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三題噺もどき4

日常

作者: 狐彪

三題噺もどき―ろっぴゃくななじゅうろく。

 




 窓を強くたたく音が響いている。

 テレビを見た限り、今日は朝から雨が降っていたらしい。

 この時間までこんなに大降りなのは久しぶりじゃないだろうか。

「……」

 今回の雨とは相性が悪いのか、少々頭が痛む。

 何もかもこのせいにしたくはないが、低気圧というのが及ぼす影響というのは、人間も吸血鬼も変わらないらしい。まぁ、少々不死身なだけで、作り自体はほとんど一緒だからな……違うのは犬歯が大きいことくらいか?

「……」

 目の前では、パソコンの画面が煌々と光っている。

 部屋の電気をつけるのが嫌いなので、暗い中で仕事をしている。慣れたことではあるが、この光は、暗闇の中ではあまりにも強すぎる。

 その上、雨のせいで頭痛がしている。

 ……仕事に集中できるわけがない。

「……」

 なら、部屋の電気をつければいいだろうと言うだけだが、それは嫌なのだ。それだけは。

 従者には、仕事中くらいつけろと何度も言われたが、その度にNoと言ってきたので、もう何も言わなくなった。

 その代わり、休憩に呼びに来るときに廊下の電気をわざわざつけるようになった。

「……」

 途切れ途切れに集中しながら、胡麻化しながら、やってきたが。

 今日はこれ以上仕事ができそうにもない……。

 時間的には、そろそろ休憩の時間だし、今日はもうこれで終いにしてしまおうか。

 幸い、仕事の進み自体は滞りなく進んでいるので、今日これ以上してもしなくても何ら問題はない。

 休憩後の気分次第では出来るかもしれないが、まぁ、その時にでも決めよう。

「……」

 雨は止むどころか勢いを増している。

 梅雨入りでもしたんだろうか……その知らせは聞いていないが、一週間予報は、そのくらいのレベルで雨の予報が出ていた。

 その中でも散歩は出来るが、靴が濡れないように防水仕様のブーツでも出しておかないとな……。その前に、散歩に行けるかどうかの問題があるが。

「……」

 今年に入って何度か体調を崩してしまっているせいか、心配性に拍車がかかっているうちの従者がいるからな。

 以前は多少の雨でぬれるくらいは何も言わなかったのに、最近じゃ鬼の形相だ。

 自分のことは自分が分かっているつもりだが、分かってないです、と言われる。

「……」

「ご主人」

 その従者が、相も変わらず、ノックなしに戸を開けて、声を掛けてくる。

 コイツもコイツで、頑固だよな。ノックをしろと何回言ったことか……その辺はお互い様だな。嫌がらせじみたことをしないだけ私の方が大人ということで。

「……何か失礼なことを考えてませんか」

「いいや?」

 即座に返答したが、疑わしげな眼で見られた。

 どこにそんな目で主人を見る従者がいるんだか……ここに居るんだが。

「……休憩にしましょう」

「あぁ、」

 問い詰めることは意味なしと考えたのか、呆れたように決まり文句を口にする。

 私もそれに連なり、返事をして椅子から立ち上がる。

 机に置かれたマグカップを手に取り、廊下に出る。明るい電気のついたそこは、目が慣れるのに多少の時間を要する。

「……今日は何を作ったんだ?」

「りんごのコンポートです」

 珍しくシンプルなものを作ったようだ。いや、作るのは難しいかもしれないが、普段ケーキをメインに作っているような側からしたら簡単なんじゃなかろうか。

 それとも、そのコンポートを使って何か別のモノでも作ろうとしているんだろうか。

 それだったら、この先の休憩時間が楽しみになるかもしれないな。

「少し前に買ったのを忘れていたりんごがあったので」

「……」

 それは言う必要はあったか?




「りんごを使うならアップルパイとかあっただろう」

「シナモンがきれてたんですよ」

「そうなのか、珍しい」

「ジャムにしてもよかったんですけどね」

「それもそれでうまそうだな」







 お題:りんご・ブーツ・雨

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