表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四天王  作者: 原善
第五章 カラー・フィールド
106/209

その15 十字砲火

「おい!?ロク?ある意味、囲まれてないか!?」

 バズーの声が焦っていた。

「読まれていたか・・・」

「後方は、我々が押さえます!」

 すると、ボムは3名の若い兵を引き連れ、さっきまでいたビル方面

に走っていく。


「正面!銃声からして差ほど多くない!」とキーン。

「しかし、こう出口が狭いと・・・」とロク。

 爆破で開いた高速の幅は、僅か5メートル程。その狭さの先に、敵がどのくらい居るのかは分からない。

「俺が切り込む!後は任すぞ!ロク!」バズーが立ち上がった。

「おいおい!死にたいのか!?」とロク。

「やばいよ、左右の敵の隊も動いている!このままだと囲まれちまう!」とキキ。

「可能性は前進の方だ。プロジェクトソルジャーが、後退して死んだとあっては、後世の後輩らに笑われちまうぜ・・・」

「バズー・・・」

「ここは、俺とキーンで行く。後は任せたぞロク!」

「そのセリフ・・・無茶すぎるぞ!敵の数も分からんのに・・・」

「その方が、燃えるんだよな・・・行くぞキーン!」

「おおっ!」


 その瞬間だった。後方の敵バイク隊辺りから、連続爆破が起きる。バズーやキーンたちも後方を見つめた。

「て、敵が攻撃を受けている!」キキが後方を確認する。

「P4?・・・まさか・・・?」


 よく見ると敵バイク隊に混じって、赤いヘルメットに赤いライダースーツを着装し、バイクに跨る5名程のライダーを見つける。ロクはすぐに誰か分かった。

「あいつ・・・」

 5台の赤いバイク隊は、ジプシャンのバイク隊の後方を突き、隊列を崩して行く。


「味方か?」とバズー。

「ああ・・・陽だ・・・」

 呆れるロクを尻目に、5台のバイク隊は敵を蹴散らすとロクらの近くまでやって来る。すると一人が“右へ回れ”のサインを送った。

「ロク班め・・・いつもいい所を・・・」とダブル。

「バズー行こう!右だ!」

「ああ!」

瓦礫の街を走り出すロクたち。

 


 現在・・・ロクの独房。ロクは点滴を受けながら、ベットに横たわっていた。そこに独房のロックが外れ、高田女医が入って来る。ドアの所には、機関銃を構えた兵が立っていた。


「どう?体調は?」

「それより、ここは退屈です・・・」

「キーンは、車椅子でここに来るって言っているけど、どうする?」

「会えるんですか?」

「ドア越しならね。」

「また現場に復帰するって言ってません?」

「話によると、レヴィアの第2艦隊を任せられるようよ。」

「レヴィア・・・第2艦隊?どういう事です!?」

「詳しくは本人に聞いて。関根のせいでスパイ疑惑は、医療室に向けられてるの。」

「船乗りかい・・・?」溜め息の混じりのロクの声。


ロクの点滴を代え始め、腹部の包帯を外し始める。

「驚異的な回復ね!さすがプロジェクトソルジャーね!」

「早く銃を撃たせてください・・・」

「ふふふ・・・見張りの兵士によると、夜魘されてるようね?」

「ええ・・・昔、死んで行った仲間の夢ばかり見ます。」

「あんたみたいなベテランでも?新人の兵には多いんだけどな・・・安定剤を出しておくわ。」


「あんな薬を飲むと、目が裏返るって聞いてますよ?」

「うふふ・・・まあマレにね・・・」

「ゲッ?本当なんだ?」

「ちゃんと飲むのよ。」

「へいへい・・・」

 高田が独房を出て行く。ロクは笑顔だったが、また寂しい顔に戻ってしまった。



 再び3年前。P4内の大きな丸い広場。天井は高く、巨大な鉄のドームで出来ている。証明が当たらない、その広場の一角をロクが一人歩き出している。するとそこにキキが走りながら近寄ってきた。


「捜したわ。いつも一人で行動するんだから・・・」

「悪い・・・武器を見ていた。」とロク。

「葬儀・・・いつも途中で居なくなるんだね・・・?」

「すまん・・・昔から苦手で・・・」

「ホーリーもイブも無事に終わったわ・・・まさかイブが生きていたなんてね・・・残念だわ看取れなくて・・・」

「あの長髪切ったの、最後まで恨んでたな・・・」


 すると、さらにそこに陽がやって来た。

「班長?タマさんがお呼びです。」

「今、行く。それと陽?」

「何か?」

「ありがとう・・・」

「い、いえ・・・」


 ロクの突然の言葉に、戸惑う陽。ロクは一人P4の司令室に向かう。取り残された二人。

「誉められたのかな・・・?」頭を下げられた事に驚く陽。

「でも怒ってるみたいよ・・・あなたたちの命令違反は・・・」とキキ。

「でも結果的には、みんなを救った・・・」

「だから、怒れないのよ・・・彼の優しさよ。」

「指揮者には不向きですね・・・でもロクさんも、命令違反は常習犯とよく聞きますが?」

「彼を、叱れるのは参謀の数名だけよ・・・」

「もっとプライドの高い方だと思ってました・・・」

「そんな事ないわ。仲間の為に命を張る。3期はそんな連中が多いわ。」

「仲間ですか・・・」

「部下を亡くしたの。あんまり彼を責めないでね・・・」

「はぁ・・・」

ロクの去った方向を見つめる陽。



 P4の大きな食堂。風我を中心に、P6の兵士たちが食を囲んでいる。ほとんどが缶詰の食材。しかし兵たちの目は輝いている。

「缶詰しかありませんが・・・どうぞ。」

 風我の言葉が終わるやいなや、缶詰に喰らいつく兵士たち。

「これが・・・夢にまで見た牛の缶詰か・・・」とバズー。

「おい!こっちには果物もあるぜ!」キーンも興奮気味。

「なんだ!初めての味だな!」とダブル。

 皆、夢中になって缶詰を頬張る。中にはスプーンを使わず手で頬張る物もいた。



 P4司令室。玉木が司令室に腰掛けている。そこにロクが入ってくる。

「入ります!」

「ロクか・・・さて、これからどうしたもんかねロク?」

「ポリス最大の規模と言っても、ここにはろくな武器がないんですね?」

「ああ・・・ここは、元研究施設だからな。」

「あの武器の量・・・反撃出来ない理由がようやく分かりましたよ。」

「命掛けで来てくれたのは感謝している。悪いことは言わない。早めにP6に戻るがいい。」

玉木は後ろを向きながらロクに呟く。


「タマさん・・・」

「ある程度、ここに就任した時から覚悟は決めていた。ここではジプシャンには勝てない・・・」

「ここを放棄しましょう!P6に行きましょう!まだP5の力だって・・・」

「残念だけど、それは出来ない。3000人はいるの・・・すでにここは、東西南北は囲まれてるわ。入るのも困難だけど、今となっては逃げるのも困難ね・・・」

「しかし・・・」


「あなたたちもここに来るだけで、たくさんの犠牲が出た・・・サンドシップがここの中心地に入ってくるまでは時間が掛かる。所詮、向こうもこうやって白兵戦しか仕掛けて来ないわ。だが船が入ってきたら、そうはいかない。ここは砲撃されて終わりよ。悪い事は言わないわ。早くここから脱出しなさい。」

「タマさん・・・それは・・・」


 ロクは玉木の決意を感じ取っていた。そして戦局はポリス不利と傾いていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ