五乃章 疑いの変生物
「綾帝村。前村長は、一昨年までこの村を一任されていたが、1週間前に原因不明の死亡事件が起きた…」
夜、音良は『綾帝村』を調べていた。元村長の露野の名前を聞いて以降、村について気になったのだ。
葬儀は村全体を擧げて行われるという。それは新しく引っ越した結美一家も同じだ。
「…事故か事件か…まだ分かってない…か」
ぱたん、パソコンを閉じた。こういった調べ物は、家に据え置きのパソコンを使用する。
「…はぁあ」
この村は、新村長が任されてから、村は発展しているようだ。
擧嶋という新村長は、一昨年から村長を任された。選挙にて、露野が落選することは、一部の場所では受け入れられなかった。
新しい考えを取り入れる擧嶋と、保守派の露野。閉鎖されている訳でもない村全体で考えれば、擧嶋の意見が多く尊重されたという。
「ここが、元々、私たちの太鼓の道場」
翌日。皐月は公園を指さす。
「何もないよ?」
「だーかーら、ここに元々、太鼓道場があったんだよ」
小野里が何も知らない音良に言う。
「へ、へぇ…」
ここには元々、白い古い建物があったらしい。
「…露野村長のときは、ずっとここで練習してたんだけど、擧嶋さんが村長になった瞬間、あの豪華な道場が建ったって訳」
「…で、今は公園に変わったって訳だ。分かった?」
「わ、分かったよ…」
小野里って嫌だな、なんて思いながら、彼女は通学路を再び歩みだした。
「露野村長の葬儀は、来週の火曜日に決まりました」
朝の会、担任はそう告げた。
「…この日は、綾帝村の学校はすべて休みです。ご葬儀に参列してください」
『はーい』
どうやら、村全体を擧げて葬儀が行われる、という話しは本当のようだ。
(待って、あの変生物はお葬式に出るの……?)
それが気になって、加入届けを片手に、音良はミックンの方へと向かった。
「ワイですか?ワイは出ないです」
(なに?その一人称…)
それは音良の心の中に留めた。
「…ご存知、ワイは銀河から来た変生物…あ、いや…超生物なので、葬儀ともなると村民全員の目に映ることになりますしね」
確かに、一見すれば物事の道理は通っている。
その時だった。
「へぇ〜っ、アンタが殺したんじゃないかと思ってたんだけど」
小野里の冷たい声が突き刺さる。
「…そ、そんな訳ないじゃ…」
「分かってるよ〜〜〜」
すると小野里はミックンへと歩み寄る。その歩には音がなかった。
「…でもね、殺して得するのはアンタだけなんだよ」
小学生とは思えない洞察力。ミックンは異様に震えていた。こんなビビリが人殺しなどできる訳がない、疑うだけ無駄だなと思う。
それよりも……
「…ねぇ、露野村長は誰かに殺されたの?」
「……」
その問いに、小野里は黙り込んだ。
「さぁ、知らん。ただ死因が不明らしいんだ。そして特にキズとかなかった。でも病気にかかっていた訳でもない」
「…それだけで、ミックンが犯人って決めつけるのは……」
「そ、そうですよ!いくらワイが超生物だからとはいえ、そんな…人殺しなんて……」
「…そういや、前の村長って、アンタのことを受け入れなかったらしいな。パパが言ってたよ」
「…え、ええ。あなたも知るとおりです」
その時、彼の飄々とした雰囲気が、薔薇の棘のように鋭利な雰囲気へと変貌する。
「なら、アンタは前の村長の……敵だったってわけだ!!」
小野里はそう言って、彼はミックンの胸ぐらを掴もうとするが、彼の手は空を切った。
「…なっ!?」
思わず、小野里は表情を崩す。
「すみませんね。ワイは危険を感じると、誰もワイを触れられないようになるんです」
それを聞いて、彼はチッと舌打ちを鳴らした。
「まぁ、いいや。俺は露野村長が死んだことを許してない。あの村長の死を有耶無耶にする奴は許さないから」
それだけ残して、彼は背を向けた。
「…まったく、ワイが人殺しなんて、する理由ないじゃないですか」
そのミックンの声は、どことなく悲しげなものだった。




