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99話 『仲間との絆』

『な、なんだこいつ……』


『マフィー、あなたは村に戻って助けを呼んできて!!』


『え、で、でもみんなは!?』


『僕たちはここで食い止める、早く行くんだ』


『そ、そんな!』


『大丈夫、いざとなったらみんなで逃げるから。ほらいって!』


『わ、わかった! すぐに呼んでくるから待ってて!!』



 そしてひたすら走り続け村につくとマフィーは大声で叫んだ。



『み、みんな大変だああああッ!!! モンスターがでた!! 助けてーーー!!』



 それを聞いた獣人たちが一斉に集まり始めたところで映像は変わっていく――空は黒く雨が降りしきっている。



『マフィー、そろそろ中に入りなさい』


『僕……みんなを迎えに行かないと……』


『大丈夫よ、きっとみんな帰ってくるわ。さ、ほら。風邪をひくといけないから』



 そして更に映像が乱れ変わり始める。そこは黒い雲が空を覆い、雨は降っていないがすでに日没がきてもおかしくない暗さだった。



『みんな……どこにいったの……』



 最初に映った場所でマフィーは友達を探しているようだ。そして……突如、それ(・・)は現れた。



『ねぇ、なんで泣いてるの? 何が悲しいの?』



 マフィーがびっくりして顔を上げると、そこにはとても小さな幼い女の子が立っていた。



『だ、誰?』


『えっとー……そうだ、私は女神様! あなたの願いを叶えてあげる!』


『ほ、本当? 僕の友達が帰ってこないの。ずっと待ってるんだけど……どこにいるかわからない?』


『うーん……それじゃあずっと待ってよう! 生きてれば(・・・・・)必ず会えるから!』



 そういうと女の子は魔法陣を描き始めた。これは……私と同じ!?

 ここで大きく映像が乱れると鏡は消えていった。鏡をジッと見つめていたマフィーは何か独り言を呟いている。



「そうだ、みんな僕を逃がして……」


「マフィーしっかりして! あなたはもう前に進まなきゃダメなのよ!」


「ぼ、僕は……」



 マフィーが先ほどとは変わり私の声に反応を示すと本の光が弱まり、そしてそれと同時にレニ君たちが声をあげる。



「ん……あ、あれ、俺たち何をしてたんだっけ?」


「な、なんだここ? いつの間に」


「み、みんな戻ったのね!?」


「リリア、これは」


「ごめん、話はあとでする! あの人達を助けて!!」



 外では先ほどのモンスターが暴れ回りティーナさんと狼の獣人を追いつめていた。すぐに私は助けに走り出したが大きな巨体は二人に迫っていく。


≪ウィンドブレード≫


 突如風の刃が私を追い越しモンスターへ大きな傷を作った。悲鳴をあげその場で暴れ出すモンスター、その横をティーナさんたちは走り抜けこちらへやってくる。私の後ろからミントが現れた。



「うへーなにあのモンスター、気持ち悪っ……」


「ミント! ありがとう!」



 二人を助けることはできたが、ほかにもまだ倒れている人たちがいる。巻き添えになる前に早く倒さないと……! そう思ったとき、横からルーちゃんが猛スピードでモンスターに駆けていった。そして続くように私の横をレニ君が走り抜ける。



「クゥーーーー!!」


「リリア、あいつを倒せばいいんだな!?」


「あっ――うん! お願い、みんなを助けて!!」



 レニ君の背に向かって叫ぶと、二人とすれ違うようにしてティーナさんたちがこちらへやってくる。



「いくらテイマーでもあの少年だけでは危険だ!」


「私たちもすぐに加勢に行きましょう!」


「待ってください! もう、大丈夫です。あの二人は……レニ君は絶対に負けません!」



 ミントはすでに観戦する気満々のようだ。この安心感に幾度となく私は助けられた……レニ君は剣を抜くとルーちゃんに何か指示を出す。そして雰囲気が変わる。


≪スキル:ものまね(英霊ヴァイス)≫


 ルーちゃんがモンスターの後ろに回り込むと二回りも大きな相手に体当たりし宙に浮かせる。そしてその下にレニ君がそのまま潜り込んだ。


≪秘剣:四方≫



 剣を構えるとモンスターはそのまま宙で切り刻まれ、地面に落下すると黒い煙となって消えていった。



「な、なんて強さだ……」


「レニ君ごめん! マフィーの本を壊して!!」


「わかった、今行く!」



 ティーナさんたちが茫然とするなか、ほとんど光を失った本をレニ君が斬ると本は切り口から燃え上がり散っていった。



「マフィー、大丈夫!?」


「ぼ、僕……みんなをおいて……に、逃げ……」



 記憶が戻ったんだ……でも、なんて声をかけよう……。言葉に詰まっていると、父親らしい狼の獣人がやってきてマフィーを強く抱き寄せた。



「みんなはお前を助けてくれたのだ」


「で、でも……」


「今は辛いだろう……だが、いつの日かみんなが安心して眠れるくらい強くなれ。そしてお前が生きた証が、彼らの生きた証になる」


「うぅううぅぅ……うわああああああああん!!」



 そうだ、今はマフィー自身が受け止めなければならないんだ……。ここはこの人に任せて私は倒れてる人を助けにいこう。



「どうやら一件落着のようだな」


「みんなッ! 無事だったのね!」


「痛つっ……見ての通り無傷ってわけにはいかないがな」


「それでも、今回の犠牲者は誰もいない――私たちの勝利だ」



 狐の獣人がそういうとみんなは顔を合わせ無言で頷く。誰一人欠けることなくマフィーを助けることができたのは大きな意味があった。

 彼らの子供たちが命を燃やし残した、マフィーという絆を繋ぐことができたのだ。


 みんな多少の傷はあったが、獣人の体は人間よりも遥かに丈夫らしくまずは村に帰ることとなった。泣き疲れたマフィーは父親の背中でぐっすりと眠っている。

 村に帰るとこの辺りで起きていたモンスターの異常な動きも静まったとのこと。やはり本の影響だったのだろう。


 そしてマフィーが出会ったあの少女……私と同じ魔法使いのようだった……色々調べなければいけないことがでてきたが、疲れて身体が重い……今はゆっくり休むとしよう。

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