犯罪の匂い
ルルドの町、人口5000人程の小さな田舎町であった。
農業を中心に村人はその日の生活を営んでいた。
町の中心に噴水があり、小さな公園もある、そこで遊んでいる子供たちの声が聞こえる。
のどかで、平和な町だな。
そうですね。
ロディとルーティアは、あたりの景色を眺めながら町人の様子を観察していた。
何軒か並ぶ露店に目を移して、色とりどりの農産物が軒先に並んでいた。
ナンル、プランラ、バジット・・・等様々な野菜、果物もある。
ナンルとは、いわゆる「イモ」の事で、普通の芋よりは多少甘いのが特徴で、この町の名産の一つでもある。
プランタは、玉ねぎによく似ていて、表面の皮の色が黄色で、皮を剥くと、白い透き通った身がでてくる。炒めもの等に良く使われる食材であった。
バジットはネギに良く似ていた。薬味に良く使われていた。
色々な野菜や、果物があるな。
そうですね、農業や、果実園が豊富なんでしょうね。
ロディは、露店を周り、色々な果物を眺めていた。
オランジ(オレンジ)、フルーラ(ブドウ)、バーナナ(バナナ)、マランガ(スイカ)か・・・
ロディは普段果物等は食べないが、露店には甘い柑橘系の匂いが充満していた。
どれ、一つ買うか。
買うのですか?
ん?悪いか?
悪くは無いですが、珍しいかと。
ま〜な。
そう言ってロディはバーナナを一房もって、露店の売り子の女性にお金を手渡していた。
ま、たまにはいいだろ。そう言ってゲートの収納袋にしまっていた。
収納袋に入れれば、中は時間が止まっている空間なので1年でも10年でも長期保存する事が出来た。
宿泊場所を探して、宿を見付けた。
時間にして夕方7時頃、客も見た目そんなに多くない宿、旅立館と書いてある宿にロディは入っていった。
「いらっしゃいませ〜」カウンターから若い女性の声が聞こえた。
「お食事ですか、ご宿泊ですか?」
「2食付で部屋を一つ頼めますか?」ロディは女性に質問した。
「はい、わかりました、え〜とお部屋はこちらになります。」そう言って2番と書かれた番号鍵を渡してきた。
「ありがとうございます。」ロディは鍵を受け取り丁寧に返した。
「お食事は夜は9時までで、朝は6時からやってますので。」と女性が追加で説明していた。
「わかりました、部屋に荷物を置いたらすぐに夕食にします。」ロディは答えた。
「はい、お待ちしています。」女性はそう言うとカウンターの奥に消えていった。
2番・・・部屋のベットに荷物を置いたロディは、ふ〜とため息一つ付いていた。
プププ・・笑い声がロディの頭の中に響く・・
なんだ、どうしたルーティア。
だ、だって・・先程のロディの会話・・「わかりました!」「ありがとうございます。」とか・・・
プププ・・・可笑しくて、真顔で、何故か丁寧語、普段のロディからは考えられなくて・・・プププ・・・
うるさいよ!ルーティア、仕方ないだろ、ガーディアンは市民には優しく、節度ある態度で接せよ!って決まりがあるんだから。
あ〜そうでしたね、私はてっきりあのお姉さんがあまりにも可愛いから緊張しているのかと思いましたから。
バーカ、そんな事あるか!それにルーティア、君の方が遥かに可愛くて美人なんだから。
今は剣のルーティアだが、元のルーティアの姿を知っているロディは素直にそう答えた。
ま〜私ほどの美人はなかなか居なかったですね、確かに。
自分で言うか、そう言ってロディは食事をするために一階に降りて行った。
一階の食事スペースには4組の客が食事をとっていた。
「ご注文は何にしますか?」カウンターにいた女性が水を持ってきた。
「クラムとナナマハの炒めものとパンズ、それと葡萄酒をお願いします。」ロディはメニューを見ながら答えた。
「わかりました、少々お待ち下さい。」女性はカウンターの奥に消えていった。
ロディが何気に窓の外を眺めていると、ヒソヒソと話し声が聞こえてきた。
食事スペースの奥に黒いフードを被った男4人が話していた。
なんだ、あいつら・・
明らかにこの場には似つかわしく無い男たちをロディは横目で確認していた。
「それは・・・ でな・・・ 鉱山に沢山あって・・・ 売ればお金持ちよ! ランド様も 幹部にだって・・・」
男たちは小声で話していた為、良く聞き取れ無かった。
クリアーノーズ! ルーティアが雑音、会話を良く聞こえる魔法を唱えた。
「それはだな〜、この村から10キロの所にある寂しい沼でな、沼の脇の道を進むと泰山鉱山につくらしい、そこは誰も探索していないらしいから、クルトニウム金属が沢山あって、全て掻き集めて売ればお金もちよ!」
「本当か?確かに沼みたいなものは有ったが、鉱山なんてあるのか?」
「在るって!間違いないから!それを売って大金を手に入れれば、クルランド様も大喜びよ!下手したら俺ら幹部にだって取り立てて貰えるかもな。」
「よし、明日早速行ってみるか。」
男たちの会話をロディとルーティアは黙って聞いていた。
クルトニウム金属? クルランド様? クルランドって、アビス・クルランドの事か?特A級犯罪者の・・・
クルランドは現在惑星ルビーにいると言う話がありましたけど・・ ルーティアが答える。
奴め、今度はこの星の近くに潜伏していたのか!
アビス・クルランド・・・財閥アビス家の当主で、違法取り引き、金銀窃盗、大強盗団を裏から束ねるA級犯罪者であった。ガーディアンも彼の動きを追っていたのである。
前に一度顔は見たんだけど、あと一歩で取り逃がしたんだよな〜。ロディは苦い思い出を思い出していた。
過ぎた事は仕方ありません、次こそ捕まえればいいのです。
そうだな、ルーティア。
奴らは明日行動に移すそうだ、どうするかな〜、ロディは炒めものを口に運びながら、これからの事を考えていた。
よし!奴らの動きを偵察するか!上手く行けばクルランドの情報が入るかもしれない。
ですね、ルーティアは答えた。
気づけば先程の男たちは居なくなっていた、ロディはコップに半分残った葡萄酒を一気に飲み干し席をたった。
まさか、こんな平和な街で犯罪の匂いがするとは思わなかったな。
そうですね、ロディ。
部屋に戻ったロディは明日の段取りをしていた、剣の手入れと、自分の腰の短剣、そして、ゲート管理局にも一応一報を入れておいた。
一通り作業終わると、ロディはベットで横になる。
明日か・・・ロディは眠りに落ちていた。
翌日、ロディは6時に早めの朝食を済ませ、朝8時には宿を出ていた。先に沼のある場所に行くためである。
さて、奴らよりも先に付ければいいけどな。
ロディはこの辺りの土地勘が無かった、マップで確認して歩いて行くしか方法は無かった。
ゲート移動は街や村、そしてロディが行ったことがある場所にしか反応はしないのであった。
歩きながら、周りを見渡すロディ。
しかし、本当に何も無い田舎だな〜、一面畑しかないや。
そうですね、それだけに昨日の黒い男達の会話が気になりますね。
そうだな。
ロディは少し早足で歩いていた、目的の沼まであと30分位であった。
しばらく歩くと周りの木々の様子が変わってきた。
木の密集密度が濃くなってきたのである。
そろそろかな?
ですかね・・・あ!ロディ、あちらに沼みたいなものが見えます。
ルーティアが映像で景色を送ってくると、確かにその方向に沼があった。
大きさはサッカー場2つ分くらいの沼であった。
奴らの言っていた沼かな〜。
多分・・・他に沼らしきものは見当たりません。
よし、暫く様子を見るか・・・
ロディはゲートを開き、ステルスモードになった。
探索や待ち伏せ、尾行等の時は、姿を半透明に出来るステルスモードは役に立つのであった。
待つこと2時間・・遠くで誰かが歩く足音が聞こえてきた。
足音と気配で、4人・・・昨日話していた男達だとロディは直ぐに判断した。
ようやくお出ましだ!行くぞ、ルーティア。
はい。
ロディはステルスのまま男たちの後を付けていった。
つづく