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四天王  作者: 原善
第五章 カラー・フィールド
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その17 ダブル狂乱

 P4の地下通路を走るロクとキキ。ロクが後ろのキキに振り返る。

「走るなよ!歩いて来い!」

「平気よ。さっきまで走っていたじゃない。」

「チッ!」

ロクはキキの体を気遣った。



 P4の地上部分。瓦礫の廃墟ビルを挟み、ポリスとジプシャンが銃撃戦となっている。数は約二十対二十。ポリス側にはバズーをはじめ、キーンの顔も見える。その後方にロクがやってきては合流する。

「戦況は・・・?」


 ロクは、拳銃を撃つバズーの背中に語った。

「最悪だな。敵にここの入口を悟られるなんて・・・この入口ももう爆破しないと・・・誰か付けられたか?」

「た、たぶん、それ俺・・・」

「ロクにしては、珍しくヘマしたな?」とキーン。

「足跡残さないように、うまくやったつもりだが・・・」

「敵もやるって事だよ。」とバズー。

「ダブルの顔が見えんが?」

「その爆破の火薬を取りに行っている!」


 するとロクの目に、更に後方で待機するキキの姿が映る。ロクは両手で帰れの合図を出したが、首を横に振るキキ。

「くそっ・・・俺は側面にまわる!」ロクが駆け出そうとした。

「勝手に行くな!爆薬がきてここを吹き飛ばしたら、入口は敵の向こうにしかない。地下には帰れなくなるぞ!」

「それまでには帰るよ!」


 ロクは、身を低くしながら隊の右側を走り出した。それを見ていたキキも、ロクを追いかける。

「あいつら・・・」二人を見ていたバズーが呟く。



 ロクの後ろを必死に追いかけるキキ。ロクは敵の側面にまわると、瓦礫の山に身を潜めた。すぐ側にキキも到着する。先程の双方の銃撃の音も遠くなっていた。

「戻れって言ったろ!?ダブルの方にまわれ。」

「一人で何するのよ?」

「敵をこっちに引き付ける。だから戻れ!」

「一人じゃ無理よ。どうせ撃てないくせに!」

「それでもするさ!威嚇だけだ!キキは戻るんだ!」


 ロクは珍しくキキに凄んだ。

「分かったわよ・・・ただ後方支援はするわよ!」

「離れてろよ!」


 ロクはそう言うと、敵の側面に拳銃を撃ち込み始めた。銃弾は、敵の機銃だけに命中する。その様子を後方から観察するキキ。

「だから・・・援護にもならないわよ・・・ロク班の鉄則・・・班長の変わりに躊躇なく撃つ!」

 そう言うと、キキも拳銃を持ってロクの援護に回る。


「あいつ・・・」ロクはキキの行動に呆れた。



 その頃、ダブルはロクたちが死守する、P4への入口に爆薬を仕掛けていた。

「少し攻撃が弱くなった・・・まだかよ?ダブル?」

 銃撃の中、インカムに話しかけるバズー。

『あと1分くれ。半分は撤退させろ!ロク班が敵の側面を押さえている!』無線のダブル。

「ロクたちが?全く・・・あいついつもいい所を・・・わかった・・・ロク!キキ!下がれ!そろそろここを撤退するぞ!」

『わかった!先に行け!俺はこいつらを引き付ける!最悪別の入口から帰る!』とロク。

「無茶するなよ!」

『ああ・・・』無線を切るロク。

「よし!一人づつ撤退するぞ!急げ!」ダブルが各員に指示を飛ばす。



 ロクは、敵が陣取る建物から見えるように走り出す。 敵の銃弾がロクを狙う。

「こっちだ!」

 ロクは更に敵の後方へと走り抜ける。敵は後方のロクにバズーカーを構えた。

「か、火気かよ!?反則だろ!」

 ロクは飛んできた砲弾を間一髪でかわした。

「危ない、危ない・・・」


 するとロクの近くまでキキが近寄ってくるのが分かった。

「キキ!来るな!」


 その時、敵の二回目の砲弾がキキのすぐ後方で爆発する。身の軽いキキは数メートルも上に吹き飛んだ。

「キキィー!!」

 慌ててキキに近寄るロク。そこには両足を失い、瀕死の重傷を負ったキキがいた。ロクは急ぎビルの影にキキを運んだ。

「しっかりしろ!」

「あ、足・・・が・・・」

「ついてくんなって言ったじゃないか!?」

「ロ、ロクを一人に・・・出来ないでしょ?」

「今、運んでやる!」

「無理よ・・・なんか・・・腹も貫通したし・・・」

「腹・・・?」

「赤ちゃん・・・大丈夫かな・・・?死んじゃったかな・・・?」

「引退して、ダブルと結婚するんだろ?しっかりしろ!」

「ちょっと・・・無理そうね・・・分かるわよ。これでも衛生担当よ・・・」

「こんな事で死ぬな!キキっ!」

「こ、これをダブルとロクに・・・」


 キキは持っていた2丁の拳銃を、ロクに渡した。

「キキ、お前・・・」

「これでまた・・・一緒に戦える・・・」

「こんな時にまだ戦争の話かよ・・・」

「ダブルに・・・伝えてよ・・・私・・・幸せだったって・・・」

「キキ!」

「やっぱプロジェクトソルジャーは、生きて辞めれないわね・・・あ、後は任せるわ・・・ロク・・・」

「キキィー!・・・お前もそのセリフかよ・・・?」

 キキはロクの腕で眠るように息を引き取った。


 

 P4のある廊下。ダブルが我を忘れ、バズーとキーンに食って掛っていた。

「ふざけるな!キキが死ぬ訳ないじゃないか!?今朝も一緒だったんだ!死ぬ訳ねぇだろ!ふざけてんならお前らブッ飛ばすぞ!」

「落ち着け!ダブル!」キーンが暴れるダブルを制止する。


「なあ・・・さっきまでロクと居たじゃないか!?奴はどこだ・・・ロクは?・・・ロクっ!おい!ロク!?」

「ダブルーっ!!」

 バズーの大声に我を忘れていたダブルは自分を取り戻した。

「キキは!・・・死んだんだ・・・」

「ははは・・・嘘だね!・・・みんな冗談キツイぞ・・・なあどこだよ・・・キキは?会わせろよ・・・この中に居るんだろ?通せよ!怪我してるんだろ!?なあっ!?」


 ダブルは狂ったように、バズーの制服を掴みそのままバズーの巨体を廊下の壁まで押し当てた。

すると、その廊下に面した部屋のドアが開き、暗い顔をしたロクが出てきた。バズーの胸ぐらを離したダブルは、今度はロクに詰め寄る。


「ロ、ロク・・・キキは・・・?キキはいるんだろ?・・・なあ?」


 ロクは無言のまま首を横に振った。その様子を見て更にダブルは逆上した。

「お、お前がいて・・・お前がいてなんでキキを守れなかったぁぁぁー!?」


 ロクは下を向いて黙ったままだった。

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