表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
くじらの唄  作者: 音夢
8/18

7.太陽とハンバーグ

 さて、デート(仮)はひとまず確保できたが、二人は大学生でありもちろん課題もまぁまぁある。

 

 俺は体育学部で詩音はバイオ学部と互いに学部は違うが一般教養はお互いに同じものを選択しているため今週締め切りの課題を一緒にやろうと提案し、ついでに夕飯を済ませるかと二人でファミレスに行くことにした。


 詩音はいつも頼むものが同じだった、目玉焼き乗せ鉄板ハンバーグセット、特に鉄板に乗っている奴はどこに行っても絶対にそれしか頼まない。

 

―なんで、いつもおなじ なんだ?―

 

 と過去に聞いたことがある、うーんと考える詩音。


―めだまやきって たいようみたいだし てっぱんはんばーぐは じゅーってしんどうが つたわって てんしょん あがる!―


 満面の笑顔で手をぐっとしながら答える。

 俺もハンバーグは好きだし、大体の人はきっと好きだからと答えるけども詩音はこうやって何がうれしいのかも表現してくれる。好きの表現ってこんなにも味深いものにできるのだなっと話すたびに思う。


 そんなやりとりを思い出しながら、いつも通りホログラムパネルで同じメニューをタップし2を選択する。

 俺は足りないのでから揚げも追加するかと数字の1をタップしていると、唐突に手をぺちっと叩かれた。

 見ると詩音が本日2度目のほっぺをぷくっとさせながらこちらを見ている。かわいいかよ。


 ずるいいぃ!と、目で訴えつつ彼女はさっと数量を2に変更し注文確定をトンっと押した。

 深い事を言ったり、たまに子供っぽくなったり、表情をコロコロ変える詩音は見ていて飽きない。そして、かわいい。大事な事だから何度でも言う。

 

 ごめんごめんと手を合わせ謝ってから、課題の進め方など二人で手を動かしながら伝え合う。


 そうこうしているうちに、イヌ型の配膳ロボットがおまたせワゥンと言いながらスイーとやってきた。じゅーじゅーと音を立てる鉄板を2つ取り机にコトリっとおいてから、戻るボタンを押すと、ごゆっくりワゥンと言いながら去っていく。

 

 鉄板から上がる香ばしいゆらめきを肺いっぱいに吸い込こむと口の中によだれがじわっぁとあふれ出る。

 詩音は鉄板が載っている木枠にそっと手を置いてじゅーという振動を感じて目をキラキラさせている。

 両手を合わせて、いただきますと二人で頭をペコリと下げる。


 はふはふとお互いに笑顔でほおばる。

 あーあー、熱いのに一気に口に入れるから、すんごい顔になっちゃってるよこの子。もちろん、かわいい。


 こんな、何でもない日常が続いてくれたらいいなと心の中と口いっぱいに溢れる温かさをかみしめながら飲み込んでいく。


 ごちそうさまをして課題に取り掛かるかと二人でウェアラブルデバイスからホログラムを起動しタブレットサイズになるよう指を内から外に開いて、画面の端をつまんでテーブルにセットする。


 今やARやVR業界が目覚ましい発展を遂げていて、一昔前の物体のタブレットやスマホとは違い今はすべてウェアラブルデバイスという腕時計型からホログラム画面が飛び出してスマホやタブレットの役割を果たしてくれている。


 VRグラスに接続することでウェラブルを起動せずとも画面をいじることも可能である。

 今は二人で課題をするためにあえて、ホログラムを起動してお互い見せ合えるよう視認許可にしている。


Q. AIを使って何でさっさと課題を終わらせないのか。


A. 近年AIを使うことで自ら考えることを放棄してしまったことによる問題が取り上げられており、文部科学省は教員の手助けとしてAIを使用することは認めているが、学生がAIだけを使用して課題のレポートを作成することや持ち込み試験にAI端末を使用することを禁止している為。


 簡単に言えば頭を使え若人よ!なのである。

 今はAIを見破るAIまでいるので、ほとんど不正はできないようになっている。

 過去には、他の端末のAIを使用し作成したものを一字一句手打ちで作成しなおして提出するツワモノもいたそうだが、普通にバレて単位を落としたとか。何それ怖い。


 筋トレと同じで脳みそも使えば使うほど鍛えられるのだからと考える俺はただの脳筋なのだろうか……?

 

 AIはもちろんたくさんの答えを探してくれるけども、リアルに複数の考えを体験することはできない。

 特に詩音はいろんな意見を引き出してまとめるのがめちゃめちゃうまいので、毎回関心してしまうんだよなぁ、と考えていると。


 ペチンっと、おでこに小さい痛みがいきなり走った、驚いて顔をあげると詩音がやや不機嫌な顔をしていた。


―ぼーっとしないの おわらないよー


 デコピンと、お叱りをうけてしまった。

 はい、すいません、真面目にやります。怒った顔もかわいいですね。


―おわったらー


 ん?終わったら?


―でざーと ごほうびにたべよー

 

 ふにゃっと笑う詩音。はい、かわいい、ありがとうございます!やる気ダンベル今なら100キロあげられます!という心の声を抑えて、懇親のグッジョブを見せた。

読んでいただきありがとうございます!


ブクマ、感想、評価は作者の励みになりますので、よろしければどうぞページ下部をぽちっと!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ