繰り返す鬼退治
私の家には鬼がいた。
それは。母親という権力を武器して扱い
私という1人の人間だけを襲う鬼だった。
母親の皮を被った鬼は、今日も私を襲った。
孫の手という金棒で私を殴り、無理やり鉛筆を持たせて机に拘束させていた。
「お前みたいな馬鹿が社会に出るために私はお前のことを教育してやってんだよ!! 黙って私の言うことを聞け!!」
鬼の言葉で最も印象に残った言葉だ。
私のような馬鹿は鬼の言うことを聞いていればいい。
そんなことを思っていたもの昔のことだ。
月日が経ち、段々と成長していく私。 いつの日か鬼よりも体格が良くなっていた。
そして、私はできると思った。 今の私なら鬼退治できる。 もう苦しむ必要はない
その日、私は初めて台所から鉛筆以外の物を持った。
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気づけば、白い壁の部屋。
質素な机
目の前にはスーツを着た男の人。
聞こえるのは換気扇の音だけ。
「なぜお母さんを殺害したんだい?」
この男の人は何を言っているの。
私の家に「お母さん」はいない。
鬼が1体。 他には誰もいない。
なのに、この人はどうして存在しない「お母さん」のことを話しているの?
私は............
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気付けば、私は大人になって、一人の娘がいた。
夫はいないので、1人で手厚く育てている。 そんな可愛い娘だった。
可愛い子には旅をさせよと言うので、いい人生を歩ませるために、いろいろ手を尽くした。 これが余計なお世話なのかもしれない。
娘には、絶対いい人生を歩ませたいが、娘はどうやらハッキリ言って馬鹿みたいだ。
何年も娘を教育し続けても、全く意味がない。
本来、こんなやつに生きる資格などないのだ。
私の思い通りにならない娘なんて
だから、私は娘にこう言う。
「お前みたいな馬鹿が社会に出るために私はお前のことを教育してやってんだよ!! 黙って私の言うことを聞け!!」
昨日も、今日も、明日も、孫の手を持って娘を教育する。
全ては娘の為に。
-------数年後--------
「なぜお母さんを殺害したんだい?」
この男の人は何を言っているの。
私の家に「お母さん」はいない。
私の家にいたのは、「鬼」だけなんだから。