豆谷。食べ放題の思い出
今回はこまめが生まれる前の話しです。
「ほら愛方、急いで支度しろよ肉喰いたいんだろ?」
昼飯を喰いに行くと言うのに何故かギリギリまで筋トレをしている愛方に声を掛けた。
「ちょ、もう少し待て!もう少し腹減らさないともったいないだろ!」
ああン?せっかく、一緒に行ってやる気になったのに我が儘な大型犬め!
「食い放題でどれだけ喰うつもり?牛一頭か?そうなのか?」
声を出しながら親友のまいまいにメールを打つ。
【愛方が焼き肉の食べ放題で牛一頭分の肉を喰う気だ!by豆谷】
【羨ましい!by舞原】
そういやぁまいまいも肉食だった。
「そろそろ行くか!」
約束の時間の5分を切ったところでようやくやって来た愛方を見て眼を細める。
「まさかその汗くさい格好まま行くつもりなら、隣は歩かない!」
「クンクン、しょうがねえなあ3分待ってろ!」
まさか、3分でシャワーは無理だろ(笑)
奢らせてやろうと、笑っていると
「よし!ジャスト!」
「まじか?」
「さあ、行くぞ!ほら、手を寄越せ!」
いや、隣を歩かないって言っただけで、手を繋いでやるって言った訳じゃ…
取られた手を振り上げ唐突に叫んだ。
「死ぬほど喰うぞー!」
いや、恥ずかしいからやめてくれ、回りがこっちを見てるし…
「豆谷の分も焼きまくるからな!」
「いや、野菜だけで充分!お前が喰うの見てるだけで満腹になるから…」
まじで牛一頭喰いそうな愛方に手を引かれて歩く俺の頭のなかではドナドナの曲が流れ続けていた。
実は豆谷肉は添える位で良いと思う程の偏食家である。
それなら何故焼肉の食べ放題に来たのかと言うと、この店豆腐と枝豆。そして味噌汁が凄く旨いのだから。
「ほら豆谷、しっかり喰わないとでかくなれないぞ」
皿の上に肉を投げ入れるだけじゃ、あきたらず口の中に突っ込んでこようとする手を払いのけ
「成長期は終わってるんだ!デブってスーツが着れなくなったらどうするんだ!」
「あ、知ってたのか」
どうやらカルシウムいりのウエハースを食っているのを見られていたらしい…
「あれはお前が俺の分の飯食ったせいだろうが!心落ち着けるためにカルシウムとっていたんじゃ!ボケ!」
叫んだらスッキリしたので、側を歩いていた従業員のお姉さんにニッコリと
「冷奴と味噌汁旨いですねえ。お代わりお願いします」
旨い!もう一杯!
おわり
「まめたん。あーんして!もっとにくたべて!」
愛方が焼いた肉を愛息子が口元に運んでくる。
それを豆谷に拒む術はない。それをニヤニヤと眺めていた。