その14 初恋
「だから言ったのに・・・」
ロクが捕虜にした、全裸のジプシャン兵たちを見ているホーリーとキキ。キキは恥ずかしいながらも、指の隙間からキッチリ見ている。そこにダブルやロク、バズーらが駆け上がってくる。
「もーう、嫌!」とキキ。
「あら・・・いい眺めね・・・いい男もいるじゃなぁ~い?」
ホーリーの声で、やや強張っているジプシャン兵たち。ホーリーの目が輝く。
「ロク?いつからこんな趣味になった?」とバズー。
「さーなー?」
「どうするんだ?捕虜としては多すぎないか?」とキーン。
「ああ、ここで爆破して全員片付けるつもりだ。」
ロクの言葉に、必死に首を振るジプシャン兵たち。バズーは、ロクの言葉に何かを気づいた。
「そうだな!それはいい案だ。ダブル、爆薬だ!」
「マジかよ・・・??」渋々爆薬を取りに行くダブル。
ロクの言葉に気づいたのは、ホーリーも同じだった。
「ちょっと待てよ。爆薬がなければ、ここから逃げれないわ。」
「裸で逃がしたら?弾も残り僅かよ・・・」とキキ。
「仲間の首を切り落とす連中だぞ!生かして帰すのか?」とロク。
「なら、勝手に首でも切り落としなさいよ!!」
キキはロクの非道の言葉に対して、珍しく大声を出し背中を向けた。
「おーい!ダブル!爆弾やめで、斧持って来い!」バズーが叫ぶ。
『どっちだよ!?』下からダブルが叫んだ。
すると、ロクは高速の上で爆弾を仕掛けていた男の側に行き、しゃがみ込んで話し掛けた。
「ごめんね~?こいつら俺より野蛮なんだ・・・」
ロクの不敵な笑いに、ジプシャンの兵士たちは、必死に何かを訴え口枷をしたまま叫んだり、泣いている者までいる。 するとダブルが、下から大きな斧を持ってくる。兵士たちは更に顔色が蒼くなった。
「ほらよ!俺はそんな役はごめんだぜ!」とダブル。
「なら・・・こいつから行くか?」
バズーは斧を持ったまま、ある兵士に近寄る。その兵士は、縛られながらも他の仲間の兵に近寄り、必死に逃げようといている。
「うっ!うっ!うっ・・・」
すると、ホーリーが口を挟んできた。
「武器を持たないジプシーを攻撃しちゃいけないんでは?」
「おいおい、こいつらジプシャンだぜ・・・その掟は・・・」とバズー。
「今は軍服は着てないけどな・・・」とロク。
すると、下から声が聞こえてくる。
『敵のバイクが近寄ってきます!』
「時間がない・・・銃殺する・・・」
ロクは、腰の拳銃を抜き一人に向かって構え始めた。
「駄目よ!チャンスを与えたら?」と笑顔のホーリー。
「そうだな・・・」
捕虜の兵らは、P6の軍服を着せられ両手だけは後ろに縛られていた。縛っているのが分からないように、その上にポンチョコートを着させられている。兵らは全員口枷をしたまま、ビルの入口付近に並べられていた。
「あの倒れている高速道路まで走れ!妙な動きをしたら、お前らみたいに後ろから容赦なく撃ち殺す。いいかな??」
ロクは笑顔たっぷりに捕虜たちを説得し始めた。
「横に逃げたり、立ち止まっても駄目だ。ビルの上からバズーカや機銃が狙う。」
するとロクは、敵の兵の一人に自分が被っていたハットを頭に被せ、ビルの上を指差す。するとバズーとダブル、キーンまでが各々の武器を構えていた。
「足場悪いけど、全力で走れよ!ああ言い忘れた。味方は近くまで来ている。味方にも撃たれないようにな?」
一人のジプシャン兵が、ロクに向かって唸っていた。ロクが倒れた高速上で拘束した兵だ。
「うーうっ!うううーううううーうう!」
「大丈夫だよ。起爆装置は俺持ってないから・・・」
そう言うと、なぜかその兵は黙り込んだ。
「最初の30秒だけは、撃たないから・・・じゃあ行くよ!GO!」
ロクの掛け声で、兵士たちは一斉に走り出した。両手を後ろに縛られているせいか、スタートしてすぐ転倒した者までいる。それを廃墟ビルの上の階から見つめるダブル。
「おいおい・・・」
みんな必死に瓦礫の中を、倒壊した高速道路に向かって走り出してる。
「時間だ!」
ロクの声を聞いた、ダブルとキーんはその兵らを狙撃し始めた。銃弾は、足や顔にギリギリでかすめていく。兵士たちは更に加速して走り始めた。
大広隊本隊。
「南側で、銃声!敵が爆破ポイントに逃走してるそうです。」
「爆破のタイミングは任せます。奴らめ、痺れを切らしましたね・・・」と大広。
ポリスの軍服を着させられた20名の兵士は、倒壊した高速道路近くまで来ていた。しかし兵たちは、高速道路の下までは行かず、途中で左右に分かれ始めた。するとその兵士たちの足元を、キーンのライフルが狙撃し始める。兵士らが進退窮まった次の瞬間だった。高速道路の上の部分から爆発が起こり、 高速道路が音を立て崩れ始めた。何人かは瓦礫の下敷きとなり巨大な砂埃の中に消えて行った。
ロクたちはジプシャンの軍服を着ながら、高速道路が爆破された現場に集まり始めていた。
「もし、敵が爆破しなかったらどうしていたロク?」バズー。
「そしたら、こっちで狙撃してたよ。」
「そうか・・・ああ!ロク演技下手過ぎ!」
「ごめんね~!」
「道は出来たか?よしここから逃げるぜ!」とキーン。
「おお、これじゃ俺らがP4に撃たれちまうだろ!?」とダブル。
「P4は来ない!」断言するロク。
「何でだよ!?」とダブル。
「断ったんだ。お前らは俺の仲間だからな!俺一人で助けると!」
「くっ・・・いつもいい所を・・・」
すると、後方を警戒していたキキやホーリー、ボムも合流して来る。
「敵は、完全に芝居に騙されてるわ。」とキキ。
「急ごう、遺体を調べられたらバレルわ!」ホーリーが叫ぶ。
「行こうって、どこに行けばいいんだよ?」とバズー。
「P4はこの先だ・・・」
ロクたちは、高速が爆破された箇所を通る時だった。突然、機関銃の銃声が彼らを襲った。
「ロクっ!」
ロクをかばい、ロクの前に出たのはホーリーだった。ロクの顔に大量の血が吹き付けられた。ホーリーはそのまま後ろに倒れ、ロクはホーリーを抱き締めた。ダブルは咄嗟に撃って来た方向に、機銃を撃ち込んだ。キーんもバズーも拳銃を抜き、まだ砂埃が消えない高速道路崩壊部分に銃弾を乱射した。ロクはホーリーの体を抱えると、近くの瓦礫の影に隠れた。
「ホーリー!?」
「ロ、ロク・・・」顔色が変わっていくホーリー。
「キキ!!こっちだ!」
銃弾は左胸元をエグっていた。大量の血がドクドクと流れ出す。ロクの声に慌ててキキが銃声が鳴り止まない中、身を伏せながらやって来る。ロクは銃撃痕を必死に手で押さえるが、血は止まらない。キキが背負ったリュックからガーゼを出し、傷口を上から覆い始めた。
「あ、あたい・・・た、助かる・・・?」必死の形相のホーリー。
「助かるさ!何とかする!」
「嘘よ・・・キキ泣いているもん・・・」
キキは必死の形相で手当てをしているが、キキはホーリーの様子を見て、涙を溢し始めていた。
「泣くな!キキっ!」
「だ、だって・・・」
その言葉で、ロクもホーリーの容態を把握してしまった。
「悲しまないで・・・泣かないで・・・遅かれ早かれ人は死ぬの・・・」
「ホーリーっ!!??」
「さ、先にみんなのとこに・・・行くだけよ・・・」
「キキ!血が・・・血が止まらねぇよ!!」
「ロ、ロク?・・・き、気づいてた?」
「ホーリー!もういい!喋るな!」
「だから・・・気づかなかったの・・・?」ロクの手を握り絞めるホーリー。
「だから、喋るな!!」
「ロク!聞いてあげてよ!!」
キキが泣きながら、珍しく怒鳴ってみせた。ロクは自分の顔を見ているホーリーの顔を見つめた。
「な、なんだよ・・・?」
「あんたはね・・・あんたは・・・私の・・・初恋の相手だったんだよ・・・」
「ホーリー・・・」
「あたい・・・こんな男みたいな体で、他の男たちよりもデカいから・・・ガキの頃からポリスに虐められて・・・助けてくれたのはいつもロクだけだったよね・・・?」
「そうだな・・・いつもホーリーを助けてたな・・・ホーリーのゼッケンは“666”・・・ゼッケンだけで虐められてたよな?・・・・なんでだよ!キキ!?血が止まんねぇ!」ホーリーの話を聞きながら懸命に止血をするロク。
「最後は・・・好きな男の為に死ねるなんて・・・あ、あたい・・・幸せだよ・・・」
「撃たれて、幸せな奴がどこにいるんだ!?」
「この銃は・・・あんたに預けるわ・・・」
少しづつ意識が遠くなり、目も虚ろになっていくホーリー。
「ホーリー!!」
「ねえ・・・もっと抱き締めてよ・・・もっときつく・・・もっと・・・あたい・・・」
「ホーリー!!」キキも叫ぶ。
「あ、後は・・・任せるから・・・」
「お前も・・・そのセリフかよ・・・?」
すると、ホーリーはロクの腕で眠るように息を引き取っていった。
「ホーリー・・・」
「・・・」泣き崩れるキキ。
涙を流しながら、我を押し殺しているキキ。ロクは動かなくなったホーリーを強く抱き締めていた。
「やばいよ!前方にも敵兵だ!」
ボムは、崩壊した高速側を見て叫んだ。銃撃は増える一方で、ロクたちの後方からはバイク音が近づいてくる。
「て、敵に読まれていたか・・・!?」
「そう簡単には、逃がさないぜ・・・」
瓦礫の中、不敵に笑うタケシ。