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四天王  作者: 原善
第五章 カラー・フィールド
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その9 盲(もう)撃ち

 ブイは前のめりに倒れた。ブイが持っていた懐中電灯が落ちると、トンネル内は再び暗闇となった。

「罠だ!」バズーが叫んだ。

「撃ち返せ!」バズーの声でキーンも叫ぶ。


 双方は狭いトンネル内で、激しい銃撃戦となった。暗視スコープを外していたバズー班は、ただ闇雲に音がする方に撃ち返すしかなかった。明かりは銃弾が走る明かりしかない。隠れる所のないバズー班は、一人また一人と銃弾に倒れていく。その時、キーンがバズーに向かって叫んだ。


「バズー!やるんだ!」

「ああ・・・後で文句言うなよ!」

 バズーは暗闇のキーンの声の方に叫ぶと、身を屈めながら敵陣営に向かってバズーカを発射した。弾は命中、天井まで被害が及んだ。大量の砂埃と爆風が、バズーらを襲う。静かになったトンネル内にバズーたちは立ち上がった。


「何人撃たれた?衛生兵は怪我人の手当てだ!キーン!?敵の生存を確認してくれ!」とバズー。

「わかった!ライト点けろ!」

 埃漂うトンネル内に懐中電灯が点けられた。バズー班で倒れていたのはブイを入れて3人。

「衛生兵!こっちだ!キーンはブイを!」バズーが指示を飛ばす。

「まずい!衛生兵も撃たれてる・・・」嘆くキーン。

「くそっ・・・と、とにかくブイを見てやれ!」


 キーンは、ブイが倒れている所まで走って近寄ると、ブイを抱き起こした。しかし、ブイは動く気配すらない。

「駄目か・・・」


 バズーも近寄ると、キーンはバズーに向かって首を横に振った。

「あいつら・・・ポリスの照明信号を使っていた・・・」

「こんな内部まで、敵に進入されているのか?」

「敵が居るという事は、どこかに出口はあるな?」

「そうだな・・・」

「ブイの装備と無線機を持っていく!誰か無線機を頼む!」

「ああ・・・」



 ダブル班。ロクが廃墟の高いビルから周りを警戒している。あたりは日が暮れ、既に暗くなっていた。そこにある兵がやって来る。歳は12、3歳。ダブル班の兵士だった。名はボム。当時4期生、後のP5四天王のボブである。


「言われた通り、後方500地点にも仕掛けました。」

「ご苦労。これで安心して前進出来る!」とロク。

「疾風のロクと呼ばれる人と作戦が組めて光栄です!」と謙虚なボム。

「ふっ、いつの頃やら・・・ほら!」照れるロク。ロクは何かの缶詰をボムにほおり投げた。ボムは腹が空いていたのか、その缶詰の蓋を開けて中身を頬張る。ボムは口に物が入りながらロクに尋ねた。


「ロクさんは、盲撃ちが出来ると聞いてます?」

「ああ、確かに・・・」

「目を瞑って撃つんですよね?今度、自分にも教えてください!」

「無事ポリスに帰れたらな・・・」

「はい!」

「とは言え・・・教えるような技術はない。うーん、なんて言うかな。俺もP5の四天王の死龍に教えてもらったからな・・・」

「P5の女四天王の死龍さんですか?」ボムの目が輝く。

「ああ、怖い女だぞ!おんな女、上官にするもんじゃないな・・・そいつにさ、目で撃つんじゃなくて肌で撃てって言われてさ。」

「うーん・・・嫌な予感が・・・えっ?肌ですか?」

「うん・・・目を開けていると怖くて、手が縮むから、あえて目を瞑るんだって・・・」

「へぇーそんな事出来るんですね?」

「そうだな・・・傍から見たら不思議なんだろうな?」


 すると、そこにホーリーが入ってくる。

「班長・・・戻ったぞ!」

「それで?状況は?」

「おい!そこあたいにも缶詰!」ボムに食料を要求するホーリー。

「は、はい・・・」ホーリーの迫力に、ロクから貰った缶詰をそのまま手渡すボム。

「志村口は・・・やばいな・・・」ホーリーが顔をしかめた。


「どうした?」

「敵のバイク隊が入口に集結している。何かあるよ?」

「死神だな?数は?」

「約50、しかし運び出されるのはジプシャン兵の遺体ばかりだ!」

「ジプシャンも上手くいってないという事か・・・恐らく・・・バズーだな?」薄笑みを浮かべるロク。

「私もそう思う。で、どうする?」

「後方から仕掛ける。ダブルには?」

「まだ伝えてない・・・」

「バズーは、苦戦してると思うか?」

「あいつがただでは死なないわよね?」ホーリーは笑ってみせた。


「仕掛けるんですか?ロクさん?」ボムがロクに尋ねる。

「今は、ダブル班・・・ダブルに任すよ。」

「反対したら、一人でも行くくせに・・・」とホーリー。

「そうだな・・・」ひとり苦笑いするロク。

「自分も行かせて下さい。」ロクの前に出るボム。

「駄目よ。君らはここに居て!」とホーリー。

「どうしてですか・・・?」

「ここからは、ダブル班と別行動だな?」とロク。

「どうせ奇襲でしょ?」

「ああ・・・さて、どうしたもんやら・・・?」



 志村口入口。そこには既にジプシャン軍のバイク隊の本体が終結しつつあった。大広の姿もある。

「敵の姿は、坑内にはなく!」

「何をしてるのですか?」と大広。

「旧神保町付近に、こちらの兵ばかりがやられ・・・」

「敵の姿がないというのは変です。どこかに抜け道があると思われます。兵を送って下さい。」

「ははっ!」

「敵の2次隊は間違いなくここに来ます。隊を左右に展開しここで待機します。」



 バズー班は、更にトンネル内を南に進んでいた。すると突然、無線機が鳴り始める。

「無線だ!」

 無線機はライが引き継いでいた。その無線を傍受する。

『・・・4・・・聞こ・・・か?・・・』

「こちらバルーン。こちらバルーン!応答せよ。」

『・・・シックス・・・目指・・・地上に・・・待機・・・よ。』

「了解!シックスだな!?」

『・・・だ・・・』

「了解!」


 無線がきれ、バズーらはライに近寄る。

「シックス・・・?なんだ?」とバズー。

「旧六本木6丁目近辺。通称シックス・・・旧防衛庁だ。」

「また、敵の罠じゃないよな?」とキーン。

「第一、今の俺らじゃ地上にも出れないな?」

「風はある。どこからかは吹いてる証拠だ。」とライ。

「今の俺らには、前に進む道しか選択の余地はないな・・・行こう。バズー!」

「そうだが・・・この無線も本当かどうか?」

「考える暇があったら、前に進むぞ。食料はあるが、飲み水は残り少ない。この暑さでだいぶ消費した。まずは地上だ!」

「奴らが入れたんだからな・・・出口もきっと・・・」



 廃墟ビルのダブル班。皆が集まっている。

「志村口に敵が?しかもバイク隊?」とダブル。

「死神の本体と思われる。」とホーリー。

「バズーを助けるのか?」

「今の様子から見て、助けは要らんだろ。そうだなホーリー?」とロク。

「そうだな・・・」

「しかし、このまま俺らは地上を行く訳には危険だ・・・」とダブル。

「確かに、危険はある・・・」

「どうするんだよ、ロク?」

「敵は、2次隊の俺らが来るのを待っている。そこでだ・・・」

「ん?」


「敵のど真ん中を、中央突破する!」ニヤリと笑うロク。

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