてないんですよ!?どうしたいんですか?ポリスから離れ、作戦にはなんの意味のない弱小の敵基地ですよ?」と陽は不満気味。


 ロクのいい加減な発言に、陽は切れてみせた。陽は、この言葉がロクのハッタリと思い込んでいた。

「なら、お前ら全員ここで待機だ!」

「へっ?た、待機って・・・」と山口。

「相変わらずの単独行動・・・ちっとも変わってねぇーや!」呆れる陽。

「いいから、全員手出すなよ!」

 そう言うとロクはジャガーに乗り込み、一人丘を駆け下りて行く。



 ジプシャンの女川基地もロクの行動にいち早く気づき、SCを迎撃で出してきた。

「15台・・・こんな小さな基地にしては多い方だな・・・なら遠慮なく・・・」


 ロクのジャガーは左右に展開するジプシャンのSC隊の中央をあえて選び接近する。すると四方から銃弾を食らうジャガー。

「さて・・・行きますよ・・・」

 ロクはガトリングバルカンを迫り出すと、銃弾を発射しようとした。しかし、銃弾は出るもののなぜか砲座が回転しない。

「スミさん・・・回らんよ!?整備不足・・・いや!敵も進化したという事か?ならこっちも・・・」


 ロクはバルカンの不備を諦めると、ギアを一つ上げアクセルを踏み込み、ハンドルを思いっきり右に切った。車にスピンがかかり、そのままバルカンを発射させる。すると瞬時にジプシャンのSC隊は半分が大破する。



 丘からその様子を見ている、山口と陽たち。

「あ、あれ・・・?ストラトスのタケシの技っす・・・」驚く山口。

「へー!あいつやる~!」陽も声をあげ感心する。



 ロクは残りのジプシャン軍のSC隊を追い詰めていた。するとジャガーのフロントバンパーから2本の鋭利な長い金属棒が出てくる。ロクは1台のSCに狙いを定めると、その横腹にその突起ごと体当たりを掛け串刺し状態にする。体当たりを掛けられた敵兵のドライバーも、運転席から拳銃で必死の抵抗を見せるが、ジャガーの装甲とパワーになす術もなく横に引きずられていく。スピードを増すジャガー。するとその車は、女川基地のあるゲートまで押し戻されると、ジャガーに急ブレーキを掛けられ、そのゲートに吹き飛ばされてしまう。


「横に引きずったままSCを・・・?こ、これがジャガーカストリーのパワーなの・・・?」驚く陽。


 女川基地のゲートはジャガーの押し込んだSCの重さで、左右に吹き飛んでしまった。



「柔な作りのゲートだな?車一台の重みだけで!?」

 ロクのジャガーは躊躇なく敵基地に侵入する。中は簡単な作りの2階建て小屋がいくつかと、電波塔を兼ねた見張り台が2塔程で、以前攻撃した浜田基地よりも劣っていた。ジャガーの突然の侵入に驚いたのはジプシャンの方だった。


「敵だぁー!!敵が侵入したぁぁー!」

 見張り台の兵士が叫ぶと、建物からは20名程の兵士たちが血相を変えて出てきた。



 ロクは、ポンチョにハットを被りジャガーから出てくる。

「さぁーて・・・行きますか・・・」

 ロクは機銃を構えていた、見張り台の敵兵を撃ち抜くと、兵は見張り台から落ちてしまった。



 ロクはなつみとの拳銃訓練を思い出していた。

「肌で感じろ・・・」と拳銃を回すロク。

「はあ・・・」困惑するなつみ。

「目で見るから遅いんだよ・・・わかるか?」

「さ、さっぱり・・・」ロクの言葉に戸惑うなつみ。



「うふふ・・・」

 ロクはゆっくりと目を瞑り、片足を引き摺りながら敵基地内をゆっくりと歩き出した。基地内は乾いた風が吹き込んでいる。



 それを丘の上から見ていた陽たちは驚いた。

「あらら・・・敵基地内を歩き始めましたよ・・・」と山口。

「もう!どうしたいんだか・・・?」頭を掻く陽。



 風が強くて砂埃で目を開けれないのか、それともわざと瞑っているのか分からない。しかしロクは建物から出てくる敵兵を次々と撃ち抜いていく。



「あ、あれ?・・・確実に人を撃ってますよね?元隊長・・・?」陽に問う山口。

「う、うん・・・」

 山口と陽は初めて見るロクの銃裁きを見て驚いていた。



 ロクは時折拳銃を変え、左右の建物から出てくる兵を同時に撃ち殺していた。ロクは一度も目を開ける事もなく淡々とその作業を続けていた。敵兵は次々と撃たれ後ろに倒れていく。



室内の射撃場で訓練をするロクとなつみ。

「頭で考えるから、人より遅くなる・・・自然の風も、影も、匂いも・・・全部味方にするんだ・・・」

「あー・・・自分馬鹿だからそれ以上分かんないですよ・・・」ロクの言葉が理解出来ないのか、口を開け天井を見つめるなつみ。

「うん・・・ちょっとお前には早いかな・・・・?」

「うんって!もう!」怒るなつみ。

「うははは!」



 ロクは歩くのを止めていた。拳銃は左右に構えたまま動く事はなかった。すると強風のせいか、右の建物の2階部分のドアが音を立てて開く。ロクは右手の拳銃をそのドアに向けるが、撃つ事はなかった。やがて人の気配を感じなくなると、ロクは左右の拳銃を腰のホルダーにゆっくりと入れる。

 するとようやく目を見開いたロクは、基地内を見渡す事なくジャガーに戻り始めた。



 その様子を山口や陽たちは丘の上から見ていた。

「銃声・・・聞こえなくなった・・・」

「見て!?ジャガーが戻ってくる・・・」陽は丘に戻るジャガーを指差す。


 山口は自分の車に戻ると、ジャガーに無線を飛ばした。

「聞こえます?隊長?」

『なんだ?』

「あの・・・今・・・敵兵撃てませんでしたか?」

『敵兵?・・・そうかぁ?撃ってたか?なんせ見てなかったからな・・・』淡々したロクの声。

「は、はぁ・・・?」


 そこに陽が近づき山口の無線に割り込んだ。

「見てなかったって・・・あれが盲撃ちですか?」

『ああ・・・さて・・・次の基地行ってみよう!?』

「えっ!?・・・つ、次と申しますと・・・?」慌てる陽。


「ふふふ、次の敵基地に決まってんだろ!?」笑顔で無線を飛ばすロク。

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