それでは、これからお世話になります
「タケさん、待ってくれ。俺達だけじゃ無理だったんだ」
俺を睨みつけた後に、指を差してきた。
「あいつが、俺達に何をするかを誘導してくれた。あいつが一番の功労者だ」
がやがやしていた室内が、静かになった。
そして皆の視線が俺に注がれる。正直、こういうのに慣れていないため、どうリアクションをしていいかわからない。だが、俺だけではこの大部屋は終わらなかっただろう。
「ありがとうございます。そういっていただけて俺も嬉しいです。ですが、俺からしたら皆が皆、熱心に掃除してくれたからこそのこの出来栄えです。俺は場所もわからなければ、力も人並みです。勉強させていただきました」
お礼をいい、頭を下げると誰かが嘆いた。
「くはぁ、なんて欲がねぇんだ。そうです、俺がこいつら引っ張りましたくらい言えよ」
「え、そんなこと言って怒鳴りません?」
「蹴り飛ばすに決まってんだろ」
「そうかと思いましたよ。ですが、皆さんが進んで作業していたんですから俺は引っ張ってません。むしろ引っ張てもらっていたのかも知れないですね」
「確かに。お前鈍くさいからな。聞いてくれよタケさん、こいつよ」
とみんなが俺のダメなところをタケさんにチクり始めた。それと同じくらいに褒めてもくれた。
それを聞いていたタケさんは、俺を見て口元を弛める。
「ここにいる間は、彼らと給仕を担当してほしいがいいか?」
俺は、二つ返事で引き受けた。
「改めて、皆さんよろしくお願いします」
それぞれ思うところはあるようで、反応は様々だった。全員から歓迎されていないのはわかってた。それでも、どうにか船から降ろされることはなさそうだ。足元にいる小鬼達とキジムナー達に目線を近づけようとしゃがめば、どんどん体に登ってきた。彼らの言葉は俺にはわからない。が、歓迎していてくれたら嬉しい。
「おい人間。これから俺達が育ててやるからなって、言われてんぞ」
群がってかわいいと思っていたのに、そんな兄貴分なことを言われていたのか。衝撃と困惑で頭がいっぱいになる。彼らを見る。小突いてきたり、背中に乗ったりと好き勝手に俺に群がる。そうか、いちいち俺の足を叩いたりしていたのは鼓舞してくれていたってことか。
「よろしくお願いします」
それに答えるかのように、跳ねてくれる。
「さぁ、そろそろ船着き場に着くぞ、撤退」
タケさんがそう声をかけると、彼らは次々と部屋から出ていく。自分の部屋に戻るのだろうか。小さい彼らも名残惜しそうに出て行った。そういえば、俺はどこに撤退すればいいのだろうか。
「タケさん、図々しいのは承知で聞きますが、俺はどこに身を置いたらいいですか」
タケさんは、そういえばそうだなと言い、しばらく考えた後。
「あぁ、俺んとこだな」
「え、いいんですか。俺なんて倉庫でも十分ですよ?」
「あのなぁ、流石にそれはダメだ」
「どうしてですか」
「兄さんは臭い的に人間だ。その人間がそこらに落ちてたら」
喰われても文句は言えねぇぞ。
真顔で言われた。
俺の顔は、今ひきつっていないだろうか。
そうか、そうだ。皆は明らかに俺とは生態が違った。タケさんもそうだ。額に角がある。手が長い人も、顔が鳥のような人もいた。つまりは、人間ではないのだろう。こういう人達をなんというのだろう。鬼、鬼は覚えていた。だが、その鬼と呼ばれるものが、はてどこに住んでいるのか、面識があったかわからない。
「俺が人間と呼ばれるのはわかりました。じゃあタケさんたちは、どういうくくりになるんですか?」
タケさんは少し驚いた顔をした後にこう言った。
妖怪、だと。




