冒険者アニー
モンタナ村・・・ロディが育った村は今は平和そのものであった。
ロディは村外れに向かっていた、村の外れに一本の大木があった、樹齢1000年は超えているであろう太い大木であった、ロディはその大木に向かい歩いていた。
大木に到着し、足元を見た、そこには2つの名前が木には掘られていた。
「リリア・・・久しぶりだな・・・」
・・・・・・・
暫くロディは黙祷をしていた。
ロディはそう呟くと、足元に掘られた名前を見た、そこには、[ロディ][リリア]と刻まれていた。
ロディ、このリリアと言う名前は?ルーティアが聞いてきた。
あ〜、俺の幼馴染だ!同じ年齢で、同じ人狼族で10歳まで一緒に良く遊んだ女の子だ。
ロディは刻まれた文字を見て答えた。
その女の人は?ルーティアが聞いてきた。
約10年前に・・・この村で事件があり、リリアは・・・家族諸共殺された・・・
・・・ロディはか細く答えた。
そうですか・・・可哀想に・・・ルーティアもまた、か細く答える。
リリアの墓は無い・・・いわば、この大木がリリアのお墓だ!仲の良かった幼馴染だ、少し、好きだったんだがな〜、ロディは昔を懐かしむ様に語る。
そうですか・・・今となっては思い出ですね、ルーティアはロディの心中を察した。
そうだな、また来るよ、リリア・・・ロディは村に、戻っていった。
時刻は夕方5時を少し回った頃、ロディはモンタナ村の入り口にいた、もう一回振り返り、モンタナ村全景を見た、町の人々が生き生きと動き回り、生活をしていた。
本当に・・・平和になって良かった、もう、あんな悲劇は二度と御免だ!ロディは町並みを眺めながら思った。
よし、次の町に行くか・・・ロディはモンタナ村を後にするのである。
ロディ、次の目的地は?
次はニースって港町だ、少し距離はあるかな?そこから船に乗って対岸の大陸に渡るんだ。
ロディはルーティアに、流れを説明した。
船ですか、私初めてです、でもゲート移動はしないの?
ゲート移動は一瞬で行けるけど、今は特に急ぎの任務も無いから、巡察がてら色々見て回りたいんだ。
そうですか。
ルーティアが納得した。
ロディが街道を歩いて次のニースを目指す、ニースまで3日は掛かる道のりである、ロディは3日歩き、又は交通機関を使いニースを目指す、乗り合いのバスが有るはずで、ロディはバス停を目指して歩いていた。
たまにはのんびりバスとかで移動もいいだろう。
お金払って乗る、乗り物ですね、私乗るの初めてです。
そうか・・・
ロディは剣の宝玉を触りながら、答えた。
暫く歩くとバス停があり、待ち合いに5〜6人程の人が待っていた。、
バスを待っている人を見ると様々で、人間、亜人共に、バスを待っている、中には剣や鎧を身に着けた冒険者の様な人も見かけた。
ロディも列に並んでバスを待つことにする、ロディが並んでからも数名の人がロディの後ろに列を作った、その中の一人に声を掛けられた。
「あの〜、もしかしてガーディアンの方ですか?」
小声で話され、ロディは思わず「はい・・・そうですが・・・」と答えた。
「やっぱり、その腕の器械と紋章、前に見たことあるな〜と思って・・・」
ロディに声を掛けてきた人は頭からフードを被っていた。
「あの〜貴方は?」
ロディはフードの人に訊ねた。
「あ〜、すいません、私、アニー、アニー・ボン・フランシスと言います、今は冒険者をしてます。」
アニーと答えた女性はフードを取って自己紹介をした。
アニー・ボン・フランシス・・・年齢17歳、人間の女性、146センチ!45キロ、赤髪、短髪、薄手の鎧、フード付マント、腰に短剣を身に着けたいかにも冒険者のスタイルであった。
「ふ〜ん、冒険者ね〜、これから何処に何をしに行くのかな?」ロディはアニーの格好を確認しながら聞いてみた。
「あ、あたし、この先の森の中に貴重な薬草があるらしくて、依頼で採取しに行くところです、何でも魔術師の方が薬を作りたいとかで・・・」
アニーが目的を話す。
「そうなんだ・・・ま、この辺りは魔物は居ないけど、野生動物や、盗賊なんかはいるから、気をつけたほうがいいかもな。」
ロディはアニーに助言した。
「はい!ありがとうございます、ところで、ガーディアンの方を見るのは初めてですが、やっぱり、何か事件とか、犯罪あったんてすか?」
アニーが聞いてきた。
「いや、特には、知り合いの村が近くにあって、巡回がてら見回りしているところだ!」
「そうなんですか〜、あ!バスが来ましたね。」
アニーがバスを見ると、停留所で止まり、待ち人が順番にバスに乗り込んでいた。
「それでは失礼します。」
アニーはバスの中に乗り込んでいた。
ロディも少し遅れてバスに乗り込んでいた、乗り合いバス、人間100人も乗れば、ほぼ満員であろうバスは、運転手はいない、無人で、遠隔操作で決められたルート、決められた停留所で止まる仕組みになっていて、代金はそれぞれによって異なっていた、下車するときに、代金を料金箱に入れる仕組みとなっていて、頻繁に利用する人は割引チケット、回数券等を使う人も中にはいる、ロディはゲートカマイザーを料金箱にあるセンサーに翳すだけで、自動的にお金は引き落とされる仕組みになっている。
ロディは窓の外を眺めていた、森があり、山、川、自然豊かなこの地方は、地域住民が伸び伸びと生活するには絶好の好環境と言えた。
「次は〜下式前〜、下式前〜。」バスの中にアナウンスの声が響く。
「あ!あたしおりま〜す!」声高らかに返事をしたのはアニーだった。
アニーは降りる時にロディの横を通りがてら、手を小さく振っていた。
アニーが降りて、再びバスが走り出した。
ロディはアニーが降りた2つ先のバス停で降りた、ここからは少し歩きになった。
少し道を道なりに歩き、小さな森の中を通る。
この辺りは少し涼しいですね。
ま〜な、海に近づいているから余計涼しく感じるんだろう。
ロディとルーティアは森を通りながら話していた。
この森を抜けたらあと一日ちょいでニースの港町だ、そこからは船だな。
一晩野宿ですか?
ま〜たまにはいいだろう。
ですね、テント生活。
ロディとルーティアは森を見渡し、野草や、食べられる木の実等を採取していた。
「キャ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
何処かから女性の叫び声が響いてきた。
なんだ? ロディは声に反応した。
この声は・・・もしかしたら、あの人の悲鳴では?
ロディとルーティアは声のした方に駆け足で向かった。
ロディとルーティアが悲鳴近くの場所にたどり着くと、そこには野盗と見られる盗賊風情が10数人いて、一人の周りを取り囲む様に円を描いていた、その中心にバスで遭ったあの、アニーと言う女性が尻もちを付いていた。
「いや、いや、こ、来ないでください。」
アニーは泣きそうな声で呟く。
「ヘッヘッヘッ・・・嬢ちゃん、こんな場所に一人でいるとあぶねーよ!俺らと一緒に来なよ。」
そう盗賊風情が、いかにもありきたりなセリフをアニーに向けて話した。
「き、来なよと言って、短剣やら、銃を構えられて、はい、行きます!なんて言う人は居ないでしょ?びっくりして、尻もち付いちゃった。」
アニーはさっきとは違ってはっきりと言葉にした。
「野党やら、盗賊がいるとは聞いていたけど・・・まさか私が出くわすとはね〜、付いてないや。」
アニーは周りを囲む野党風情をみた。
ん〜、2、3人ならなんとか対処できるんだけど・・・流石にこの人数はキツイかな?
アニーはDランクの冒険者で、多少の腕もあるのだが、今回の様な大人数は経験が無かった。
逃げるのが得策かな〜。
アニーはジリジリと後退り始めた。
「お〜と、逃さないぜ!」野党の数人が更にアニーを囲む様に回り込んだ。
不味いわね〜、こんな奴らに捕まったら、何されるか分かったもんじゃない、捕まらず逃げなきゃ。
アニーは野党共を警戒しながらどうするのが一番が考えていた。
「ヘッヘッヘッ・・・おら〜!!」野党一人がアニーを掴みに掛かった。
あと数センチでアニーの肩に手が届く直前にアニーは手を躱した。
「く、こ、この野郎〜。」野党2、3人が纏めてアニーに向かって掴みに来ていた。
サッ・・サッ・・
アニーは野党たちの手を跳ね除け跳ねるように、周りを逃げていた。
「く、こ、この〜〜〜!」男一人がチェーンの様なものをグルグル回し、アニーに向かって投げつけた、と、同時に別の男共も、アニーに縄やら、弓を放ったり、投げつけた!
「く、ちょ、ちょい・・・流石に・・これは・・」
アニーはなんとか躱しつつも、チェーンが足に絡まり、纏わり付き、バランスを崩し、その場にうつ伏せに倒れてしまった。
「・・ぐ、くっそー、情けない、捕まってしまった、私をどうするんだ!」
アニーは勇よく叫ぶように野党共に呟いた。
「ヘッヘッヘッ・・ま〜そう吠えるなよ、お嬢さん。」野党の一人がアニーの突き出たお尻をいやらしく触りながらニヤニヤしてアニーを見つめた。
「や、止めろ〜、触るな〜!」アニーは眼光を男に向け、睨みつけた。
「お〜怖い、怖い・・・よ〜し、久しぶりの女だ!!お前ら寝床に連れて行って、身ぐるみ剥がして、楽しんでこい!!」野党の頭らしき男はアニーの顔を見てニヤニヤした。
「ヘッヘッヘッ・・女だ、久しぶりだな〜、しかもまだ若いぜ!」別の男は口元をだらしなくさせていた。
アニーは手と足を縛られ、口にガムテープを貼られていた。
「ん〜、ん〜、ん〜」アニーは必死に何か言おうとしたが、言葉にならなかった。
アニーは、野党共に引きずられる様に野党共の寝蔵に連れて行かれる所であった。
その様子を一部始終見ていたロディと、ルーティア。
ロディ・・・あの人連れて行かれますよ、きっとあの人達の寝蔵で、酷いこと沢山されますよ。
あ〜、多分な、野党なんて、金と女しか興味ない奴らが殆どだ。
どうしますか?
決まっているだろ・・・助ける!野党も牢屋行きだ!!
ロディとルーティアは木の陰から飛び出し、野党共の通路を塞いた。
野党の頭がロディに気付いた。
「だ!誰だテメ〜わ!」
ロディは野党の男共を睨みつけた。
「やれやれ・・こんな大人数じゃなきゃ、女のコ一人ナンパ出来ないなんて、恥ずかしいね〜。」
ロディは野党共を馬鹿にする口調で話した。
「な、なんだと!!野郎〜、俺たちとやろうってか!!」野郎の一人がロディに突っかかる。
サッ・・・ドン!!
ロディは男を躱し、腹にパンチを当てた。
「く、こ、この・・・」
野党の一人が腹を押さえながら、その場で倒れた。
「な、なんだてめ〜わ!」頭がロディに剣を抜いて立ち塞がった。
「俺の名前はロディ、ロディ、ファン、アーカイド、ガーディアンだ!」ロディが短剣を抜きつつ、名前を名乗る。
「が、ガーディアンだと・・・なんでこんな場所に・・・」頭がロディをみた。
「婦女暴行、誘拐の現行犯で逮捕する、お前ら全員刑務所で仲良くしておくんだな。」
ロディは腕にある、ゲートカマイザーと紋章を野党共に見せた。
「な、、ほ、本物?」頭は見た瞬間後退りした。
シュ・・・・
ロディは素早い動きで、男達の間を通り、縛られているアニーを助けに行った。
「野郎〜、させるか!」野党の一人が叫ぶ。
バン・・シュ。
ロディは足で男を蹴り上げた、男は顎に足が当たり、仰向けに倒れた。
ロディはアニーを抱きかかえ、野党共から少し離れた場所にアニーを置いた、短剣で縄を切る、テープも剥がした。
「大丈夫か?」ロディはアニーに聞いた。
「うん、今のところ・・・助けてくれてありがとう。」アニーはお礼を言った。
「少し離れてて、野党は全員監獄行きだ!」ロディは野党に向かい歩いていた。
「く、ガーディアンだろうとタダで捕まるかよ!」頭がロディに向かって剣を振り向かってきた。
キ〜ン・・ボゴ・・
ロディは短剣で剣を受け、反対の手で、男の顔面にパンチを当てた!
続けざまに2、3発殴ると、頭は頭から地面に倒れた。
「つ、強い・・」アニーが尊敬の眼差しでロディを見ていた。
ロディは残った野党を片っ端から倒して、全員、逃げられないように拘束した。
ゲートを開き、星団監獄に引き渡したロディ、全て終わり、その場にはロディとアニーだけが残った。
「大丈夫か?災難だったな、まさか野党に出くわすなんてな。」ロディはアニーの姿を確認しながら話した。
「全くです、この辺りの森は大丈夫です、ってギルドや魔術師の方が言ったので、引き受けたんですが、ロディさんが居なかったら、今頃何をされていたか・・・」アニーが答える。
「大事にならなくて良かった、もうすぐ日も落ちるから、早く町に戻った方がいいぞ。」ロディはアニーに日没が近い事を話した。
「そうですね、依頼は完了したので、町に戻ります、本当にありがとうございます。」アニーは頭を下げて感謝した。
「いや、それよりも一人で余り無茶はするなよ!じゃ〜な。」ロディはアニーに手を振って、森の中に入っていった。
ロディ、ファン、アーカイド・・・か、強いし、格好良いし、ガーディアンだし、、いいな〜・・・
アニーはロディが消えて行った森を眺めながら、頬を染めて見送っていた。
・・・
「あ!いけない、バスの時間に間に合わないかも・・」
アニーは慌てて、バス停に向かい走って行った
ロディはそんなアニーを気配で察知し、無事にバス停に付いた事を確認し、安堵していた。
つづく。