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四天王  作者: 原善
第五章 カラー・フィールド
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その18 四天王誕生

「お前がいて、なんでキキを守れなかったんだぁー!?」


 ロクは魘されながら悪い夢から覚めた。


 現在のP6。ロクの独房。ロクはベットから飛び起きていた。そばにあったコップの水を一口飲むと、額の汗を制服で拭き去る。するとロクの独房のドアを叩く音が聞こえる。

「はっ、はい・・・?」


『魘されていたようだが・・・?』


 声の持ち主はキーンだった。ロクは片足を引きずりながら急いでドアに近寄った。ドアの小窓から見えたのは、車椅子に乗ったキーンと、松井の姿があった。

「ロクさんに会うってきかなくて・・・」と松井が笑う。

「どうせ退屈してると思ってな?」

「足、大丈夫なのか?」とロク。

「ああ・・・おい、二人だけで話がしたい。」

「はあ・・・」


 キーンは後ろの松井に話しかける。松井がその場を離れていくのを確認すると、ドアの側までキーンは近づいた。

「なんなら、ここ開けてやろうか?」小声のキーン。

「ふふふ、馬鹿言うな。出ようと思えばこんな扉、いつでも出れるぞ・・・」小声で返すロク。

「相変わらず、頑固だな?」

「それで・・・艦隊司令だって?」

「おお?どうしてそれを・・・?ああ高田さんか?」

「さあな?」

「気をつけろ。今度は高田女医がスパイって噂だぞ・・・」

「かもな?」

「わはははっ。知ってたか?」

「ああ・・・」


 二人は心から笑っていた。しかしロクはキーンの足を見ることが出来ない。

「まあ、その報告もあってここに来た。」

「指令室でもいいじゃないか?嫌なのか?」

「根っからのソルジャーだぜ。死ぬなら荒野だな・・・」

「そうだな・・・」

「まだ痛むのか?」

「少しな・・・なぜか足に来ちまって・・・歩くのはしんどいな。」

「バズーの話だと、お前は無罪で済むらしいぞ。」

「ほぉー!それはありがたい。銃殺じゃないかと夜も寝れなかったが・・・」

「嘘付け!どうせ親父さんが救ってくれると思っていたろ?」

「ああ、少なくとも今度こそP7へ島流しだろうがね。」

「そりゃいい!船酔いも克服するな。ああ新しいオペが入ってきた。ダブルは既に指令室に入り浸りだ。美人らしいぞ。無事に黒豹復活ならお前の担当だ!」

「果たしてすんなり偵察隊に帰れるか・・・?それで黒豹に戻ってもダブルに怒られそうだな?」

「違いない。“ロクの野郎またおいしい所を・・・”ってか?」

「ハハハ・・・さっきな、キキの夢を見ていた。」

「そうか・・・」

「あの時さ・・・もしキキが・・・」


 ロクの言葉に察したキーンがすぐ割って入る。

「キキの死で、みんな強くなった!」

「えっ!?」

「ダブルには悪いが、あの時キキが教えてくれたんだよ。そして今の四天王が居る・・・」

「キキが・・・?」

「悪い時間だ・・・戻るぞ・・・まだリハビリ中でな。また来るよ。」自分で車椅子を動かしていくダブル。

「ああ・・・」



 3年前のP4の地上。辺りは夜になっていた。月光もなく、真っ暗な瓦礫の街をロクとキーンとバズーの3人が立っている。風が強く3人のポンチョが風になびいていた。3人の目線の先には、いくつかのコンクリートの破片で作られた墓標があった。その一つにカタカナで“キキ”と書かれている。


「奴は?」バズーはいないダブルを捜した。

「まだ泣いてるんだろ?ほっとけよ・・・」とキーン。

「とうとう、4人だけになったな?ここで何人死んだんだ?」とロク。


 ロクもまだ悲しんでいる様子で、キキの墓をまともに見ることが出来ない。そこに遅れてダブルがやってきた。

「おせぇぞ・・・」

「るせぇよ!」ロクと目を合わさないダブル。

「さあ始めるか・・・?」それを察したキーン。

「ああ・・・」


 4人は墓の前に跪き、各々黙祷を始める。するとロクが一人声を出し始めた。

「もっと・・・強くなる・・・」


 その声に、黙祷途中でダブルは目を開け、隣のロクを見つめる。すると今度はキーンが呟いた。

「俺たちは、もっともっと強くなるからな・・・」

 ダブルは次はキーンの方を向く。するとダブルがまた騒ぎ始めた。

「なんだよ・・・?お前ら・・・まるで今の俺たちが弱いみたいじゃねぇか!?」


 すると黙祷を終わったバズーが立ち上がり、ダブルに近づく。

「おい!」

「あんだよ?」

 バズーはダブルの腹部を右拳で殴った。両足が浮くほどのバズーのパンチは、夜の瓦礫街にダブルを這いつかせた。

「ごほっ・・・ごほっ!何しやがる、この野郎!」

「弱いんだよ。特にお前が!」バズーがダブルの前に仁王立ちする。

「な、なんなんだよ!?どいつもこいつも!」

「キキは妊娠していた・・・お前だろ?」とキーン。

「に、妊娠って・・・本当かロク?」

「ああ・・・」

「遊びにここに来てるんじゃねぞぉ!この野郎っ!」とバズー。


「キキ・・・」

「キキはP6に帰ったら引退するつもりだった・・・」とロク。

「引退って・・・ソルジャーをか?」

「ああ・・・」


 するとダブルは、這い蹲りながら大声を出し泣き出した。

「キキ・・・なんでだ!?キキ・・・なんで・・・?」

「拳銃を預かった・・・一つはお前の分だ・・・」

 ダブルは泣きながらロクから拳銃を受け取ると、拳銃を抱き締め屈み込み再び泣き始めた。

「プロジェクトソルジャーが人前でな・・・」


 バズーが再びダブルを叱ろうとした時、ロクは無言でバズーを止めた。

「泣かせてやれよ・・・」

 するとダブルは、泣きながら3人を見上げた。

「お前らは・・・お前らは悲しくないのか・・・?仲間が死んで悲しくないのか?」

「仲間が死んで、悲しくない奴がどこにいるんだ!?」

 バズーが、初めて自分の気持ちをダブルにぶつけた。4人とも黙ってしまう。


「絶対、強くなってやる!」とロク。

「強くなれば誰も馬鹿にしない・・・」とキーン。

 突然、ロクとキーンが思い出したように口ずさんだ。

「ダブル・・・もっともっと強くなろう・・・死んでいった奴らの為にも・・・」とダブル。



 すると、ダブルは立ち上がりキキの墓に正対した。ダブルはいつの間にか泣き止んでいた。

「ああ・・・強くなってやるよ・・・キキの為にもな・・・」


 4人はいつまでもキキの墓を見つめていた。

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