その13 仲間を救出せよ!
P4司令室。
「味方のSOS信号確認!北24ブロックからです!」
「まずいな・・・」顔をしかめる玉木。
「まさか・・・?その北24ブロックって?シックスの事か?」
「そうだが・・・それがどうした?」
「無線を流したか?シックスに来いって?」
「そんな事したら、ここの居場所がバレるでしょ?」
「あらら・・・敵の無線にまんまと乗せられたか・・・?」
「確かにあそこは、旧防衛庁・・・そこを突くか?タケシは・・・」
「助けに行かせて下さい!お願いします!」とロク。
「駄目だと言っても、一人で乗り込む顔だね!?」
「え?ええ・・・」
「風我?どうする?一人でも行く気だよ。この子?」と玉木。
「完全に敵の罠です。俺らが出てくるのを待ってると思うんですがね・・・今助けに行くのは危険です。」
「取り合えず外に行かせて下さい。後は何とかします!」
「仲間は何人だい!?」
「約20名!陸戦ではP6のトップクラスばかりです。そうは負けませんよ!」
「タケシを舐めない方がいいわ?向こうも陸戦はプロよ。あの30名を見たでしょ?どうする風我?」
「正直打つ手なし・・・」腕を組み目を瞑る風雅。
「俺が着ていた、敵の制服はまだありますか?」
「使うの?」
「ええ、ちょっと・・・ジプシャンはP4が助けに来ると思ってます。そこを突きますよ!」
「手伝いはいて?」
「いえ・・・それと長いロープを少し・・・」
「ロープ?」
シックスと呼ばれる旧防衛庁区域。瓦礫の街をジプシャンの兵が1名、周りを警戒しながら歩いている。そこに足を押さえて蹲っている同じジプシャン兵がいる。慌てて近寄る兵士。
「どうした!?」
「足を・・・撃たれた・・・」
「どこからだ?大丈夫か!?」
兵が機銃を後ろに回し、倒れた兵を抱き起こそうとした時だった。
「うっ・・・」
突然、喉元に拳銃を突きつけられた。
「ごめんね~?」
「えっ?えっ・・・・・・???」
軍服を脱がされ、口枷をし全裸のまま縛られている先程のジプシャン兵。どこぞやの廃墟の部屋に、ロク放り投げられる。ロクは敵の軍服のまま手榴弾を外すと、その廃墟の窓際に置いた。
「逃げようとしたら、こいつ撃っちゃうから?」
「うっ・・・うっ・・・」
ロクは敵の無線を掴むと、おもむろに話し始めた。
「敵の兵がいる!場所は・・・」
ジプシャン兵3名が、ある廃墟ビルを警戒しながら入ろうとしている。部屋は薄暗く、兵らは別々に行動し始めゆっくりとビル内を歩き始める。すると一人の兵が急に張られたロープに足を取られ、転倒してしまう。するとすぐ側でロクが銃を構えていた。
「ごめんね~?」
「えっ!?」
再び裸にされ、縛られたまま先程の部屋に放り投げられるジプシャン兵。
「あ?こいつにも言ったけど、逃げたらあれ撃っちゃうから。」
ロクは窓際にある手榴弾を指して、二人目の兵に忠告した。
「うっ・・・うっ・・・」
「寂しい?今もっと連れて来るよ。」
同じ廃墟ビル。警戒しながらビルを捜索するジプシャン兵。ある物音に気づき、恐る恐る近寄る兵士。するとロープが張られてる部屋に入る。ロープに引っ張られ壁をコツコツと叩く簡単な装置を発見。兵が慌てて後ろを振り向くと、ロクが笑顔で銃を構えている。
「ごめんね~?」
ロクは3人目の兵を連れてきた。やはり口枷に全裸、両手両足を縛られている。
「まだ3人・・・」
バズーらがいる廃墟。キーンとバズーが外を警戒しながら話し込む。
「銃声が無くなった気がしないか?」とバズー。
「確かに・・・」と警戒するキーン。
そこにホーリーがやって来る。
「南の兵が、手薄になった。どうする?」
「北にバイク隊だよな?罠か?」とキーン。
「南には、高速道路が倒れてたよな?南側に・・・」とバズー。
「南に?じゃあ追い込まれたら・・・・?」とホーリー。
「ああ、越すことが出来ず、俺らは袋のネズミだ・・・」焦るバズー。
高速道路の高架橋が2キロに渡って倒れている。そこの45度の傾斜に、ロープを使って登るジプシャン兵がいる。重いリックを背負っている様子で足元も覚束無い。やっとの思いで登った兵は、頂上部分に爆弾を仕掛けていく。すると、同じジプシャンの兵が倒れた高速道路の頂上部分に居るのに気づく。
「お前何してんだよ?」
そこに居たのは、敵の軍服を着たロクだった。
「はい、ここで監視を頼まれまして・・・先輩こそ何してんですか?」
登ってきたジプシャン兵は、ロクよりやや年上なのか、ロクは敬語で答えた。
「はあ?ここはもうすぐ爆破するんだぞ!?聞いてないのか?早めに待避しろよ!」
「じゃあ、先輩の作業が終わったら撤収しますよ!」
「もうここは終わるぞ。お前見たことないけど何班だよ?」
「P6って知ってます?」
するとロクは拳銃を抜いて、その男に向けた。
「おいおい・・・」
「ごめんね~手を上にお願いしますね!先輩!」
再び、廃墟の部屋。先程のジプシャン兵が全裸に縛られたまま、その部屋に放り投げられる。見ると20名近いジプシャン兵が、全裸のまま縛られて横たわっていた。皆、口枷をされているので唸るだけだった。
「そろそろ、いいかな?」
大広が陣取る北のキャンプ。双眼鏡で南の倒れた高速道路を見ている大広。
「南の爆破班から、連絡がありませんね?」と大広。
「まだ時間が掛かっているのでしょう?」
「南の部隊は、そろそろ撤収させて下さい。」
「ははっ!」
「奴等を南に追い込みますよ!バイク隊前進して下さい!」
バズー班。廃墟内。日は西へ傾いていた。
「北のバイク隊が動くわ!」とキキ。
「動いたか!?」銃を手にするバズー。
「南は敵が居なくなっているよ!?」ホーリー
「マニュアル通りだな・・・罠に簡単にハマるかよ!」
「無線!?」
突然、キキのインカムに無線が入る!キキが答える。
「・・・誰・・・ロクなの!?」
「ああっ!?」キキの声に驚くキーン。
「無理よ・・・罠よ・・・」
「キキ!なんだ?」ロクからの無線にバズーも驚く。
「分かったわ・・・うん・・・ロクよ!南に下がれって!」
「罠に掛かれと言うのか?」
「暗号だった。詳しくは話さなかったけど、そうしろって!」
「ロクで間違いないんだな?」とバズー。
「うん、なにか考えがあるみたい。」
「わかった!みんなを集めろ!ここを離れるぞ!」
「それと6の番号は撃つなって・・・」
「あいつ、まだ敵の服着てるのか?」
「野郎っ!いつもおいしい所を・・・」呆れるダブル。
バズーとダブルの班が、身を低くしながら廃墟を移動している。そこにある4階建ての廃墟から口笛を吹くロク。いち早く気づいたのは、キキだった。
「ロク・・・」
ロクは窓際から、このビルに入れのサインを送る。
「よし!入るぞ!急げよ!」
バズー、ダブル班の20名近くは、ロクの指示通り廃墟に入って行く。するとその廃墟の階段上でロクは待っていた。
「お前、どこに行ってたんだ!?」
「説明は後だ!バイク隊が来る。まずはこれに着替えてくれ。」
ロクが人数分の、ジプシャン兵の軍服を差し出す。
「これ・・・?どこで手に入れた?」とキーン。
「訳はあとあと!それとこの上の部屋は、キキとホーリーは上がるなよ!」
「なんで女は入れないのさ!」そこはホーリーが反発。
「ホーリーは良いけど、キキは・・・」キキを見るロク。
「どういう事よ!もう!」
「まあ、すぐ分かるよ!バズーとホーリー用の軍服捜すの大変だったんだぜ!」
「これ、みんな臭いわよ!」ホーリーは自分に当てられた軍服の匂いを嗅いでみる。
「我慢我慢・・・」
「一応これでも嫁入り前なんだから、他の隊員の前で着替えられないわ!ねぇキキ?」
「そうよ!どこか、女子専用更衣室はないの?」
キキとホーリーは、ロクとの再会をあえて口にせず、愚痴を吐いてみせた。
「お前な・・・そこまで言うなら、この上を使いなよ・・・」
「そう、さしてもらうわ・・・」
キキとホーリーの2名だけが、更に上の階に上がる。
「で?敵に紛れて逃走でもするのか?」とバズー。
「そう簡単に、逃がしてくれるかな?」
すると上の階からキキの悲鳴が聞こえてくる。
『キャー!』
その声に、 ダブルが慌てて機関銃を構え階段を掛け上がる。