0.プロローグ
生まれつき音などわたしの世界に存在しなかった。
でも、あの日わたしは初めて聞こえたのだ、音が。
きれいなくじらの唄声が。
きれいだと思っていた歌声が。
悲痛な産声の叫びだったなんて。
声ガ。
唄ガ。
聴コエル。
反芻スル。
イタイ
クルシイ
タスケテ
イラナイ
ききたくない。
ジャマ
ニクイ
キライ
ミニクイ
だまって。
イキタイ
ドウシテ
カワイソウ
ヤメテ
使えないやつはゴミだ。
イヤダ
ヤメテヤメテ
イタイイタイ
クルシイクルシイ
タスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテタスケテ
ッーーーーーーー!!!!
「うぉぉるぁぁ!!!」
パキィィン
ナニ?
「セイッ!シャッらぁ!」
丸い球体が真っ二つに切れる。
「…ん!!起きろ!し…ん!!起きるんだ!」
だれ?
キィィン
球体が弾かれる。
「…ぉん!」
よく、きこえない。
「くそぉぉぉ!!!んだよっ!とどけよぉぉおおおおぉ!!!!」
「オラァァ!かかってこいやこのガラクタどもぉぉ!!」
キィィン
「髪1本でも触れてみろ!スクラップにしてやんよぉぉ!」
だれ?
バキッ
グシャァ
球体が壁に叩きつけられる。
「詩音!!!!」