大怪盗ミシュット・レンブラン
ロディが滞在している街、ルモント、ルモントの朝は早い、商人や農家の人々が朝早くから動き出していた、時間は朝の6時を回った所であった。
宿、やすらぎ亭でいつものモーニングを食べて、身支度を済ませるロディ、剣を手に取り、宿屋を後にする。
さて・・・いくか。
ロディは街中を歩き、ミラージュ家のある貴族街に向かい歩き出した。
さて・・・ここでいいか。ミラージュ家から少し離れた路地でロディは立ち止まった。
「ゲートオープン。」ロディはゲートを開き、ゲートの中の収納空間から黒い丸い球体を4つ取り出した。
良し、取り敢えずウィクショナリーに、四隅を偵察させよう。
ウィクショナリーとは偵察であり、ロディ達ガーディアンが任務の時に自分が見れない場所まで監視出来る360度自動監視型の黒い球体監視カメラであった。
ウィクショナリーが見たものは全て録画され、情報はロディのゲートカマイザーに送られる仕組みになっていた。
ロディは屋敷にウィクショナリーを配置した。
ロディは屋敷の少し離れた場所、屋敷全体を見渡せる高台にいた。
あの屋敷から何が出るか、些細な事も見逃さない。
ロディは仕事熱心ですね。ルーティアが呆れる程であった。
暫く何も無いまま、時刻は夜中2時を過ぎていた。
何も無いな・・・
不気味な程静かですよ、ロディ。
ロディとルーティアが屋敷の監視をしながら、収納袋に入れておいた菓子パンを食べる。
そして間もなく・・・
シュッ・・・黒い影の様な物体がミラージュ家から外に飛び出していった。まるでカラスか、鳥の様に空を飛んでいた。
ん?今のは何だ!ロディはゲートカマイザーの映像を見た。
そこには、グラインダーの様な空飛ぶ乗り物に乗って近くの街に飛びだった人の姿が写っていた、カメラの画像が小さく、誰とまでは、現時点では、分からなかった。
動いたか!ロディは剣を握りしめ、その飛行物体の後を追った。
ルモントの街の一角に降り立った物体(人物)は宝石店の屋根の上に居た、そして店の天窓を杖の様な物で割り、店の中に侵入していた。
まさか・・・強盗か?ロディの直感がそう告げていた。
強盗らしき人物は、店の貴金属を洗いざらい収納袋に入れていた、あらかた入れ終わると同じ様に天窓から逃げる所であった。
強盗か・・・逃さん!ロディは後を追った。
強盗が最初と同じくグラインダーを広げた所でロディが強盗に追いついた。
「そこまでだ!」ロディは強盗に向かって声を荒らげた。
ロディの存在に気付き、ロディの目の前に対峙していた。
「俺はロディ!ロディ・ファン・アーカイド、ガーディアンだ!貴金属窃盗容疑で貴様を逮捕、連行する。」
「ガーディアンだと?」
ロディは驚いた、帰って来たのは女性の声だったからだ。
「まさか、この街にガーディアンが来ているとはな、だが私は捕まらない、私の名前はミシュット、ミシュット・レンブラン。」
ミシュット?ミシュット・レンブランだと?ロディはその名前に聞き覚えがあった。
ミシュット・レンブラン・・B級犯罪者で有り、金品、絵画、有りとあらゆる高級品を窃盗、略奪している大盗賊であった、被害総額は何兆ゼニーにもなっていて、星団管理局、ガーディアンも彼女の行方を追っていた。
「まさか・・・こんな場所でミシュット・レンブランに会えるとはな。」
ロディはミシュット・レンブランの話を聞いた事はあった、しかし、実際に対面するのは初めてであった。
黒い雲の隙間から月の光が指して、ミシュットとロディの周りを照らしていた。
「お前が、ミシュット・レンブランか・・・」ロディは対面する女性を観察した。
そこには、銀色の仮面を被り、赤い服装、赤い長い髪、白い小さいリボンを腰に付け、背中には赤と金の装飾が施されたマントを羽織り、ダイヤの様な飾り杖を携える女性が立っていた、身長は160センチぐらいであった。
「悪いけど・・・現行犯で一部始終見ていた、大補、連行させてもらう。」ロディはルーティアを短銃の形に変化させて、射撃の態勢に入っていた。
「ガーディアンか・・・フン、残念ながら捕まる訳には行かない!おい、お前たち出番だよ。」
ミシュットがそう言うと、ミシュットの足元から影の様に黒ずくめの男たち10数名が現れた。
「影か・・・やはりミラージュ家と関係ありそうだ。」ロディは現れた男達を見た。
「やりな!」ミシュットの命令とほぼ同時に影の男達がロディに向かってきた。
「く、この野郎〜。」ロディは銃を男達に発泡していた。
バン、バン、バン・・バン・バン・・ロディは男達を狙う、殺さない様に急所を避けるように。
キン・キン・・・キン、キン・・・男達はロディの放つ玉を短剣で躱していた。
「な?・・・こ、こいつら、訓練されてやがる。」
ロディは男達の動きに驚いた。
そして男達はロディに近づき、短刀で斬りかかる。
「く・・この野郎〜。」ロディは腰の短剣を抜き、男の剣を防ぐ。
追撃があるとロディが身構えていると、男達は散開して、また闇の、影の中に消えていった。
「フフフ・・・ロディ・ファン・アーカイド、またいずれお会いしましょう、では。」
そう言ってミシュット・レンブランはグラインダーに乗って飛んでいった。
ロディは見逃さなかった、ミシュットが、グラインダーを広げる時にわずかに出来た体の隙間を・・・ そこには赤い薔薇の細工があったのである。
ミシュット・レンブラン・・・まさか、彼女が赤い薔薇の貴婦人なのか? ロディはミシュットが消えていった空を眺めながらそう考えていた。
くそ〜、犯行現場を見ながら、みすみす逃げられるとは、情けないぜ!
仕方ありませんよ、ロディ、相手は影を操り、自由に行動する、しかも戦技もかなり訓練されていたみたいですから、ロディ一人の手には負えませんね。
だな!今回はヤツの方が一枚上手だったみたいだ、しかし、次に会ったら必ず逮捕してやる。
そのイキですよ、ロディ。
そう会話をして、ロディとルーティアは街の中に戻って行った。
翌日・・・外は生憎の雨であった、グランマートル大星団にはそれぞれの惑星に天候があり、晴れの日、雨の日、台風、吹雪等も存在していた。四季は地球とは違い、春、夏、冬の3季節しか存在しなかった。
ロディは宿屋の自室で考え事をしている。
ん〜、昨日は逃したのは痛かったな、しかし、ミシュット・レンブランか・・・かなりの癖ものだな。
そうですね、影を操る能力、あの手下達の捌き、さすがB級大盗賊ですね、実に鮮やか。
おい、おい、犯罪者を褒めてどうする、ロディが呆れていた。
しかし、あの薔薇の細工・・明らかに赤い薔薇の貴婦人・・・で間違いないはずなんだが、しかし、貴婦人の髪は金色、赤ではないはず、一体どういう事だ?
ロディ、ひょっとしたらですが、あの銀色の仮面に秘密があるのかも・・・僅かですが魔力の反応もありました、仮面で全てをカモフラージュしている可能性もあります。
そうか・・・そうかもな!次に対峙した時には、ルーティアに鑑定してもらうからな。
はい、任せて下さい。
ロディは、窓の外を眺めていた、大粒の雨が窓を濡らしていた。
ミシュット・レンブラン・・・か。
ロディはその日の夜、星団管理局にルモントであった事、ミラージュ家の事、大怪盗ミシュット・レンブランの事全て報告した、その結果、後は星団管理局で調査する、引き続き他地域の街を監視してくれ、と引き続きの旅を言われた。
了解しました。引き続き、周囲の街の調査を開始します、ロディは管理局との通信を切った。
ふ〜これでよし。
ロディ、お疲れ様、疲れたらコーヒーはどうですか?
ああ・・そうだな、ロディはゲートの収納袋から、コーヒー豆と、焙煎機、砂糖を出して、コーヒーを入れ始めた、ロディは自分で入れたコーヒーしか飲まないのである、以前ルーティアにもご馳走した事があった。
やっぱ疲労回復には甘い物です!私も体があれば、一緒にコーヒーやお茶が出来るのに・・・ルーティアは残念そうに言った。
ま、今は仕方ない、早く元に戻るといいな。
はい。
そして、ルモントでの夜は更けていき、ロディは眠りに付いたのである。
翌日、まだ雨は降り続き、空は雲一色であった、ロディは、ガーディアン支給の青いフード付きマントを身に付け、宿屋を後にする。
次の街は・・・モンタナ・・村か?ま〜半日も歩けば着くから、歩いて行くか。
ですね、毎回ゲート移動ばかりしては身体が鈍りますから。
身体の無い君に言われたくないな!
あら!失礼しました。
ロディとルーティアはそんな冗談を言い合いながら、次の町に向かっていた。
つづく。