赤い薔薇の貴婦人
ルルドの町から少し離れた街、ルモント。
ルモントは、人口10万人弱の街であったが、商人や、貴族など、多数の富豪が住む街として有名であった。
冒険者を目指す者たちの為に、ルドル唯一の冒険者ギルドがあるのも特徴である。
産業は、加工品、金、銀、銅等を高値で買付け、それを自社の工場で加工、製造、販売する、そうして、商人や、貴族達は潤いのある生活を送っていた。
しかし・・・やたら活気があって賑やかな街だな、流石ルモントだ。
そうですね、商人の方々も生き生きとしています。
ロディとルーティアも、活気ある町並みを眺めて歩いていた。
ロディとルーティアが前の町、ルルドを離れ、旅して約2日余り、ルルドに一番近い街、このルモントに到着したのは、今日の昼前であった。
昼間のこの時間なのに活気があって凄いな。
そうですね、流石金属と加工品の街! と言った所でしょうか。
ロディとルーティアは、街の様子を眺めながら、周囲の人々を見ていた。
メイン通りを歩き、様々な工芸品店、お土産屋、露店等が並び、商人がひきりに客を集めようと呼び出しの声を発していた。
「へ〜い、いらっしゃい、いらっしゃい、見て行ってね。」
「安いよ、ルマント名物、果肉饅頭、一つ5ギルだよ〜。」
「港町直送新鮮魚介類はどうですか〜、今ならお得だよ〜。」
等など・・・
メインストリートの各露店、商店から、様々な声が交錯していた。
ロディは、露店を見て周り、角にあった貴金属店に目を奪われていた。
小さいけど、宝石店か・・・イヤリングや、アクセサリー、ピアスなんかもあるな。
ロディは店前の品揃えを眺めていた。
なんですか?ロディ、まさか、貴金属に興味があるの? ルーティアか聞いてきた。
いや、そうじゃなくて、この前のクルトニウム金属を思い出してな! こうやって貴金属見てもあれ程光り輝いているのは、無いんだな〜って、思っただけだよ。
確かにあれは輝きは凄かったですが、こちらの貴金属は加工品ですからね、原石とはまた輝きは違いますよ。
ふ〜ん、そんなもんなのか・・・
ロディは店を見て周り、大きな公園のある一角を歩いていた。
周りの人々の格好が変わってきた。
防具、剣、銃、鎧、魔法使いの様な姿の人まで散見された。
ひょっとして、冒険者か?確かこの街には冒険者ギルドがあったよな?
ありますよ、ルドル唯一の冒険者ギルドが!
公園を抜けた先に、冒険者達か沢山待機していた。
見るとある建物に向かい、各自建物の中に入っていた。
あの建物が、冒険者ギルドです、ロディ。
あれが・・・
見ると他の建物よりも二回りぐらい大きく、頑丈なコンクリートの建物であった、大きな入り口の上に、看板があり、そこには「集う者」と黒い文字で書かれていた。
あれが冒険者ギルド、集う者ですよ、ロディ、たしか・・・今は冒険者登録が一杯で最大の100人しか居ないはずです。
100人か・・冒険者も大変だな。
冒険者・・・一般には、魔物退治や、薬草採取、旅人の護衛、ダンジョンの攻略等あるが、グランマートル大星団には、ギルドと呼べる組織は、惑星ルドルのルマントの他には、惑星ドミニカと、惑星ブランタールにそれぞれ一つずつ有るだけであった。冒険者は危険な仕事をすることもあり、星団管理局が多くを許可していないのがその理由であった。犯罪等に巻き込まれる場合も少なくないのである。
どれ・・ちょっと覗いて行くか。
ロディ・・程々にね、手首のゲートカマイザーは隠してくださいよ。
分かってるよ。
ロディ達ガーディアンと、冒険者は何故か仲が悪かった、冒険者のやる行動に、いちいち監視を付けていたガーディアンが居たからだ。それから、ガーディアンを嫌う冒険者が増えて行った。
ロディは建物の中に入っていった、目に入ったのは壁一面に貼られた無数の紙、依頼の用紙であった。
見ると、人探しや、無くした指輪を探してほしい、ダンジョンに眠るお宝を見つけてきて! 高価なポーションを作りたい・・新築の建設の手伝い募集・・等など・・多岐多様な依頼があった。
凄いな・・・こんなに沢山の、色々な依頼があるんだな。
そうですね、中には犬の散歩してほしい、なんて依頼もありましたよ。
なんだそりゃ、それじゃ〜ほぼ雑用じゃないか!
ロディとルーティアが掲示板を見ていると、その様子を眺めている男二人組がいた。
ロディ、気づいていますか?先程から、こちらを見ている視線に・・・
ああ、分かっている。
「あの服装、あの髪型・・間違いないな。」
「あ〜そうだな兄貴、約5年ぶりか、どれ、ちょっと挨拶するか。」
「そうするか。」
そう言って、男二人組は、ロディに近づいてきた。
「よう、久しぶりだな。」
男二人組は陽気な声を上げてロディに話し掛けていた。
殺意はない、ロディは判断した。
「誰だ、君たちは。」ロディは男二人組を見てそう
答えた。
「あんた、ロディだろ?ロディ・ファン・アーカイド。」男がロディの名前を口にした。
「そうだが・・・君たちは?」ロディは答えた。
「やっぱり!・・・ おいおい、酷いじゃないか!
5年前に悪党カルロット逮捕に色々協力したのに・・
・」
カルロット?A級犯罪者にして、密輸組織のボスだった男だ、5年前にロディがもう一人のガーディアンと協力して逮捕した男だ、今は星団監獄に収容されていた、そんな貴重な情報を知っている人は数は少なかった。
「君たちは、誰だ?」ロディはまだ、疑いの眼差しで、男達に聞いた。
「ま〜だ、解んないのか?俺だよ、スタンレー、スタンレー・バル・ゲティッシュだよ!」男が名乗った。
「そう、そして俺が弟のノートン・バル・ゲティッシュだ!」もう一人の男も名乗った。
スタンレーとノートンと名乗った男達、ロディは記憶を思い出す。
「あ〜!!あの時、カルロットに捕まっていて、逃げて来て、俺に色々な情報をくれたやつか?」ロディは思い出した。
「おおよ、ま〜あの件以来悪い奴らは許さない、困った人がいれば人助けしようと思い、去年冒険者になったんだ。」ノートンが答えた。
スタンレー・バル・ゲティッシュ24歳、小柄だが肉付きは良い、ノートン・バル・ゲティッシュ22歳、兄のスタンレーよりも大柄で、筋肉がとにかく凄い見た目であった、仲の良い実の兄弟であった。
「思い出したよ、あの時は逮捕に協力、感謝するよ、それより・・・今は冒険者か?」ロディは緊張の糸を解いた。
「はい、あれから、困っている人を見ると、ほおって置けなくて、兄貴と話して、冒険者になる事を決めたんです。」
「そうか。頑張れよ。」ロディは男達にそう言った。
ロディ、この方たちは?
あ〜、そうか、ルーティアは知らないか、まだルーティアと会う前だからな、約5年前に犯罪組織のボスを逮捕するのに協力してくれた二人だ、悪い奴らじゃない、冒険者になったみたいだ。
ふ〜ん、そうですか。
「しかし、まさか、こん場所でロディに逢えると思わなかったよ、久しぶりだし、まさか、違ったら、どうしようかとヒヤヒヤもんだったから。」
「良く俺だと分かったな。」
「その髪の色、瞳の色、何よりその宝玉を嵌め込んた大剣を持っているのは、俺らにはロディしか居ませんからね。半信半疑でしたが・・」ノートンが答えた。
「そうなんだ。」ロディは素直に答えた。
「しかし、なんでまたこの街にロディが?やっぱり犯罪関係ですが?」スタンレーが聞いてきた。
「いや、今は何もない、ただの旅の途中だ。」ロディは二人を見ながら答えた。
「なら、やっぱりパーティーに参加ですか?俺等も参加、一般人大歓迎らしいので。」ノートンがそう言うと・・・
パ・パーティー・・・ですか?何故がルーティアが激しく反応していた。
「なんのパーティーなんだ?」ロディは、ルーティアが聞きたいだろうと思い、話を振った。
「なんでも、この街1の大富豪ミラージュ家、そこの長女が今年20歳になるとかで、市民総出で、祝うらしい。」
「ふ〜ん。」ロディはパーティや、賑やかな事は余り好きで無かった。
「いつやるんだ、パーティは。」ロディは質問していた、日にちが早ければ、ルーティアに見せられると判断した。
「実はな、今日の夜なんだよ!ロディ、君も付いてるよな〜、あの美人婦人を見れるなんてよ。」
「き、今日〜、しかも夜かよ。」ロディは驚いていた。
た、楽しみです、早く行きたいですね、ロディ。ルーティアだけは浮かれていた。
「しかし、あの美人婦人が人前に姿を現すのは年に2〜3回位しか無いからな、完璧箱入りで、たまに庭でお茶をやっている姿を見かけるぐらいだ。」ノートンが話してきた。
「流れるような金髪の髪、美しい均整の取れたあの身体・・・そしてなりより男達を虜にするあの美貌、正にルドル1の美少女と言っても過言ではないな、そして何より彼女には薔薇が似合う!そう、赤い薔薇が!
あの金髪に赤い薔薇・・彼女が行く先には常に薔薇が有るらしい、正に・・赤い薔薇の貴婦人・・みんな
彼女の事をそう呼んでいる。」スタンレーが、何処か遠くを観るような感じでロディに話した。
「ふ〜ん、赤い薔薇の貴婦人ね〜。」ロディは興味無さげに聞いていた。
ロディ、ロディ・・私は会ってみたいな、赤い薔薇の貴婦人に!私を差し置いて、どれだけ美しいか、私が觀察します!何故かルーティアが興奮気味になっていた。
わかったよ、行ってみるか。ロディは渋々であった。
ロディはゲテッシュ兄弟とギルド内で別れ、ギルドを後にした。
バネット・ネラ・ミラージュ20歳、大富豪ミラージュ家長女、赤い薔薇の貴婦人・・・一体どのような人物なのか、ロディは、ルーティアに急かされるように大富豪が連なる貴族街に向かうのであった。
つづく。