らぶいずミステリー
「凄い歯ね」
「そう? まあ子供の頃から健康優良児で、歯医者さんにも褒めてもらっていたけどね。それよりトイレ行かなくて良いの?」
「大丈夫、それに先客があるみたいだし」
「あのおばあさん、介護が必要なのかな? 僕行ってこようか」
コナミくんがシートベルトを外すと、老婆の姿が慌てて…消えてしまう。
「あれ? いなくなっちゃった」
給油も終わって、スイカ男も逃げるようにどこかへ行ってしまった。
キラキラ光るゴールドVIPメンバーズカードと領収証が、車内を舞う。
「あまり態度の良くない店員だね! 経営が心配になるよ」
それを空中でキャッチしたコナミくんが、ヤレヤレとばかりにため息をつく。
周囲にたちこめていた不気味な黒い影も、からりと晴れる。
「ねえ、あたしと居るとこんなことばかりだけど…嫌じゃない?」
気付いてなさそうだが、一応聞いてみる。
「幽子ちゃんと居るのは楽しいよ! 僕はホラ、こんな感じで、今ひとつ空気が読めないというか、人間関係の機微? に、うといから…逆に迷惑かけてない?」
「ぜんぜん、凄く助かっている」
「良かった! 幽子ちゃんが最近明るくなってきたんじゃないかって、まわりの子たちも言っていただろ? 僕、それを聞いて嬉しくってさ」
楽しそうに微笑んだコナミくんの歯は、やっぱり真っ白でキラキラだ。
浄化魔法ってやつだろうか?
歯は命って言うし。
「じゃあ、海水浴にレッツ&ゴー!!」
意気揚々と車を発進させる、この男は、やはりなにかおかしい。
認めたくないが、これも恋? なのだろうか…。
まったく、世の中のどうでもよい真理とは、理解不能な謎がたくさん潜んでいて…解けない謎だらけだ。
あたしはため息をつきつつ、青すぎる空を見上げた。
このお話は、カクヨムの自主企画のために
以前漫画企画でボツになったプロットを再構成して、
短編小説として書き上げたものです。
なんらかの形で、発表できたことが嬉しいです。
プロットでは、コナミくんとユーコちゃんが
温泉旅館で迷推理をはたらかせ、
事件を解決し、超常バトル? のすえに
悪霊も退治し、帰還するまでが描かれています。
もちろん、二人のロマンスの行方も・・・。
手応えを感じたら、ひょっとしたら連載するかもしれません。
興味を持っていただけたら、嬉しいです。