忍び寄る影
ロディ達がいる街、ルモント、人口約10万弱・・その三分の一を占める貴族と呼ばれる人々。
ロディはルモントでの宿泊場所「やすらぎ亭」を確保してから、ルモントの街の東側に位置する貴族街に向かって歩いていた、現在夕方8時ぐらいになったところである。
流石貴族街だな、デカい家だらけだ。ロディは周りの家の大きさとスケールに圧倒されていた。
え〜と、今通って来た道ですと、順にカレント公爵家、メッサー伯爵家、ノイマン公爵家・・・ですね。ルーティアが、ロディに説明していた。
伯爵や、公爵等の身分は、自身の資産数に寄って違いがあった、使用人500人未満、総資産100万マネーまでで公爵、500人以上1000人未満で総資産500万マネーで伯爵、1000人以上で総資産1000万マネー以上を大富豪と呼んでいた、もはや位を付けられないのである、大富豪は、早々現れないのであった。
お金の事も星団管理局で決められていた、単位をギルといい1ギルは10円程、小さいアルミの小板が使われている、100ギルから銅貨に、500ギルから銀貨、1000ギルで金貨となっていた、普通の大人一人あたりなら、金貨100枚もあれば遊んで暮らせる生活水準であった、金貨の上にはマネーと呼ばれる紙幣がある、1マネーは約1万円ぐらいの価値がある、伯爵や公爵は500万マネー前後、一般市民とは何もかもレベルが違うのである。
やっぱり伯爵、貴族は儲かるのかね〜、家が大きすぎるだろ!ロディは半分呆れ気味で呟いた。
しかたないですよ、ロディ、この辺りは金山、銀山、鉱物資源が豊富な土地ですから、貴族が鉱山を買い占め、採掘、加工、販売にまで手を伸ばしているんですから、いわゆる独占状態ですね。ルーティアが説明する。
なるほどな〜、だから貴金属店とか、宝石店みたいな商店が多かったのか。ロディはこの街に入って、色々見て回った事を思い出していた。
それに他の街や、違う惑星にも輸出しているって話を聞いた事がありますよ。ルーティアが捕捉で説明した。
へ〜、凄いもんだな。ロディは頷いた。
ノイマン公爵家の垣根の角を曲がると、道路の両側に無数のライトが照らされて、ある屋敷に導くように光り輝いていた、その光の先に、更に大きな屋敷が見えていた。
あの屋敷がこの街唯一の大富豪、ミラージュ家ですよ、ロディ。
へ〜、あれが・・・流石にデカいな、いや、デカすぎるだろ!!お城ぐらいあるぞ!ロディは建物を見上げていた。
大きいですね、流石大富豪と呼ばれるだけありますね、私の国のお城の三分の一ぐらいの大きさは有りますかね、ルーティアは自身の住んで居たお城と比較していた。
周りを見ると、人々みな明かりに導かれるようにミラージュ家に向かっていた。
ロディもミラージュ家に向かって歩いていた、人が多く、行き交う人が肩がぶつかる程の密集であった。
しかし・・流石に人が多いな・・ロディは周りの歩く人々に圧倒されていた。
ま〜、まず滅多に人前に姿を出さないバネットと言うお嬢様を皆一目見たいのでしょうね、ルーティアは答えた。
だな・・ロディは人波を分けて先に進んでいた。
ロディが先に進んでいくと大きく豪華な門(入口)が現れた、その門の両脇に使用人が数え切れないぐらい並んでいた、使用人達はそれぞれ歩いて到着してきた人々を奥に案内していた。
「お客様・・こちらへどうぞ。」ロディも使用人の一人に案内され、更に建物の中に入っていった。
凄いな・・ロディは目を疑った。
ロディが入った先には周り一面が緑の景色であった、色とりどりの花や木があり、沢山の鮮やかな薔薇も咲いていた、広さは軽くサッカー場2面ぐらいの大きさはある、その大きな中庭には白で統一された無数のテーブルがあり、多種多様な料理や、飲み物が並べられていた。
見たことない料理ばかりだな。ロディ感想を口にする。
殆ど宮廷クラスの料理ですね、盛り付けといい実に見事です、私の昔の料理を思い出します。ルーティアは料理の数々を眺めながら感想を口にした。
庭園を囲むように渡り廊下があり、その廊下を歩いて来る10数名の貴族の姿が見えた、先頭を歩いているのが、この屋敷の主、年齢は40代後半だと思われた、
スラッとした体型に金の短髪、青い瞳が印象的だった。
後ろを歩く従者だが、親族も皆貴族の気品ある服装をしていた。
一際目を引いたのは、長い腰まである金髪でサラサラな髪をなびかせ、服装は白い豪華なドレスで、黄色の大きなリボンを腰に結んでいる若い女性、胸元と、頭に赤い薔薇の細工を身に付けていた。
あの女が赤い薔薇の貴婦人か・・・ロディはその歩いて来る一団を見て、そう呟いた。
そうみたいです、他の方とは明らかに雰囲気?身にまとうオーラみたいなのが違いますから。ルーティアは貴婦人を見てそう思った。
オーラ・・・ね。
渡り廊下を歩いていた一団が中央のステージのような場所に辿り着き、豪華な椅子に腰を下ろした当主、その右側に夫人、反対側に薔薇の貴婦人が腰を下ろした。
他の親族は一つ下がって、それぞれ与えられた席に着席していた。
大きな庭園は、ほぼ満員状態で招待客や、各国の要人等も多数参列されていた、ロディ達一般客は、庭園にあるテーブルに自由にそれぞれ立食スタイルでステージのある上を見上げる形となっていた。
「ご来場の皆さん、本日は娘、バネットの二十歳の祝いに参加して下さり、ありがとうございます。」当主自ら参加者全員に向けての挨拶があった。
ミラージュ家当主、アレフランド・ネラ・ミラージュ、47歳、ミラージュ家12代当主で貴婦人の父親である。
ふ〜ん、貴族の割には丁寧なんだな、市民に慕われていそうだ。ロディが当主の感想を言った。
ですね、落ち着いた態度と市民に親密な関係を築く、とても良心的な当主みたいです、だからこんなにも多くの方が参列に来るのでしょうね。ルーティアも感想を言った。
アレフランドの隣に座るのが、ネイネ婦人、ネイネ・ネラ・ミラージュ、44歳、長い金髪であるが後ろ髪を上で束ねていて首元はスッキリとしていた、首からダイヤのネックレスを下げていた。
「皆さん、本日は私の誕生会に参加してくださり、ありがとうございます、皆さんの日頃の御厚意によりようやく20歳を迎えられました、本当にありがとうございます、本日は心ゆくまで楽しんで行ってくださいね。」当人、バネットが一般の方含め全員に感謝の言葉を述べた。
バネット・・赤い薔薇の貴婦人か・・・優しく気品が有り、皆に慕われていそうだ、何より確かに美しいな。ロディはバネットを見ながらそう呟いた。
確かに・・・美しいですね、同じ女性の私から見ても他の貴族とは遥かに違う美しさです、皆が一目彼女を見たい気持ちも解りますね。ルーティアはロディに賛同していた。
誕生会が始まり、各々が散らばっていった、料理を食べ歩きする人、酒を頼みに行く人、貴族方に挨拶しに行く人、バネットに直接話をしに行く人、等など皆がこの誕生会を待ち望んでいた結果であった。
ロディ・・バネットと話でもしませんか?ルーティアが提案してきた。
バネットは主役であり、上のステージから降りてきて今はロディ達と同じ庭園のテーブル近くにいた、来客や、一般の参加者と楽しそうに談笑していた。
近くに行きたいのか?なら、軽く挨拶ぐらいはしておくか!せっかくだし。ロディはバネットに向かって歩いて行った。
一般の来客の対応が一段落して、飲み物を飲み始めたバネットを見て、ロディが近づいた。
「初めまして、バネット様、本日はお誕生日おめでとうございます。」ロディが口を開く。
「ま〜ありがとうございます、貴方は初めて会いますよね?」バネットは笑顔で返した。
「はい、なに分この街に来たばかりで、こうして貴族の方とお会い出来るのを楽しみにしておりました。」
「そうなんですか?私なんていつも屋敷に居て、たまにこの庭の先から外を眺めるのが唯一の楽しみなんですよ。」
「そうなんですか、それは良いですね、それと胸元の薔薇も綺麗な細工ですね、貴方に良くお似合いですよ。」
「ありがとうございます。」
そう会話を続けて、ロディはバネットの側を離れた、ロディの周りに沢山の人だかりが出来つつあったからだ。
ロディはバネットと会話をした後、庭園の後ろの方で料理と葡萄酒を頂いていた。
ま〜、人当たりも良く、明るく優しい、美人・・って所かな?ロディは会話した感想を呟いた。
確かに雰囲気の明るい素敵な方でしたね、両親が箱入りにしたがるわけですね。ルーティアも聞いた感想を呟いた。
そして誕生会終盤、貴族方、主役方が、また上のステージに上がり、それぞれの椅子に腰を下ろした、下の庭園では、まだまだ料理と酒で大勢の人が盛り上がっていた。
使用人に呼ばれ、バネットはステージの裏のカーテンに隠れてしまった。
ん?なんかやるのか?ロディはそれを見ていた。
バネットが何やら下を向きつつ、また自分の席に付いた、すると、今度は全身黒い服装(黒子)の人3、4人程が中腰体制でバネットに近づき何やら耳元で何かを伝えるような感じだった、話し?を聞いたバネットは男達に手で下がるような素振りの合図を出した、そうすると男達は、2、3歩下がり、その場で見えなくなっていた。
な?? ロディはそれを一部始終見ていた、なんだ、後ろに下がったと思ったら姿を消した・・・まるで影のような・・・ロディは不思議な感じがした。
ロディ、どうかしたの?ルーティアが聞いてきた。
いや、今、バネットの後ろに怪しそうな黒い奴らが居たんだが、一瞬で姿を消してな、不思議な感じがしたからな。ロディが説明した。
一瞬で姿を・・・手品ですか?ルーティアは聞いた。
いや、解らない、でも手品よりももっと・・何かあるかもな。ロディの直感がそう感じていた。
大富豪ミラージュ家・・・ミラージュ・・・ミラージュ(幻影)・・・影か!!ロディはパッと閃いた。
このミラージュ家には何かある、俺はそう感じた、少し調査をしてみよう。ロディはルーティアに同意を求めた。
私は別にいいですよ。ルーティアは賛同した。
そして誕生会も終わり、来客、一般客それぞれ名残り惜しそうに街の中に消えていった、その中にロディの姿も・・・ロディは予約した宿、やすらぎ亭に入って行った。
つづく。